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地域開発・食事相談時に思い出したい「プライマリー・ヘルス・ケア」の理念とは

プライマリー・ヘルス・ケア実践

前回は途上国の多くが政策に取り入れている「プライマリー・ヘルス・ケア」という理念について紹介しました。今回はプライマリー・ヘルス・ケアに基づくプログラムを形成し、実践するために必要な1プロセスとして、アフリカのザンビア共和国の例を取り上げます。政策と、政策に沿ったプログラムがなぜ実現性を高めることができるのかをお伝えしたいと思います。

ザンビア共和国のプライマリー・ヘルス・ケア

ザンビア共和国の保健省は、2017年に発刊したCommunityHealthStrategy2017-2021(=地域保健戦略2017-2021)の序文にて、以下9つのプライマリー・ヘルス・ケアと地域保健における重要事項を示しています。

1. 健康及び疾病予防/コントロール方法についての教育
2. 食料の供給と適切な栄養の啓発
3. 安全な水と基本的な衛生環境の提供
4. 家族計画を含む母子保健
5. 予防接種
6. 伝染病の予防とコントロール
7. 一般的な病気・ケガへの適切な処置
8. 基本的な医薬品の供給
9. 地域保健サービスと医療機関との連携強化

これは、ザンビア政府が地域保健の開発において、上記事項をプライマリー・ヘルス・ケアの理念に基づき推進する計画であることを示しているということです。

日本の手法は世界のスタンダードではない

例えば、地域でニーズが高くある3.の”衛生環境の提供”という事項に沿い、プログラムの中で手洗い指導を行うことになったと仮定しましょう。日本の場合、正しい手の洗い方として推奨される手洗い方法は、多くの保育所で6ステップのもの、小学校になると9や10ステップの手法で教えることが多いようです。この場合、どれが正解かと聞かれたら、どれも正解なのでしょう。
しかし、多くの途上国の場合においては、手洗いのステップ数(手法)により不正解となる場合があります。各家庭で実践できるよう、覚えやすく・暗記しやすく・目的(保清)が達成できる最善な手法はどれかという観点で考えられ、国民性や環境・文化を包括的に分析し政府が示したステップ数(手法)がある場合、それが正解であり、それ以外は不正解となるのです。

政策に沿うことが実現性を高める鍵

手洗いの例で言えば、手の洗いあがりが綺麗で保清という目的が達成できれば、ステップ数や順番が異なっても問題ないのではないかという考え方もあるでしょう。しかし、課題の解決を目指して関わる異なる各組織(教育機関・NGO・他支援団体)が現地の方々と目的の達成を目指そうとする場合、それぞれが異なった手法・教材・メッセージ・評価軸で手洗い指導を行うことで、地域の方々が混乱しないか、各家庭で実践に至るまで理解を深められるのかが懸念されます。この様な懸念事項から、統一できる部分は統一することで、効率的かつ円滑に住民の理解の向上を目指そうというスタンスの組織が多いようです。

また、栄養士という職種で地域開発に携わる場合の多くは、現地のカウンターパート¹の多くが保健省・教育省・農業省、あるいはその傘下にある組織のスタッフになります。彼らの所属先の政策(いわば彼らのミッション)の達成を一緒に目指すプログラムであることは、彼らの動機やプログラムに費やせる時間を確保しやすくする配慮にもなります。そのため、地域住民のニーズを得られた際には、政策のどの部分に地域住民のニーズが重なるのか照らし合わせ、それらを合致したプログラムの計画とすることが目的の達成、地域住民のニーズを実現するための鍵であると言えるのです。

脚注¹:カウンターパートとは、直訳すると対応する2つのものの一方という意味。国際開発業界ではプロジェクトなどにおいて技術移転の対象となる相手国行政や行政官・技術者のことを言う。

・『栄養士の国際支援 – 駐在型支援とシャトル型支援』
・『国際支援 – 青年海外協力隊の経験を通して考えたこと』
・『国際支援 - 強化したい6つの力』

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みんなのコメント( 2

    • 太田 旭
    • 太田 旭
      11日前

      賀茂様
      返信が遅れて大変失礼いたしました。励みになります。ありがとうございます!

      0

WRITER

プライマリー・ヘルス・ケア実践~政策を理解する~

太田 旭

在宅型ホスピス、認可保育園、離島での僻地医療に従事した後、青年海外協力隊としてグアテマラへ渡りました。帰国後はアライアンス・フォーラム財団へ入団し、途上国での慢性栄養不良改善・貧困削減を目指して活動しています。途上国へ進出したい日本企業向けコンサルティング、途上国での栄養改善・人材育成事業を担当する栄養士です。

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