「痛風」と「高尿酸血症」は混同しがちですが違います。
このコラムでは「高尿酸血症」の定義について知り、ガイドラインに沿った考え方をご紹介します。
高尿酸血症とは?
高尿酸血症とは、血液中の尿酸値が高い状態を指します。具体的には、血液中の尿酸値が7.0mg/dlを超えると「高尿酸血症」と診断されます。
尿酸はプリン体という物質が体内で分解される際に生成され、通常は腎臓から尿として排出されます。しかし、尿酸の生成が過剰になったり、腎臓での排出が不十分だったりすると、血液中の尿酸値が高くなります。
高尿酸血症の初期段階では自覚症状がない場合が多いですが、放置すると体内に尿酸の結晶が蓄積され、関節や腎臓、尿路に問題を引き起こすことがあります。特に、関節に尿酸の結晶がたまると「痛風発作」が生じ、激しい痛みを伴います。
高尿酸血症によって起きる主な症状
高尿酸血症の主な症状には、痛風発作と腎・尿路結石とがあります。
●痛風発作
関節の内部に尿酸塩結晶が沈着した状態が長期間続くと、急性関節炎を発症します。
激しい関節の痛みや腫れを伴い、足の親指の付け根に最も多く起こります。
●腎・尿路結石
尿路などに尿酸塩結晶が沈着することで引き起こされます。
腎臓・尿路に起こります。
血液中の尿酸値が7.0 mg/dLを超えた状態であっても無症状の場合もあります。これを「無症候性高尿酸血症」と言いますが、尿酸値が8.0 mg/dL、特に9.0
mg/dLを超えたものは、それ以下に比べて将来痛風発作を起こす可能性が有意に高いことが報告されています。
また、高尿酸血症では慢性腎臓病(CKD)、高血圧、冠動脈疾患、脳卒中、2型糖尿病などのリスクも高まることも示されています。
たまった尿酸はどうなる?
関節に沈着した尿酸塩結晶は、尿酸値が6.0 mg/dL前後で融解が始まります。
そのため、血液中の尿酸値を6.0 mg/dL以下に維持できるようコントロールすることが大切です。
④まとめ
「高尿酸血症=痛風」と認識されがちですが、高尿酸血症は厳密には血液中の尿酸値が7.0
mg/dL以上の状態のことです。そして、高尿酸血症の状態が長期間続くことで関節に尿酸塩結晶が蓄積し、炎症を起こすことを「痛風」と言います。
次のコラムでは、尿酸についてもう少し詳しく深堀してみたいと思います。
参考文献
・藤森新 痛風・高尿酸血症の病態と治療 日本内科学会雑誌 107巻3号
https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika/107/3/107_458/_pdf/-char/ja (閲覧日:2025年1月)
・日本痛風・尿酸核酸学会ガイドライン改定委員会:高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン第3版 2022年追補版、診断と治療社(2022)
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