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代表的な栄養素について管理栄養士が解説するシリーズ「Eatreatの栄養素事典」。
第17回目は「ビタミンB1」についてです。

ビタミンB1とは

ビタミンB1は、水に溶けやすい水溶性のビタミンで、最初に発見されたビタミンです。別名チアミンといいます。これは、「thio(イオウ)」と「amine(アミン)」の合成語になります。ブドウ糖をエネルギーに変える際に、必要不可欠な栄養素です。

ビタミンB1の働き

ビタミンB1の働き方はさまざまですが、わかりやすく言うと、たまった疲れをスッキリさせることです。身体は運動をすると、乳酸がたまって疲れやだるさを感じます。ビタミンB1は、その乳酸をエネルギーに変える手助けをして、疲れを取り除いてくれるのです。また、糖質を身体で使うエネルギーに変えるためのバイプレーヤーでもあります。ビタミンB1の働きがなければ、糖質はエネルギーではなく、脂肪に姿を変えていきます。
また、ビタミンB1は脳や神経機能などの働きも助けています。脳の栄養になる糖質をきちんととっていても、ビタミンB1が足りないと、イライラしたり、ストレスを感じやすくなったりします。これが、ビタミンB1が「道徳的ビタミン」とも言われる由縁です。このような状態に陥ったら、ビタミンB1が足りていないというサインかもしれません。

甘いものや炭水化物、アルコールの過剰摂取に注意

また、甘いものや炭水化物を多く食べると、糖質をエネルギーに変えるのに体内機能がフル稼働となり、疲労回復が後回しになくなってしまうということが起こります。例えば、夏に食欲がなくて、そうめんだけはなんとか食べているけれど、なんだか身体がだるい…ということを経験したことはありませんか?また、お酒が好きな方は、アルコール摂取についても注意が必要です。アルコールも糖質の一種なので、ビタミンB1の必要量を増加させ、さらにビタミンB1の吸収を阻害すると言われているからです。
さらに、ぶどう糖の分解の終点で生成されるビルビン酸が増えると、乳酸が増えます。ピルビン酸はビタミンB1があると、アセチルCoAとなり、TCA回路へ進むことができます。ビタミンB1が不足すると、TCA回路へ進めないため、エネルギーができないという事態になってしまいます。(ちなみに、脂肪酸は、アセチルCoAができた後で入ってくるので、ビタミンB1を使わなくて済みます。脂肪はビタミンB1の節約作用があると言われる理由です。)
また、ビルビン酸がビタミンB1不足でたまっていくと、酸性が強いために中毒症状が起きてきます。脚気やウェルニッケ脳症なども、その中毒症状の一部です。

ビタミンB1の不足で起こる脚気とウェルニッケ脳症

脚気は心臓の機能が低下して足がむくんだり、神経障害が起き足しびれたりする症状です。ビタミンB1は、玄米などに多く含まれているのですが、日本人の間でも、元禄時代あたりから、それまでの玄米ではなく、精白した米を食べる習慣が広まったことから、脚気が増えてきました。主として、白米を食べる習慣は江戸で広がっていたため、若者が江戸へ来て、何年か経つと脚気になり、田舎に帰るとたちまち治ってしまうので、「江戸患い」とも呼ばれていました。原因が分からないまま明治時代へ突入し、この頃には、国民病とまで言われるようになっていました。
そこで、日本海軍にも多くなっていた脚気対策のために、軍医の高木兼寛がパンや牛乳、野菜を水兵の食事に取り入れて成果を上げ、白米食主体の食事が脚気の原因であろうと突き止めた努力が、発見の糸口のひとつとされています。その頃、ジャカルタで脚気の研究をしていたエイクマンが、白米で飼われたニワトリは多発性神経症を発症するものの、米ぬかを与えると治癒することを発見しました。その後、鈴木梅太郎が1910年に、米ぬかからアベリ酸と命名した抗脚気因子を結晶状に単離したことを発表。後にオリザニンと名づけられました。 また、ウェルニッケ脳症は、眼球運動の麻痺、歩行運動の失調、意識障害を伴う症状です。このウェルニッケ脳症が慢性化すると、コルサコフ症に移行していきます。コルサコフ症の特徴として、その場で取り繕って作り話をする「作話症」というものがあります。

ビタミンB1を多く含む食品や上手な摂り方

ビタミンB1は水に溶けやすく、アルカリで分解しやすいビタミンです。そして、身体の中には、ほとんど貯められません。だからといって、大量に摂取すればいいかというと、決してそうではありません。バランスよく、ビタミンB1を含んでいる食品を取り入れていきたいものですね。ビタミンB1の含有量は、豚肉でいうとヒレが一番多く、ロース肉、バラ肉の順となります。また、胚芽米や玄米、麦、豆類にも多く含まれています。
わらびやぜんまい、貝類、鯉などの淡水魚には、ビタミンB1を分解するアノイリナーゼ(チアミナーゼ)という酵素が含まれているため、これらと同時に摂取すると、ビタミンB1の吸収量が低下しますが、加熱すると失活する酵素となっています。一方で、にんにく、にら、ねぎなどの野菜には、アリシンという物質が含まれていて、ビタミンB1と反応してアリチアミンを生成します。アリチアミンは水に溶けにくく、小腸からの吸収も優れているので、これらの食材を合わせることで、調理による損失を防ぐこともできます。

最後に…高カロリー輸液療法の注意点

ビタミンB1は静脈栄養時、3㎎/日以上の投与が推奨されています。1997年6月に、厚生労働省から発表された緊急安全性情報には、「高カロリー輸液療法施行中は必ず必要量(1日3㎎以上を目安)のビタミンB1を投与してください」と記載されています。さらに、栄養療法開始前から、ビタミンB1欠乏症が疑われるような病態では、ビタミンB1の追加投与を考慮する必要があります。
また、高カロリー輸液には抗酸化剤として、ビタミンB1を分解して失活につながると報告されている亜硝酸塩が含まれていることがあり、この調整には注意が必要です。そのため、高カロリー輸液を投与する直前に混合するなど、失活を防ぐ必要があることも、頭に入れておきたい知識ですね。

栄養素の含有量はEatreatの栄養価計算機で確認できます。
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参考文献
●七訂 食品成分表2016 女子栄養大学出版部 2016
●ビタミンの事典 日本ビタミン学会 朝倉書店 1996
●簡明食辞林 第2版 樹村房 1997
●栄養素キャラクター図鑑 田中 明・蒲池桂子 日本図書センター 2014
●世界一やさしい!栄養素図鑑 牧野直子 新星出版 2016
●アプローチ生体成分─食物・栄養・健康の化学─ 五明紀春 技報堂出版 1985
●臨床栄養 130巻2号 医歯薬出版 2017
●栄養科学シリーズNEXT 基礎栄養学 第3版 講談社 2015

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みんなのコメント( 1

    • Eatreat 編集部
    • Eatreat 編集部
      31日前

      Eatreat編集部です。本日のコラムは栄養素辞典。ビタミンB1足りてますか?

      拍手 0

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WRITER

栄養素について知ろう⑰「ビタミンB1」とは?

小山 幸子

現在は病院、クリニックでの食事サポート、調理実習のほか、食コラムの執筆等。 『この食事が、人生で最後の食事かもしれない』を、モットーに業務に携わっている。 メカオンチのあがり症。 高校卒業後、会社員として8年間勤務後、26歳で栄養士養成校へ。 教員より年上の生徒だった経験を持つ異色の栄養士。 毎日書道会 会友 (雅号:小山 桃花)

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