前回のコラムでは高齢者と脱水の関係について解説しました。
後編の今回は、水分補給の工夫や食欲低下時の対策についてわかりやすく紹介します。
猛暑の夏、高齢者の脱水に対するリスクとは
日本の夏は年々厳しさを増し、特に高齢者にとっては命に関わる危険因子となっています。高齢者の体は、加齢により体内水分量が減少し、喉の渇きの感覚も鈍くなるため、意識的な水分補給が難しくなります。さらに、暑さによる発汗やエアコンの使用の有無など、外的要因も重なり、脱水症状を引き起こしやすくなります。
体内の水分を5%喪失すると口渇や倦怠感、10%喪失で筋肉の痙攣、循環不全などが起こり、20%の喪失で意識障害から、最悪の場合、命に関わることもあります。特に、暑い日が続くと、体温調節機能が低下している高齢者は熱中症のリスクが高まるため、注意が必要です。
高齢者の水分補給のコツ
高齢者が脱水を防ぐためには、日常的な水分補給が欠かせません。以下のポイントを参考にしてみてください。
1.こまめな水分補給
喉が渇く前に、1日を通して少しずつ水分を摂取することが大切です。目安として、1日あたり1.5〜2リットルの水分摂取が推奨されています。1時間ごとにコップ1杯、起床後、入浴前後に加え、外出や運動前後も水分摂取をすることが望ましいです。
2.飲みやすい飲料の選択
水だけでなく、麦茶など飲みやすいものを選ぶと良いでしょう。日常的なスポーツドリンクの摂取は糖質の過剰摂取になる可能性があるため、糖尿病などの疾患がある場合には注意が必要です。
脱水が疑われるときは、経口補水液の摂取が好ましいです。経口補水液はナトリウムを含んでおり、水分のみならず、汗とともに失われた塩分の補充にもなります。高血圧や心疾患などの疾患を持っている場合は主治医に確認してください。
3.飲み忘れを防ぐ工夫
定期的に水分を摂取するために、飲み物を目の届く場所に置いたり、飲む時間を決めておくと効果的です。最近は目盛付きの水筒などもあります。1リットルの水筒を準備して、1日に水筒2本分を飲む、コップ1杯飲んだら正の字でカウントしていくなど決めてもいいかもしれませんね。
4.食事からの水分摂取
スープや煮物、果物など、水分を多く含む食品を積極的に摂取することで、効率的に水分補給ができます。ただし、高血圧や心疾患、糖尿病などの持病がある場合には、主治医に確認をしてください。
食欲がわかない時の対処法
猛暑の中では、食欲が低下しがちです。そのため、栄養不足や脱水防止には、食事の工夫が必要です。
○食事の回数を増やす
一度に多く食べるのが難しい場合は、1日3回の食事を5〜6回に分けて摂取することで、負担を軽減できます。
○食べやすい食材の選択
冷たいものやさっぱりとした味付けのもの、食べやすい形状にしたものなど、食べやすさを重視したメニューを心掛けましょう。ただし、冷たいものばかり食べていると身体を冷やすので、冷たい料理と温かい料理を組み合わせるといいでしょう。
○どうしても食欲が出ない時は
果物やゼリー、プリン、ヨーグルトなど口触りがいいものを摂取して、水分とエネルギーを確保しましょう。また、食事だけでは栄養が不足しがちな場合は、栄養補助食品などを利用することで、必要な栄養素を補うことができます。
参考文献
・「高齢者のための熱中症対策」、厚生労働省、https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/nettyuu/nettyuu_taisaku/pdf/heatillness_leaflet_senior_2022.pdf、(閲覧日:2025年6月1日)
・「健康のため水を飲もう講座」、厚生労働省、https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10900000-Kenkoukyoku/0000205776.pdf、(閲覧日:2025年6月1日)
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