2019年11月から毎月1回開催してきた「栄養と運動のセミナー」は、新型コロナウイルスの影響で中止となることもありましたが、2021年4月で12回目となりました。このセミナーは、地域の在宅高齢者を対象に大田区にあるローソンホーム薬局(以下、ケアローソン)の場所を借りて、地域包括支援センター (以下、包括)と連携しながら行っています。
本コラムでは、地域の方に向けたセミナーを開催するにあたり、私が行ってきたことなどをお伝えしていきます。
セミナーのテーマ決め
これまでのテーマは、「フレイル」「インフルエンザ」が各3回、「オーラルフレイル」が2回、「体重と血液検査値」「高血圧」「骨粗鬆症」「買い物に行けないときの食事」が各1回でした。
年度末に来年度の年間計画を立て、担当講師や日時なども合わせて決めます。セミナーのテーマは、ケアローソン、包括と協議して決定します。「おおたフレイル予防事業」の取り組みとしてケアローソンや包括から要望があり、高齢者が気をつけたい「フレイル」や「オーラルフレイル」は年度ごとに取り上げてきました。また、季節の変わり目で体調を崩しやすい時には「インフルエンザ」、参加者から「血圧」や「血糖」が気になるという意見も多かったので「高血圧」など疾患別のテーマも入れてきました。「糖尿病」や「脂質異常症」の疾患も昨年度は予定していましたが、コロナ禍で中止となってしまいまだこちらのテーマは行えていません。
セミナー内容の組み立て方、工夫点について
テーマが決まったら講義内容を考えます。1時間の講義で、管理栄養士の担当は前半40分です。できるだけ参加者に気づきがあるよう、チェックテストやクイズなど参加型の内容にすることを心がけています。また、ご高齢の方が多いため、専門用語よりも簡単でわかりやすい言い方でお伝えし、資料もシンプルに2~3種類に厳選しています。さらに毎回セミナーでは、テーマに沿ったお土産を用意してアンケートを記入してくださった方に配布しています。これまで、たんぱく質を強化した栄養補助飲料、食塩不使用のだしパックなどを用意してきました。
後半20分は包括が担当し、毎回のテーマに合わせた運動を行います。セミナー終了後は座談会として30分程度、自由にお話しする時間を設け、アンケートの記入や希望者には個別の栄養相談を行っています。
高齢女性のリピーターさんが多い!
参加者は70~80代の高齢女性の方がほとんどで、男性の参加者は残念ながら少ないです。また、独居の方が多いのも特徴です。セミナー開始時から参加されているリピーターさんも多く、最近では参加者ほぼ全員がリピーターとなっています。そこで、セミナーのテーマは同じでも内容を変え、毎回参加者が生活に取り入れやすい実践的な内容としています。
セミナー中に参加者とお話しすると、ご自身では栄養について特に困っていることはないと認識されている方がとても多いことが印象的です。しかし、食事摂取状況やチェックテストなどで生活習慣の振り返りを個々に行うと、バランス不良、欠食や間食が多いなど、ご自身の食事や生活習慣に気づきのあるケースがいくつもありました。
座談会の設置、そして今後の展望について
セミナーは開催当初1時間の設定でしたが、セミナー終了後も参加者やスタッフでお喋りが尽きませんでした。参加者は独居の高齢女性が多いということもあり、皆さんとてもお話し好きで、セミナーを聴くというよりもお話ししたいのでは?(笑)…と感じたため、途中からセミナー終了後に参加者とスタッフが自由に交流できる座談会の時間を設けました。
現在、コロナ禍で開催中止となる回が多く、リピーターさんも外出を自粛して参加を控えていたり、包括でも新規に声掛けができず、セミナーの参加者は残念ながら減少傾向です。コロナ禍前は近隣のクリニックにセミナー開催のチラシを配布したこともあり、今後は基礎疾患をお持ちの中年期や若い方にもセミナーに参加していただきたいです。また、可能であれば調理実習や買い物ツアーなど、より実践的で参加者の行動変容につながる内容も検討していきたいです。
これから地域活動をされる管理栄養士・栄養士さんへ
私が普段仕事をしている病院では糖尿病や腎臓病など基礎疾患があり、食事療法が必要な方ばかりです。しかし、地域の方は基礎疾患のある方もいれば、ない方もいたりとさまざまです。
参加者の特徴を把握して、皆さんの興味や関心のあるテーマ設定をすることも大事ですが、参加者にとって心地よい居場所にすることが何よりも大事であると思っています。
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