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がんの罹患数が年々増加している中、2014年より日本栄養士会と日本病態栄養学会は共同で「がん病態栄養専門管理栄養士」の認定をスタートさせました。がん患者の栄養管理はこれからますます必要とされる分野です。こちらの「がんと食事」シリーズのコラムでは、がんに関する情報、食事や栄養管理などの情報を紹介していきます。
シリーズ第1回目は、イートリスタの加藤知子さんが「胃を手術したあとの食事の工夫」を全4回にわたりお伝えします。

増加する胃がん

生涯でがんにかかる確率は2人に1人となっています。がん=不治の病というイメージがありますが、外科治療や化学療法(薬物療法)、放射線治療などの治療技術の発展により、検診等で早期発見がなされた場合、発見されたステージにより治療することが可能となりました。そのため、がんサバイバー※としてがんと付き合いながら社会復帰をする方が増えました。
※がんと診断された方、治療中や経過観察中、がん治療を終えた方など、すべてのがん経験者のこと

胃がんは日本人に多いがんのひとつで、新たに胃がんと診断される患者数は、毎年約12万人にものぼります。男女比でいうと2:1で男性が多く、60歳くらいから罹患率が高くなります。進行胃がん(スキルス型)は若い女性に多いという特徴があります。
2018年のがんによる死亡数では、男女合計で肺がん、大腸がんに次いで3番目に多いのが胃がんとなっています。

胃の働き

胃は体のなかでどのような働きをしているのか、おさらいをしてみましょう。胃は非常によく伸びる消化器で、空腹時はぺったんこにしぼんだ状態になっていますが、食後は最大内容量が1.2~1.6Lにもなります。(個人差があります)

胃の働きには、大きくわけると以下の3つがあります。
①食物を一時的に貯めておく「貯留能」
②食物を混ぜて、胃液でどろどろの状態に消化する「破砕・混和」「消化」
③食物を胃の次にある十二指腸に少しずつ送っていく「排出調整」

口の中で唾液と混ざり細かくなった食物は、飲み込むと食道を通過し、胃に届きます。胃の入り口は噴門(ふんもん)といい、胃液や胃の内容物が食道へ逆流するのを防いでいます。入り口の噴門と出口部の幽門(ゆうもん)が閉じて食物を貯めます。そして、胃酸が食物の殺菌を行い、食物と胃酸は混ぜ合わされてどろどろの粥状になります。胃酸のほかに、ビタミンB12の吸収に必要なキャッスル内因子や、消化に必要なホルモンが分泌されており、デンプンやたんぱく質、脂肪が消化され、スープ状になります。そして、幽門が開き、胃の内容物を2~4時間かけて十二指腸へ排出します。
消化は胃で行われますが、胃からの栄養素の吸収はわずかで、ほとんどの栄養素は小腸で吸収されます。

胃がんの治療

胃がんは発症した部位や、がんの進行状態によって治療法が異なりますが、多くは手術を行う外科治療となります。胃がんは次の2つから胃の切除範囲が決定され、それにより手術の方法が変わります。
①がんの大きさや深さ・リンパ節や他臓器への転移から決まる進行度
②がんの発生場所

手術方法については日本胃癌学会の提唱するガイドラインを標準治療としています。(日本胃癌学会「ガイドライン」のページ:http://www.jgca.jp/guideline.html)

早期胃がん:胃の粘膜から粘膜下層まででとどまっているがん
進行胃がん:胃の固有筋層より深くまで達しているがん

リンパ節への転移が認められない早期胃がんの場合、抗がん剤投与や開腹をすることなく、内視鏡にてがんを切除する内視鏡的粘膜切除術が可能なことがあります。

進行胃がんでは、開腹術による外科手術が一般的に行われます。がんが胃の噴門の近くにあれば胃全摘出術、噴門から離れたところにあれば幽門側胃切除術を行います。
リンパ節や胃の周辺の臓器にまでがんが広がっている場合、胃全摘出術に加えてリンパ節、胆嚢(たんのう)も切除されます。また、抗がん剤などの薬を使用する化学療法や、がんの転移のために骨の痛みが強い場合、痛みの緩和を目的に放射線を使用することがあります。

胃がんの手術方法

① 胃全摘出術
がんの発生が広範囲にわたっている場合や、噴門側にがんがある場合には、胃の全摘出術が行われます。この場合、胃を切除したあとの食道と十二指腸を直接吻合すると、逆流性食道炎がおこりやすくなってしまうため、十二指腸の先にある空腸を途中で切断し、食道と吻合します。胃全摘出術では、食物を貯めておく場所がなくなるため、食物は一気に小腸へ流れ込むことになります。

② 幽門側胃切除術(幽門部=胃の出口側。十二指腸へと続く部分)
多く行われる術式です。がんが胃の幽門側に発生しており、噴門まで離れている場合に、胃の幽門側約3分の2を切除します。噴門は残され、胃体部もある程度残ります。

③幽門保存胃切除術
胃体部(胃の中心部分)の早期がんのうち、噴門、幽門から一定の距離が離れている場合の術式です。胃上部3分の1と幽門前庭部の3~5㎝程度を温存できます。この術式では、食物を胃の中に貯めておくことができ、逆流もありません。少しずつ食物を腸の方へ送り出すこともできます。

④噴門側胃切除術(噴門部=食道に近い部分で、胃の入り口)
がんが噴門に近い場合は、噴門を含めて胃の上部約2分の1を切除します。この術式の場合、食物が食道から胃に流れる部分が狭くなるため、よく噛まずに飲み込んでしまうと入り口側で食塊が詰まりやすくなります。

胃切除術を受ける患者さんへは、食事療法・食べ方の指導がとても大切になってきます。

 

参考文献
1)国立がん研究センターがん情報サービス、がん登録・統計 
https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/stat/summary.html
2)日本胃癌学会「ガイドライン」
http://www.jgca.jp/guideline.html

 

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みんなのコメント( 1

    • Eatreat 編集部
    • Eatreat 編集部
      16日前

      「がんと食事」の第1シリーズでは、加藤知子さんが「胃を手術したあとの食事の工夫」についてを全4回にわたり解説します。第1回目の今回は、胃がんの治療方法や手術方法についてを中心にお伝えします。

      拍手 1

WRITER

第1回 胃を手術したあとの食事の工夫 胃がんの治療

加藤 知子

イートリートアカデミー本気で特定保健指導したい人向け講座【知識編】の講師。 仙台白百合女子大学卒業。 総合病院勤務、人間ドック・健診機関勤務を経て、現在一般社団法人食サポートオフィス代表。 生活習慣病を予防するための生活・食事相談から疾病により食事療法を必要とする方への食事相談など広範囲にわたって食生活をサポートしている。 特定保健指導制度の開始とともに特定保健指導室の立ち上げや特定保健指導に従事。 現在はWEBサイト・雑誌・書籍への掲載やレシピ提案、特定保健指導や外来栄養食事指導に従事する管理栄養士へのトレーニングを行っている。 【所有資格】 管理栄養士、看護師 日本糖尿病療養指導士、病態栄養認定管理栄養士

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