代表的な栄養素について管理栄養士が解説するシリーズ「Eatreatの栄養素事典」。
第20回目は「ビタミンB6」についてです。
ビタミンB6とは
ビタミンB6は、またの名をピリドキシンといいます。そして、ピリドキシン、ピリドキサール、ピリドキサミンの大きい3つの型があり、同じ作用をもつ10種以上の化合物の総称になります。
ピリドキシンの名称は、この化合物が数個の酸素原子(oxygen)を含むピリジン(pyridine)誘導体であることにちなんでいるとされています。ネズミの皮膚炎の治療因子など、発見のいきさつには諸説あるようです。
最も重要なピリドキサールリン酸(PLP)
この3つの型のうち、ピリドキサールリン酸(PLP)が、最も重要な役割を果たしています。「アミノ酸のあるところピリドキサール酵素あり」とも言われています。アミノ酸から糖質、脂質へ、逆に、糖質、脂質からアミノ酸へという転換に関係しています。
この代謝に必要な、トランスアミナーゼ(アミノ酸分解酵素)を助ける酵素として、ビタミンB6が必要なのです。これが何を意味しているかと言うと、たんぱく質をたくさん摂った時は、ビタミンB6もたくさん必要になってくるということです。たんぱく質が、身体の中で無駄なく使われるように、アミノ酸の代謝にビタミン6は欠かせないのです。
さまざまなピリドキサールリン酸の働き
また、腸内細菌によっても生産がされます。そして、身体の中でトリプトファンからニコチン酸への変換にも、さらには、リノール酸からアラキドン酸への変換にもひと役かっています。まだまだあります。神経を伝達する物質のGABA(γ-アミノ酪酸)の生成にも関与しているのです。
不足すると、皮膚の材料に作りかえる事ができなくなるため、皮膚炎の他に、湿疹、口内炎などの原因になります。加えて、安眠をもたらすGABAが作られないために、不眠の一因になることもあります。また、ビタミンB6が身体の中で働くためには、ビタミンB2の手助けが必要になります。
ビタミンは縁の下の力持ち
植物性食品中のビタミンB群は、糖やたんぱく質と共有結合した形でも存在しています。これらの形は、ヒトの消化酵素では消化しにくい形態もあるため、必ずしも完全に消化、吸収されるわけではありません。一般に植物性食品に含まれるビタミンB群の生体利用度は約50%で、一般的な食事のビタミンB群の生体利用度は約70%と言われています。
ビタミンの研究は、牛乳の中の因子に脂溶性因子のFat-soluble Aと、水溶性因子のWater-soluble Bという発見から始まります。その後、Water-soluble Bは、単一の物質ではなく、複合体ということが分かり、成分はそれぞれ、B1・B2・B6・B12と呼ばれるようになりました。
B3・B4・B5もありましたが、実は同じものだったことが判明し、欠番になったといういきさつがあります。ビタミンB群は、食品中で糖やタンパク質と結合した形で存在することが多いビタミンで、ひとつでは効果が発揮しにくいのも特徴です。どの世界にも、目には見えなくても縁の下の力持ちがいるものですね。
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参考文献
●七訂 食品成分表2016 女子栄養大学出版部 2016
●ビタミンの事典 日本ビタミン学会 朝倉書店 1996
●簡明食辞林 第2版 樹村房 1997
●栄養素キャラクター図鑑 田中 明・蒲池桂子 日本図書センター 2014
●世界一やさしい!栄養素図鑑 牧野直子 新星出版 2016
●アプローチ生体成分─食物・栄養・健康の化学─ 五明紀春 技報堂出版 1985
●栄養科学シリーズNEXT 基礎栄養学 第3版 講談社 2015