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はじめまして。管理栄養士の加藤知子です。この春から食塩摂取量を減らすための食事や食事指導法について、コラムを連載することになりました。栄養士としての視点を交えながら、減塩の話題や栄養指導や保健指導に活かせるレシピなどを紹介していきます。

減塩アドバイスは難しい?

生活習慣病の発症を予防するために、健康を増進して発病を予防する「一次予防」には、運動不足、不規則な食生活、過度の飲酒、睡眠習慣、喫煙などの改善があります。特に食生活の見直しは重要な予防策のひとつです。

さて、栄養士の皆様、食塩摂取量を減らすアドバイスを得意としていますか? 私は、日々その難しさを感じながら試行錯誤しています。
私は医療機関にて外来栄養食事指導を担当しており、減塩アドバイスを行う頻度が多くありますが、個人を対象とした減塩対策には限界があるのではないかと感じています。調理法を工夫したり、食塩を減らした料理を作れば、比較的達成しやすいこともありますが、社会的役割の多い世代が自炊をしたり、外食時に食塩摂取量を控えることは簡単なことではありません。減塩が実践できないのは「その人にやる気がなかったから」「自己管理できなかったから」と個人の責任にさてしまうケースも見受けられますが、果たしてそうなのでしょうか。

「外食中心の生活だと食塩量が多くなってしまう」「料理を作る時間がなく、出来合いのものばかりで減塩にはほど遠い」という声もあります。飲食店や惣菜店においても食塩の多いメニューが多くなっています。また、食塩含有量の多い加工食品は安価で手に入りやすく、自炊をする時間やお金をかけてまで食塩摂取量を減らそうという強い動機づけが生まれにくい環境にあると感じます。
栄養疫学研究の第一人者である佐々木敏教授の「佐々木敏の栄養データはこう読む!」によると、減塩対策には社会へのアプローチの方が大きな効果が期待できると指摘した上で、「うす味の食品や料理を普通に食べられる社会環境を作ってほしい」と食品企業や大手レストランチェーンや社員食堂にお願いし、そのような企業の動きを支援し、支えていくこと」が重要であると述べています。1)
(有名な栄養士の必読書ですので、もしまだ読んでいない方がいらっしゃいましたら、早めに読むことをお薦めします。)

減塩の効果を整理してみよう

次に減塩の効果について考えていきましょう。食塩と高血圧の関係は知られていますが、日々の食塩の摂取量を減らすことで血圧にはどのような効果がもたらされるのでしょうか。
日本人の食事摂取基準2015年版において、1日の食塩摂取の目標量は18歳以上の男性で8g未満、女性で7g未満です。一方で、平成29年国民健康・栄養調査の結果によると、食塩摂取量の平均値は9.9g、男性10.8g、女性9.1gで、目標量より多く摂取されているのが現状のようです。2)

佐々木教授は、第5次循環器疾患基礎調査結果をもとに、1日に14gの食塩を食べ続けた場合50歳の時に超えた血圧に、1日あたり7gを食べた場合は65歳になってやっと到達する、と述べています。3) 加齢変化に伴う高血圧の影響も少なからず受けますが、食塩の過剰な摂取は、早期の高血圧症を招くということがうかがえます。また、「体にやさしい食塩摂取量は1日あたり5gか6gまでのようです」3)と提言されており、日本人の食塩摂取量への課題が大きいことがわかります。
1日あたりの食塩摂取量を減らすことに着目されがちですが、それよりも「いままで生きてきたなかで、どれだけ食塩を摂取したか」がポイントになります。長い人生、よく考えてみると、年齢が低い方・血圧が正常値の方が一次予防として食塩を減らすことが重要と言えます。

