• COLUMN

食事は1日3回行なうものですので、介護する人にとって、介護食を3食作るのは負担が大きいのも事実です。食事の用意以外にも入浴介助や排泄への対応など介護は多岐にわたります。最近では高齢者だけの世帯や、親の介護をしながら自分の家族の世話もしなくてはならないなど介護負担が大きくなっている状況がみられます。在宅における実際の現状から、管理栄養士がどのようなサポートをしているのかをご紹介します。

在宅での介護食の実態について

歯(義歯)や咀嚼(そしゃく)、飲み込みなどの問題で、徐々に食事が食べられなくなる人が気づかないうちに陥りやすいのは食事の偏りです。主食がご飯からお粥になり、肉などのしっかり嚙むものが減り、イモ類などの柔らかい食材を食べることが多くなってしまいます。気が付いたら体重が2〜3kg減ってしまうケースもあります。体重が減ることで、歯茎も痩せてしまい、義歯も合わなくなり、ますます食べられるものが少なくなっていきます。その結果、低栄養状態に陥ってしまい、最終的には肺炎などで入院してしまうというパターンも少なくありません。

私が担当した在宅訪問栄養食事指導の利用者の方の一人は、誤嚥性肺炎で入院し、ミキサー食になり、退院後もミキサー食を家で用意することになりました。高齢者世帯で妻が夫を介護しています。私が初回訪問した時に調理を見せてもらいましたが、市販でも買える介護食のレトルトUDF区分1~3を購入し、それをミキサーにかけていました。区分4のものはそのまま提供していました。

UDF区分とは:日本介護食品協議会が定める商品の「かたさ」や「粘度」の分類

UDF区分1:容易に噛める

UDF区分2:歯ぐきでつぶせる

UDF区分3:舌でつぶせる

UDF区分4:かまなくてよい

市販の介護食は調理の手間がかからないというメリットがある反面で、コスト面での負担が大きくなってしまう問題があります。

市販品に頼らない介護食の提案

今回の利用者の方に対して、どのような提案を行ったのか具体的な事例をご紹介します。

私が介護者である奥さんに「今日は何を食べるんですか?」とたずねると、「とんかつを買ってきたので、後で食べようかと思っています」とのことでした。そこで「奥さんと一緒のものをご主人にも食べてもらいましょう!」と提案したところ、「とんかつなんてミキサーにかけられないでしょ?!」と驚かれてしまいました。そこで一緒にとんかつのミキサー食を作り、最後にソースをかけて味見をしてもらったところ「おいしいですね! 私と一緒のものを主人に食べてもらえるんですね!」とよろこばれました。

このように、私たち管理栄養士にとっては当たり前のことが、一般の方には、まったく知られていないということがあります。

あのまま市販の介護食にたより続けていたら、食品購入のコストも大変でしょうし、場合によっては栄養状態も悪くなっていたのではないかと推測されます。訪問栄養食事指導を通して、今回の方は奥さんと一緒の料理をミキサーにした形で問題なく食べることができました。その結果、栄養状態も回復して順調に体重増加にも繋がりました。しかし、まだまだ在宅では同じような状況に陥ってしまっている人たちがたくさんいます。一人でも多くの困っている方を私たち管理栄養士は支える必要があると考えています。

次回は、調理環境や介護者の知識レベルに合わせた支援についてご紹介します。

 

おすすめコラム
海外生活で学んだ訪問栄養食事指導の可能性① - 米山久美子 深く幅広い知識が求められる訪問栄養食事指導の仕事① - 村上奈央子 第17回国際栄養士会議(ICD2016)レポート① 〜オープニングセレモニー〜

コメントを送ろう!

「コメント」は会員登録した方のみ可能です。

みんなのコメント( 0

  • No post.

    まだ投稿がありません。

WRITER

在宅介護における「介護食」の実際①

米山 久美子

在宅栄養専門管理栄養士 / 認定在宅訪問管理栄養士。 現在、訪問管理栄養士としていろいろな地域の在宅療養者を訪問し栄養食事指導をすべく日々駆け回っています!また、認定栄養ケア・ステーションeatcocoを立ち上げ、地域の栄養支援も積極的に行っています☆ 病院で管理栄養士をした後、シングルモルトウィスキーの聖地アイラ島の蒸留所巡りをしたくてイギリスへ留学。フレンチレストラン厨房にて助手の仕事なども経験。帰国後、フリーランスで働きながら、途中ワーキングホリデーでオーストラリアへ行きMeals on Wheelsのメインキッチンで働いたり、現地で起業しているRDにくっついて実地研修を経験。いろいろな地域でいろいろな食事や栄養のあり方を勉強してきたぶん、視野を広く地域の皆さんに貢献したいと思います★

米山 久美子さんのコラム一覧

関連タグ

関連コラム

"高齢者・介護"に関するコラム

もっと見る

CONFERENCE

ログインまたは会員登録が必要です

会員登録がお済みの方

ログイン

まだ会員登録をされていない方

新規会員登録

ページの先頭へ