マラソン大会で最高のパフォーマンスを発揮するには、日頃の食生活でどのようなことに気をつければいいのでしょうか。
今回は、大会に備えたトレーニング期に着目した栄養管理のポイントをご紹介します。
前回のコラムはこちらをご覧ください。
食事から摂取したエネルギーや栄養素が、走るための土台となる
大会にエントリーし、「完走したい」「記録を出したい」と目標をもって練習に励むようになると、つい走ることばかりに目を向けがちになります。しかし、マラソンでよい結果を出すには、走ることと同じくらい食べることも大切です。
人の体は食べたものが材料となって作られており、走るための体力は日々の食事でまかなわれています。スポーツは「心・技・体」のバランスが重要といわれますが、その「体」の土台となるのが、食事です。
エネルギー消費に見合った食事量を確保することはもちろん、良好なコンディションを維持するための工夫も必要になってきます
疲労を蓄積させないために
狙った大会に向けてランニングの頻度が増えたり、強度の高い練習をするようになると、体に疲れが生じてきます。
激しい運動を長時間行うと、運動を終えてからも数時間にわたってエネルギー代謝が高まった状態が続きます。これはEPOC(Excess Post-exercise Oxygen Consumption:運動後過剰酸素消費量)といって体を回復させるためにエネルギーが使われている状態で、安静にしていても呼吸が深くなったり、体のほてりが続いたりします。
インターバル走や長距離ペース走など強度の高い練習を行った日は、運動で消費した分のエネルギー補給だけでなく、リカバリーのためにも、その後の食事で摂取エネルギーを十分に確保する必要があることを頭に入れておきましょう。
早めの補食が疲労の回復を早める
疲労をなるべく早く回復させるには、栄養補給のタイミングが重要です。
高強度の練習を終えたら、翌日以降のコンディションに備えて、すみやかに糖質とたんぱく質を補給しましょう。次の食事までの補食として、鮭おにぎりや卵サンド、肉まんなどの手軽な食品を、練習後30分以内にとっておくのが理想です。エネルギー補給や壊れた筋肉の修復につながり、疲労回復のための有効な手段となります。
また、柑橘系の果物や梅干しに含まれるクエン酸も疲労回復に役立ちます。
これらの食品を用意するのが難しい場合は、ゼリー飲料や果汁100%ジュースなどで代用するのもよいでしょう。
食事とともに大切な水分補給
体内の水分が不足すると、酸素や栄養素を血液で運ぶ働きが損なわれ、パフォーマンスの低下を招きます。
練習の際は、飲料をボトルポーチで身につけたり、すぐに手にとれる場所に置いておくなど、こまめに水分補給ができる環境を整えましょう。15~20分おきを目安に、コップ1杯程度の水分を補給するのが望ましいとされています。
長時間のランニングや高強度の練習で発汗が多くなる場合は、電解質を含んだスポーツドリンクを活用すると、脚の痙攣などのトラブルの予防になります。さらに、糖質濃度が4~8%(100mlあたり炭水化物4~8g)の飲料は体内での吸収が速いため、汗で失った水分や走って枯渇した筋グリコーゲン(エネルギー源)のすみやかな回復に役立ちます。
3回シリーズで連載の「マラソンランナーの栄養管理」。最終回となる次回では、レース期の栄養管理についてご紹介します。
参考文献
・樋口満著:「スポーツする人の栄養・食事学」、集英社新書、(2021)
・鈴木志保子著:「理論と実践 スポーツ栄養学」、日本文芸社、(2018)
関連コラム
・「マラソンランナーの栄養管理 ~ランナーの食事の基本、栄養管理のポイント~」
・「①スポーツ選手の食事の基本」