オリンピック選手村では食材の使用基準がある!?
いよいよ数か月後に迫ったオリンピック・パラリンピック。日本で開催されるオリンピック・パラリンピックのために設定された「持続可能性に配慮した調達コード」。これには世界中から来日する外国人選手たちを含め、提供する料理に利用する食材に対して、分類別に定められた基準が示されています。
基準を設定した組織委員会は、大会の趣旨に基づき、透明性やデュー・ディリジェンスの概念を含む以下の4つの原則の下、持続可能性に配慮した調達を行うことを示しています。
<4つの原則>
①どのように供給されているのかを重視する
②どこから採り、何を使って作られているのかを重視する
③サプライチェーンへの働きかけを重視する
④資源の有効活用を重視する
世界のため&日本のため!なぜ設定されたのか
それではなぜ、このような原則に基づく基準を設定することになったのでしょうか。それは、国連で採択された“持続可能な開発目標(SDGs)”において、持続可能な消費及び生産のパターンを確保するためです。東京2020大会において、持続可能性に配慮した調達に取り組むことは、企業や公共部門における持続可能な慣行の導入・促進を含め、社会全般における消費・生産パターンの変革というレガシーにつながるものと考えられているようです。
アフリカ農村部の現状
途上国と言われる国々では、日本と比較して小規模なオーガニック農業経営が一般的なため、「誰がどこで育て、いつどこで採られたものであるか」はより明確です。ただし、日本では生産者と生産地をきちんと示すことができやすいのに比べ、途上国と呼ばれる国の農村部には、住所がない場合が多いため、生産地を詳しく示すことが難しいという点が懸念点として挙げられます。しかしながら、地産地消の循環型農業が主流の場合は、生産者の顔も産地もすぐ見えるため、特に問題意識はないようです。
私自身、家の住所がない、紙がないので発注書・納品書・領収書がない、読み書きができない方が多いことで、食材利用を証明/記録する術がなく困ったことがありました。試行錯誤し、最終的には写真記録を利用したり、サインの代わりに拇印をもらうことにするなど、現地スタッフと都度話し合って独自のルールで運営管理をしていました。
アフリカでも、調理実習や食育イベントなどを行う集団調理の場面では、たとえ安全な食材だとしても、安心して食べられるためには、取り扱い・記録・調理などの面も、オリンピックの選手村ほど厳密ではなくても、考慮できることが求められるでしょう。
日本の課題
何を使って作られているかが不明確になってしまう大きな要因は、農薬や化学肥料、遺伝子組み換え食品やゲノム編集が行われた食品の利用が伴う場合です。その理由は、現行の食品表示法ではこれらの利用の有無を含む「何を使って作られているのか」がきちんと伝えらないものになっているからです。
日本は農薬や遺伝子組み換えの利用・流通が世界最高レベルに高くなってしまったと言われています。自分の身体に取り込む食材は、その情報をきちんと得られた状態で選択ができるよう、オリンピックのみならず、日本の食品表示法や種子法を国際基準に近づけることが、急務の課題であると言えるでしょう。
参考文献
「持続可能性に考慮した調達コード」
公益財団法人東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会
https://tokyo2020.org/jp/games/sustainability/sus-code/
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