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青年海外協力隊の実態

今回は前回、前々回に引き続き、私が青年海外協力隊の栄養士隊員としてグアテマラ共和国へ派遣された波乱万丈な隊員時代の話を最終編としてお話したいと思います。

私が派遣されていた当時、グアテマラ政府は自国の栄養課題がなかなか改善されない原因として、自国で使用する言語の多さにあると考察していました。グアテマラで使用される言語は、スペイン語の他、マヤ系民族語が21種類以上もあります。そのため、複数言語がコミュニケーションの妨げとなり、国の政策などの情報が国内に円滑に伝達されないのではないかと考えていました。

実際に現場を巡回訪問していても、国連や諸外国が提供者となり作成されたテキストや栄養教育教材は、とても立派で綿密に考えられ作られたものでした。しかし、文字が中心で専門的なグラフや用語が多用されているものばかりでした。これではスペイン語での読み書きが不得意な保健所スタッフが理解して扱うにはかなりハードルが高く、残念ながらそれらを活用している人はあまりいないという状況がありました。

そこで、私は現地のワークパートナーや、同じくグアテマラに派遣されていた栄養士、保健系隊員と相談し、活用しやすい視聴覚教材を作成・普及するプロジェクトを立ち上げました。このプロジェクトによって、より良い視聴覚教材を作り上げ、広く普及活動ができたというだけではなく、派遣当初からの私の悩みも解決されることになりました。

私の悩みとは、物理的な面でも、意識の面でも現場から離れているということでした。配属先の予算の兼ね合いや、他の業務に当たらなければいけないという事情などから、なかなか現場に足を運ぶことができませんでした、私は現場の実態をよく知らない中で業務を遂行しなければいけないという状況にいつも危機感を感じていました。

しかし、チームを組んでプロジェクトを行なうことで、保健所や保健センターの青年海外協力隊の栄養士仲間、他の現地職員や現場スタッフなどから現場の状況を教えてもらえるようになりました。逆に、現場に届きにくい政府からの最新情報などは、私からプロジェクトメンバーに正しく情報共有ができるようになるなど相乗効果を生むことができたと感じています。

視聴覚教材として作成したイラスト中心のレシピ集は、おもにイラストレイアウトなどの面でWHOの監修を受けることができました。また、教材活用の実用性と地域住民の受容性を測る際には、県内保健ポストに所属している約200名の教育係に協力を得て検証を行いました。最終的には、レシピ集の内容をグアテマラ保健省にも確認いただき、印刷・普及の承認を得ることができました。

それと同時に、グアテマラ保健省とWHOの共同主催で行われた全国保健省配属栄養士研修会で、教材を配布する機会をいただくことができました。研修会の場では、教材の配布と合わせて、グアテマラ国内各地で働く保健省所属の栄養士全員を対象に「トトニカパン県の取り組み」として、地域の課題と教材作成プロジェクトの活動 をプレゼンテーションすることができました。このことは、私自身大変名誉なことであり、プロジェクトの総監修者である私のワークパートナーと一緒によろこびをかみ締めました。

青年海外協力隊活動期間は、きっと十人十色の2年間になると思います。よく言われる通り、どんな色に染める/染められるかは状況次第である以上に、自分次第なのだと思います。残念なケースとしては、海外に行けば何かが得られる、自分の価値観が良い方向に変えてもらえると過信し、途上国で2年間過ごすこと自体が目的にすり替わってしまう方がいること。これから隊員を目指す方には、ぜひ目的意識を維持しながら取り組まれることを期待したいと思います。

 

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みんなのコメント( 2

    • 大西 史
    • 大西 史
      1152日前

      私もかつて青年海外協力隊に参加を考えていた時期がありますが、「途上国で2年間過ごすこと自体が目的にすり替わってしまう方がいること」については、本当によく考える必要があると思いました。すり替わっている方と目的意識がしっかりしている方では、結果に大きな差がでますね。

      拍手 3

    • 池田 澄子
    • 池田 澄子
      1163日前

      日本のような島国にいると、言語の壁を現実的に感じることが少ないので。違う言語を話す民族がたくさんいる中での活動は想像するだけでも大変なものだと分かります。視覚から入る情報は分かりやすく、また記憶に残りやすいですね。素晴らしい課題解決だと思いました。

      拍手 2

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WRITER

青年海外協力隊体験談 後編

太田 旭

【国際栄養・母子保健】途上国へ進出したい日本企業向けコンサルティング、途上国での栄養改善・人材育成事業を担当する栄養士です。2004年~出身地である宮城県にて在宅型ホスピス、認可保育園、離島での僻地医療、災害支援(東日本大震災)に従事。2012年青年海外協力隊としてグアテマラに派遣。2015年アライアンス・フォーラム財団へ入団し、途上国での慢性栄養不良改善・貧困削減を目指して活動中。

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