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前回のコラムでは、世界が取り組んできた人口政策「リプロダクティブ・ヘルス/ライツ」が生まれるまでの背景とその意味について解説しました。今回はその潮流や具体的策について、お届けします。

享受すべき9事項

今から20年前の1999年に、世界の人口は60億人になりました。1999年に発刊された世界人口白書で、「60億人の世界では、次の9事項を受け入れ可能となる社会/世界を求める」として9事項が発表されました。この中には、世界の開発目標(2000年~2015年はMDGs※1、2015年~2030年はSDGs※2)の目標の中にも、含まれる事項が多くあります。

※1
MDGs(ミレニアム開発目標): 2000年9月、ニューヨークで開催された国連ミレニアム・サミットにて採択された国連ミレニアム宣言と、1990年代に開催された主要な国際会議やサミットで採択された国際開発目標を統合して、一つの共通の枠組みとしてまとめられたもの。
※2
SDGs(持続可能な開発目標):持続可能な開発のための17のグローバル目標と169のターゲット(達成基準)からなる国連の開発目標。2030年に向けた具体的行動指針。

 

求められる9事項とは? ~栄養不良との因果関係~

では、9項目について私の補足とともに具体的に見ていきましょう。

【1】すべての新生児が、健康な妊娠期間を過ごした母親から生まれる。
[補足]母体が不健康/栄養不良状態である場合、へその緒を通して胎児に送られる栄養の質や量が低くなります。このため、不健康/栄養不良状態の母体から生まれる赤ちゃんは栄養不良状態(貧血や低体重児)となる確率が統計学的に高まります。

【2】すべての乳児が、適切な食事を与えられ、予防接種が受けられる。
[補足]人の脳の容量は妊娠(受精)から2歳になるまでの1,000日の間で、ある程度決まると言われています。①も含め、乳児の時期に予防接種で防げる病気や、不適切な補完食(離乳食)の影響で、乳児の発育が大きく制限されることなく、最大限に成長環境を整えるべきだと言われています。

【3】すべての女児が、より良い栄養を摂取し、また、よりよい保健ケアや教育を受ける。

【4】すべての若い女性が、HIV感染から身を守ることができる。

【5】すべての女性が、妊娠の間隔をあけることができる。

[補足]単に母体が妊娠出産によって受けたダメージを回復するための期間というのではなく、世界保健機構では一般的に子どもが2歳になるまでは、母乳による栄養補給法(生後6か月からは食事も併用)を推奨しています。また、授乳中の妊娠は、流産の可能性が高まるため、妊娠間隔を十分あけることが合わせて推奨されています。授乳中に出る通称「幸せホルモン」とも呼ばれるオキシトシンは、産後の弛緩した子宮を産前の子宮に戻すため、子宮を収縮させる働きがあります。この収縮が妊娠の場合には、流産へと繋がってしまうのです。

【6】すべての男性が自分と家族のウェルビーイング(福利)を守る責任があるということを受け入れる。

【7】すべての高齢者が、若いときから自分の健康を守っている。

【8】すべての人が、正しい情報を得て、責任ある行動をとることによって健康リスクを回避できる。

【9】すべての人が、自分の人生の重要な決定について、選択肢を持ち、自ら決めることができる。

 

次回予告

いかがでしたでしょうか。次のコラムでは、発展途上国での人口爆発がもたらす影響を踏まえ、国際栄養士が実施する「家族計画」とは何か、家族計画が実施できない原因などにも触れながら書いていきたいと思います。

 

参考文献
MDGsとSDGsゴール比較
https://www.jica.go.jp/aboutoda/sdgs/SDGs_MDGs.html

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みんなのコメント( 1

    • Eatreat 編集部
    • Eatreat 編集部
      12日前

      Eatreat 編集部です。今回は前回に引き続き、国際栄養方面で活躍中の太田旭さんのコラムです。
      人口と栄養不良の関係についてとても考えさせられます。

      拍手 0

WRITER

第2回 若年出産や多産が起因する栄養不良の悪循環

太田 旭

【国際栄養・母子保健】途上国へ進出したい日本企業向けコンサルティング、途上国での栄養改善・人材育成事業を担当する栄養士です。2004年~出身地である宮城県にて在宅型ホスピス、認可保育園、離島での僻地医療、災害支援(東日本大震災)に従事した。2012年青年海外協力隊としてグアテマラに派遣。2015年アライアンス・フォーラム財団へ入団し、途上国での慢性栄養不良改善・貧困削減を目指して活動中。

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