• COLUMN

今回は、料理教室と認知症の予防についてのお話です。
現在、健康法や食材に含まれる栄養成分ファイトケミカル(※1)など、認知症の予防についていろいろな情報が飛び交っています。料理教室も認知症の予防になると言われているのですが、実際はどうなのでしょうか? 

料理教室は認知症の予防になる!

現在、私はフリーランスの栄養士として高齢者の介護予防の分野に力を入れています。
その中で、高齢者の料理教室自主グループの講師を請け負っていて、「料理教室は認知症の予防になる!」と日々、実感しています。自主グループのため、会費の管理、年間スケジュール、調理室の予約、出欠連絡等は、三役を中心としたメンバーで行われているのですが、こういった地域活動への参加が、既に認知症予防の1つの要素だと思います(高齢者の介護予防教室(※2)は引きこもり予防→認知症の予防につながると考えられています)。
料理教室は、その日の材料を私とメンバーが一緒に買い出しするところからスタートします。普段の買い出しで利用する調理室近くのスーパーにない食材が必要な時は、私が前もって購入してから行くこともありますが、だいたいは食材の選び方のアドバイスをしながら、協力者数人で買い物をします。

脳が活性化されている気がします

調理室での準備は、食材を調理台ごとに分けることから始まります。仕分けの当番は決まっていますが、みんなで協力しあって行います。 始まる前にメンバーのミーティングがあります。(グループは区のイベントにグループの活動を発表する事もあるのでその打ち合わせ、またはお休みされている方の近況報告など。)その間に講師側はデモンストレーションの準備をします。デモンストレーションの際には、誰かから必ず質問が出ます。質問が出るのは脳が活性化されている証拠だと思います。質問は、その月のポイントであったり、私の思いもよらないことであったり、多岐に渡ります。思いがけない質問は、私の脳の活性化にもなります(笑)。料理教室は参加者と講師側の両方にとって、認知症の予防になると言えそうですね。

デモンストレーションの後は、各班で調理が進みます。班ごとにメンバーが相談して作業の分担をして調理します。自分たちで考えて調理作業を進めていくことが、何より脳の活性化になると思います。材料を洗ったり、切ったりすることで手を使うことも認知症の予防になると言われています。
レシピも材料も全班同じもので、デモンストレーションも同じように受けているのに、各班で料理の出来上がりが違うのは、何度見ていても面白いものだなと感じます。

実際の教室の様子

レシピは季節感を大事にして五感を刺激

料理教室は仲間の管理栄養士と2人でサポートしています。2か月に1回は私がレシピを担当するのですが、「おいしく食べることで人を元気にしたい!」をモットーに、楽しんで喜んでもらえるレシピを考えるようにしています。その際、季節感や前の月と重ならない材料、調理法などいろいろと考慮しますが、季節感は五感につながり、認知症予防にも密接に関連するため、最も大切にしています。
香り、食感、味覚など五感への刺激は大事なことです。春は春らしく、夏は夏らしく、季節に合わせて考えます。メインの食材はメンバーの方の希望も考慮し、日常的に買い求めやすい食材を選びますが、たまに普段使わない食材を使ったりするのも、刺激になると思って取り入れることもあります。最近流行りのパクチーを使った時の参加者の皆さんの反応は面白かったです。

言いたいことを素直に言える信頼関係も構築

話は少し逸れますが、6月のレシピに夏向けのスパイスの効いたカレーを提案しました。メンバーからは、いいとも嫌だとも反応がなかったのでカレーで進めてしまおうと思った瞬間、「辛い物は嫌だ!」という声が上がりました。その方はわがままな方ではなく、また、今まであまり発言をしない方だったので、5年以上になる料理教室で言いたいことを素直に言える信頼関係ができてきたのかな? と思いました。 高齢になってくると、感情をあまり出さなくなってきますので(認知症が進むと、逆に感情的になると言われていますが)、月に1回の料理教室ではありますが、信頼関係が築かれ、自分の希望を言えることはよいことだと思います。
料理教室は、自分で考えながら手先を使い、食事を通じて楽しい、おいしいと感じられるため、栄養士が関われる最強の「認知症の予防」だと思います。

※1 ファイトケミカル…抗酸化力、免疫力のアップなど、健康維持・改善に役立つのではないかと期待され、研究が進んでいる植物中に存在する天然の化学物質。
※2 介護予防教室…高齢者の元気な暮らし目指し、介護予防、健康づくり等についての知識・技術の習得を目的に開催される教室。

 

おすすめコラム
経腸栄養、口から食べる大切さ 在宅介護における「介護食」の実際 ① フリーランスの栄養士の仕事 ①介護予防教室

コメントを送ろう!

「コメント」は会員登録した方のみ可能です。

みんなのコメント( 2

    • 小川 綾子
    • 小川 綾子
      2349日前

      賀茂様
      いつもコメントをありがとうございます。何歳になっても料理を楽しめる方はお元気ですよね。家族だけではなく自分のための料理を作る事は認知症の予防になると思います。義母が90歳になりますが、年齢なりの認知が現れています。料理と言えるようなことはしなくなりました。逆の言い方だと認知が出てくると料理が出来なくなるのかなとも思います。

      拍手 0

    • ID: 313
      2368日前

      人生100年時代、料理で認知症を防ぐっていいですね!

      拍手 1

WRITER

料理教室は認知症の予防になる?

小川 綾子

学生食生活相談では母親のような気持ちで、介護予防の仕事では人生の先輩に教えて頂く気持ちを持ちながら相手の気持ちに添ったサポートをしていきたいと思っています。

小川 綾子さんのコラム一覧

関連タグ

関連コラム

"高齢者の食事・介護食"に関するコラム

もっと見る

ログインまたは会員登録が必要です

会員登録がお済みの方

ログイン

まだ会員登録をされていない方

新規会員登録

ページの先頭へ