ところが、栄養指導やカウンセリングを行っていると、
「いままでずっと血圧は低めだから高血圧なんて無縁。塩辛いものは気にせず食べています」「カロリーや糖質は気にするけど、塩は気にしていない」
「降圧薬を飲んでいるから血圧もちょうど良いし、食塩量は気にしていない」
といった言葉を聞くことはありませんか? 
こういったことから、一般の方々の塩に対する意識や関心度はあまり高いとは言えないのではないでしょうか。
血圧は、かなりの高血圧にならない限り、自覚症状に乏しいのが特徴ですので、無症状の時期にいかに関心をもってもらうかが課題です。

「将来、正常な血圧を保つために塩を減らしていこう!」
これぞ栄養士が中心となってムーブメントを起こしていける一次予防だと私は考えます。
若い年代から、減塩に取り組むことで将来の高血圧予防につながるとは、素晴らしいと思いませんか? 一次予防に貢献できる栄養士という仕事は、とても素晴らしい職業だと誇りに思っています。塩を減らしていきたい対象者は個人だけに留まらず、その家族、地域、社会が対象です。

これから一緒に食塩を減らすための栄養士としてのアクションを考えていきませんか?

今回のまとめ

・減塩は個人だけでなく、社会全体で取り組むべき国民の共通課題と再認識しよう
・将来の高血圧症を予防するために、若い世代から減塩に取り組んでいこう

参考引用文献:
1)佐々木敏、「佐々木敏の栄養データはこう読む!」、女子栄養大学出版部、2015年、P.88-89
2)平成29年国民健康・栄養調査、厚生労働省
3) 1)と同じ、P.94ー106

協賛:株式会社マルハチ村松

だしと食事のマルハチ村松コラムシリーズ
第1回 栄養士必見!一歩先をいく減塩指導
第2回 栄養士必見!20代のうちに知っておきたい&学んでおきたい食事術
第3回 だしがあればアレンジ簡単。押さえておきたい夏のおかず3選

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みんなのコメント( 2

    • Eatreat 編集部
    • Eatreat 編集部
      82日前

      川口さん
      コメントありがとうございます!特定保健指導などでも塩分についての指導はホットですよね。編集部の方では、減塩系レシピなども特集できたらおもしろいかなと考えております!

      拍手 4

    • 川口 由美子
    • 川口 由美子
      89日前

      減塩指導について、とても興味深く拝見いたしました^^。
      皆様ご存知のこととは思いますが、現在、厚生労働省では、日本人の食事摂取基準を見直しており、ここに書いてある数字とは変わり、もっと減っていきますよね。(3月22日に検討会があったかと)
      WHOの基準にはまだまだ達していない現状で、私達はどのように指導をしていったらいいのか、そしてどういう働きかけができるのか、日々考えなくてはいけませんね。
      まずは自分でいろいろ経験してみないといけませんね・・わたしったら塩分、毎日どのくらいとっているんだろう・・・(恥)ちょっと考えてみます。

      拍手 8

WRITER

第1回 栄養士必見!一歩先をいく減塩指導

加藤 知子

・下記の各分野において、診療の一環として患者への栄養教育・患者会の開発、運営、講師担当、医療従事者への栄養教育等の一連の業務を行った。 <栄養指導・栄養相談事業>    ・武越内科クリニック(平成20年度~平成22年度、平成26年度)    ・地域栄養サポート自由が丘(平成23年~平成26年度) ・医療法人社団菅沼会 腎内科クリニック世田谷(平成24年度〜) ・医療法人瑛会 東京ネクスト内科・透析クリニック(平成25年度〜) ・渋谷笹塚循器HDクリニック(平成26年度~) ・はしば糖尿内科クリニック(平成26年、平成27年度) <疾病予防・啓蒙事業> ・認定特定非営利活動法人腎臓病早期発見機構(IKEAJ)の依頼を受けKEEP事業としての生活・食事指導を担当(平成25年度~腎内科クリニック世田谷にて) ・公益社団法人糖尿病協会 facebookサポーター(平成25年度~) 糖尿病や糖尿病療養指導の知識・啓蒙活動を管理栄養士の立場から支援。

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