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加藤知子さんがお伝えする「胃を手術したあとの食事の工夫」の第2回目です。

胃の手術後に起こる変化

手術により胃を失うと、体にどのような変化が起こるのでしょうか?
手術方法により違いがありますが、胃を切除する範囲が大きいほど胃の機能を失うことになるので、手術後の身体にもたらす影響が大きくなります。特に支障をきたしやすいのが食生活です。

前回のコラムで胃の機能について述べましたが、胃を手術することで、胃が担っていた本来の機能が失われ、以下のような状態になります。
① 食物を一時的に貯めておけなくなる「貯留が不十分になる」
② 食物の消化が不十分になる「破砕・混和が不十分」「消化ができない」
③ 十二指腸へ食物を少しずつ送り出すことができない「排出調節が出来ず一気に小腸に流れ込みやすい」

胃を手術した後は、腸の動きがあるか、嚥下(飲み込み)状態に問題がないかを確認したあとに飲水を始めます。消化管を手術したあとは、早期から経口栄養摂取を開始することが腸管運動の回復を促進したり、手術後に起こりやすい麻痺性イレウスを予防できると報告があります。
胃を手術すると、部分切除術(幽門側胃切除術)の場合は術後3~4日目から、胃全摘出後は術後4~5日目程度に食事を開始することが多くなっています。手術後の栄養状態の早期回復を図るために、経口での飲水摂取に問題がなければ、流動食または3分粥より食事を開始し、5分粥、全粥食と段階的に進めていきます。常に消化器症状を観察しながら、食事の形態を変え、食物・栄養摂取量を増加してきます。食事のみで栄養補給が不十分の場合は、経腸栄養剤を併用することもあります。

胃を手術すると、手術後の食事の仕方が大きく変わることがポイントです。手術後は一時的に食べられる量が減ります。そのため、1日5~6回食にわけて食事をし、1回量を少なくします。
病院の食事では、1日3食(朝昼夕)は食事とし、間の食事(10時・15時・20時)は、間食のようなものを提供することが多くあります。

胃がんの手術は、クリティカルパスといって、治療や看護ケア、栄養摂取方法の手順を標準化し、診療の効率化や医療の質の均一化をはかるためのプログラムになっていることがあります。(クリニカルパスとも呼びます。)
医療機関によりプログラムが異なっており、患者さんの背景や個人差もあるので、あくまでスケジュールは目安のひとつで、患者さんの手術後の状態により変更することがあります。

手術後の食べ方のポイント

胃を手術したあとは、食物を貯めておく場所、食物を細かくする機能、食物を少しずつ小腸へ送る機能が失われた状態です。腸の運動が確認できたら、少量から食物を食べ始め、腹部症状や全身の状態をみながら流動食から3分粥食、5分粥食、全粥食へと徐々に形のある食物に変えていきます。

また、術式により食べ方の注意点があります。術式ごとに食事に関係するポイントを以下の表にまとめました。

術後は段階的に食事の形態が変わります。各段階での説明やアドバイスを紹介します。

【流動食開始時】
・ほぼ液体が中心ですが、一気に飲み干さずに、噛みながら食べるイメージを意識します。
・1回の食事につき最低30~40分程度の時間をかけて、ゆっくり食べることが重要です。
・無理に全量食べようとしなくて良いです。
・少量ずつ、わけて食べましょう。

【流動食から3分粥に変化するとき】
・流動食よりも固形物が増えてきます。1回の食事量も増えますので、ゆっくりと噛みながら食べましょう。
・固形物が混ざるので、噛んで・飲み込んで・消化できるかを練習する時期です。
・胃は食べたものを一時的に貯めておく働きをしていましたが、胃がなくなったぶん、歯を使ってよく噛んですりつぶしてから飲み込むことで、消化吸収を助けることができます。
・胃の代わりに、口でよく噛んですりつぶし、唾液で消化を助けるイメージを持ちましょう。

【3分粥から5分粥へ変化するとき】
・固形物が増えてきます。咀嚼を十分に行い、食べものを消化しやすい状態にしてから飲み込みましょう。
・形のあるものは時間をかけてゆっくり食べるようにします。
・補食(10時・15時・20時の間食)は食事の一部になるので、栄養を補給できるものを選ぶようにします。
・食後のダンピング症候群※についての説明(ダンピングがなければ1日3回食になることもある)
※胃切除後の再建など、食物の流れを変えることにより、これまで胃の中を通っていた食物が直接腸に流れ込むために、めまいや動機、発汗、頭痛などさまざまな不快な症状が起こること。

【全粥食に移行するとき】
・手術前に食べていたような一般的な食事に移行する時期なので、食品数や食事時間を増やしていきます。
・1品あたりの食材の種類を増やし、徐々に手術前に食べていたような一般的な食事に近づけていきます。
・消化しやすい食材を選択すると良いでしょう。

また、入院中の患者さんに多い悩みを以下にまとめました。
「提供された食事量を全部完食できない」
「食べ終わったと思ったら、また次の食事がくるので、頻回の食事は嫌だ」
「もともと、早食いをするくせがあり、つい以前の調子で食べたらダンピング症状を起こしてしまった」
「あまり噛まずに丸のみをしてしまったら、のどでつかえて嫌な思いをした」
「手術前と比べて体重が減ってしまい、早く戻したい気持ちから無理して食べていたら、苦しい思いをした」
「職場復帰をしたら、1日5~6回食は実施できない」

術式の違いにより、起こしやすい症状と食べ方や不快症状への対策方法は変わります。
個人差がありますが、胃全摘出術を受けた方ですと、手術から数か月から1年程度で普通の食べ方ができるようになってきます。噴門側胃切除、幽門保存胃切除などの幽門部を残す手術を行った方ですと、手術後2~3ヶ月程度で普通の食べ方ができるようになってきます。患者さんへは、焦らず、体に慣れていくようアドバイスをします。

 

参考文献
1)最新版・胃を切った人を元気いっぱいにする食事160、主婦の友社

 

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みんなのコメント( 1

    • Eatreat 編集部
    • Eatreat 編集部
      9日前

      「胃を手術したあとの食事の工夫」の第2回目です。胃がんの手術後に体に起こる変化や食事の進め方や食べ方のポイントを中心に解説されています。

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WRITER

第2回 胃を手術したあとの食事の工夫 術後食から全粥食へ

加藤 知子

イートリートアカデミー本気で特定保健指導したい人向け講座【知識編】の講師。 仙台白百合女子大学卒業。 総合病院勤務、人間ドック・健診機関勤務を経て、現在一般社団法人食サポートオフィス代表。 生活習慣病を予防するための生活・食事相談から疾病により食事療法を必要とする方への食事相談など広範囲にわたって食生活をサポートしている。 特定保健指導制度の開始とともに特定保健指導室の立ち上げや特定保健指導に従事。 現在はWEBサイト・雑誌・書籍への掲載やレシピ提案、特定保健指導や外来栄養食事指導に従事する管理栄養士へのトレーニングを行っている。 【所有資格】 管理栄養士、看護師 日本糖尿病療養指導士、病態栄養認定管理栄養士

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