COLUMN

運動量が多いアスリートにおいて、夏場はどのような対策が必要なのでしょうか。
後編では、大学生アスリートへの具体的なサポート事例をもとにご紹介いたします。
前編のコラムはこちら。

セミナーによる知識の習得

チームサポートにおいて、講義を行う機会があれば、熱中症予防や水分補給方法についてお話します。
実践につなげるには、ただ「水分をしっかり飲みましょう」だけでなく「なぜ飲む必要があるのか」を理解してもらうことが大切です。そのために、体内での水分の働き、脱水症状と熱中症の関係、発汗のメカニズムなど、理論的な部分から知識を深めてもらうようにしています。

熱中症は食事の量や内容とも関係しています

夏場の栄養管理は「飲むこと」ばかりに重きを置かれがちですが、それ以前に「食事で十分な栄養を確保しておくこと」がとても重要です。
日ごろ私たちは、飲料以外に食事からも多くの水分をとっています。例えば、野菜や果物は8~9割が水分でできているので、貴重な水分の補給源です。また、運動する前の食事でとった塩分が胃や小腸に残っていれば、運動中の電解質不足の予防にもなったりします。

食生活が乱れがちな大学生には、「毎日欠食せず、空腹の状態で運動しないようにすること」がエネルギー不足だけでなく、熱中症予防にもなることを夏場の栄養管理の大切なポイントとして伝えるようにしています。

体重計測のすすめ

人の体は2%以上の水分損失があると、めまいや重苦しさなどの意識障害が生じてくるとされています。判断力の低下などパフォーマンスに影響を及ぼさないためにも、アスリートは体重減少が2%を超えないようにする必要があります。

運動の前後で体重を計測することで、脱水レベルを確認することができます。例えば運動前に体重50kgだった選手の場合、2%=ちょうど1kgなので、運動後に体重が49kg以下まで減らないような水分補給が運動中に必要となります。
体重は運動前後のみならず、毎朝起床時に計測する習慣を身につけることも、日ごろのコンディション管理として推奨しています。

大学生アスリートにおけるサポートのあり方

アスリートはコンディション管理が大切とはいえ、無理な取り組みを続けるとストレスになってしまうことがあります。
大学時代は、今後の将来について考える大事な時期です。学生生活においては「楽しむこと」が心の栄養になり、それがスポーツでのパフォーマンスやその後の人生につながったりもします。

暑さで食欲が低下するなど一度に十分な食事量がとれない場合は、一口サイズのおにぎりを複数用意して少量ずつとるよう勧めたり、経済面の都合により毎回の練習でスポーツドリンクの購入が難しい場合には、手作りのスポーツドリンクレシピを教えて準備を促すなど、個人に寄り添ったサポートの工夫が求められます。

暑い日々はまだ続きそうですが、今後多くのアスリートが最高のパフォーマンスを発揮していけるよう、心から願っています。

参考文献
・鈴木志保子著:「理論と実践 スポーツ栄養学」、日本文芸社、(2018)
・鈴木志保子著:「健康づくりと競技力向上のためのスポーツ栄養マネジメント」、日本医療企画、(2011)

関連コラム
「大学生アスリートに向けた夏場の栄養管理 ~前編~」
「ケガの予防・回復のための食事」

みんなのコメント( 1

    • Eatreat 編集部
      826日前

      大学生アスリートに向けた夏場の栄養管理。後編は具体的なサポート事例をご紹介いただきます。

WRITER

山田 志織

【主な活動】 ◆特定保健指導(ICT面談は4000件以上経験) ◆産業保健指導(健康保険組合非常勤) ◆研修(管理栄養士の育成) ◆コラム連載 ◆セミナー講師 ◆スポーツ栄養 【特技】 ★マラソン(走歴15年以上、100kmマラソン完走) ★アナウンス(学生時代アナウンス部)

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