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日本人として途上国事業に従事していると、日本と途上国の環境が違い過ぎるため、「豊かな日本での経験しかない自分が国際支援に本当に貢献できるのか?」そんな疑問を持つ日本人にたくさん出会います。

今回は、そんな方にぜひ知っていただきたい、国際支援を行う上での日本人の強みを紹介したいと思います。

日本人が国際支援に関わる強み

日本もかつて飢餓と貧困に苦しんだ時代があった

近年、世界の飢餓・貧困問題とその解決をめぐる政策・アプローチの枠組みには、大きな変化が起こっています。2000年から2015年までの世界の開発目標であるミレニアム開発目標(Millennium Development Goals 以下「MDGs」)※1 の未達成目標が分析され、2015年9月に提言された2015年から2030年までの開発目標である持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals 以下「SDGs」)にはその課題が大きく反映されました。

※1…ミレニアム開発目標 2000年に国連ミレニアム・サミットにて採択された国連ミレニアム宣言と、1990年代に開催された主要な国際会議やサミットで採択された国際開発目標を統合し、ひとつの共通の枠組みとしてまとめられたもの。掲げられた目標は「極度の貧困と飢餓の撲滅」「幼児死亡率の削減」「妊産婦の健康の改善」などがある

日本もかつて、栄養改善が急務であるといわれた時代がありました。それは第二次世界大戦の時代です。飢餓と貧困に苦しんでいた日本は、昭和21年に文部、厚生、農林三省次官通達「学校給食実施の普及奨励について」が発せられ、昭和29年には学校給食法が施行、栄養改善に向かうべく新しい学校給食が開始されました。

現在、日本は世界一の長寿国となったわけですが、日本が戦後から歩んできた歴史には、世界の栄養改善モデルともいえる政策とアプローチが散りばめられています。

例えば、地域の状況や食の事情を調べること、その結果や考察を伝える人材の確保と育成が伴っていること、そして健康的な食事摂取を可能にする仕組みやモニタリングの実施といった継続に向けた後押しがあること等、途上国が栄養改善に取り組む際に参照すべき欠かせない要素の多くを、日本は長きに渡って取り組んできた実績があるのです。

戦後の日本が行った栄養改善の取り組み

戦後の日本は食の課題を抽出し問題提示をするため、昭和20年から毎年、国民栄養調査を実施してきました。プライマリーヘルスケア※2 の要素を含めつつ、その結果や考察は生活改良普及員事業※3 を施行し地域へ還元、そして健康的な食事摂取を可能にする仕組みとして、先に挙げた学校給食などを強化していきました。また、モニタリングに関しては母子手帳の導入によって、乳幼児死亡率が米国を下回るという画期的な成果をあげました。

※2…プライマリーヘルスケア すべての人にとって健康を基本的な人権として認め、その達成の過程において住民の主体的な参加や自己決定権を保証する理念であり、そのために地域住民を主体とし、人々の最も重要なニーズに応え、問題を住民自らの力で総合的にかつ平等に解決していく方法論・アプローチでもある。1978年に開かれた世界保健機関と国際連合児童基金による合同会議における宣言文で定義づけられた。

※3…生活改良普及員事業 農家特有の生活問題について、改良普及員が直接農家に接して、生活の改善についての農家の自発的努力を助長することを目的とした教育的指導事業

ザンビアでの取り組みと日本の栄養改善モデル

日本人が国際支援に関わる強み
私が所属するアライアンス・フォーラム財団では、2009年からアフリカのザンビア共和国にて、高栄養価な食用藻である“スピルリナ”の地産地消を通した5歳未満児の慢性栄養不良改善に取り組んでいます。 保健・農業に関連する省庁を巻き込み、スピルリナの慢性栄養不良に対する効果測定の実施や、国立ザンビア大学農学部と共同で、スピルリナの生産や消費者調査・受容性評価などを行ってきました。事業の実施地域では、地域の食文化や食の営みを把握するため、キーフーズ調査※4 を実施し、地域の健康増進者となる現地人ボランティアに対し、保健・栄養に関する教育を提供しています。

※4…キーフーズ調査 食事調査を含む、食文化や食の営みを把握するための調査

また、健康的な食事摂取を可能とする仕組みとして、スピルリナを添加した学校給食を数箇所で展開してきました。

正に日本が戦後に組み立てた栄養改善モデルの普及を、アフリカが自立して栄養改善に取り組めるよう「地産地消」の仕組みと共に実施してきた1つの例です。

日本人であることの強み

現在の日本と途上国では、抱えている食や社会課題はまったく異なります。ですが途上国の課題は、かつて日本が取り組み、輝かしい成果を上げた栄養改善モデルに解決のヒントがたくさんあるのです。

日本人は、その成功体験と教訓をもって国際支援に従事できるのです。これは、とても大きな強みだと私は考えています。

 

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日本人が国際支援に関わる強み

太田 旭

【国際栄養・母子保健】一般社団法人オルスタ代表理事。途上国へ進出したい日本企業向けコンサルティング、途上国での栄養改善・人材育成事業を担当する栄養士です。2004年~出身地である宮城県にて在宅型ホスピス、認可保育園、離島での僻地医療、災害支援(東日本大震災)に従事。2012年青年海外協力隊としてグアテマラに派遣。2015年~アフリカ・アジアを中心に活動。2019年独立し、国内外の食卓から世界平和を目指している。

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