1回目のコラムでは、「脂質の基本」についてご紹介しました。今回のコラムではさらに深堀し、脂肪酸の種類と動脈硬化の関係についてご説明します。
脂肪酸とは?
脂肪酸とは、脂質を構成する成分の一つです。例えば中性脂肪を例にとってみましょう。
中性脂肪は、親水性のグリセロールという物質に脂肪酸が3つ結合して構成しています。この脂肪酸にも種類があり、結合する脂肪酸によって、性質が変わります。
脂肪酸の種類~飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸~
次に脂肪酸の種類について詳しくみていきます。
脂肪酸の種類は大きく分けて2種類あります。
【①飽和脂肪酸】
炭素が水素で満たされた分子構造をしています。
【②不飽和脂肪酸】
水素で満たされていない炭素をもつ分子構造が特徴です。
飽和脂肪酸は、分子構造がしっかりしていて常温で個体になりますが、不飽和脂肪酸は、分子構造が弱く、常温では液体です。
また、不飽和脂肪酸は、二重結合が1か所だけの一価不飽和脂肪酸と二重結合が2か所以上ある多価不飽和脂肪酸とがあります。
一価不飽和脂肪酸は、体内で作れる脂肪酸ですが、多価不飽和脂肪酸は、体内で作れません。多価不飽和脂肪酸は、食事からとる必要があるため、必須脂肪酸とも言われています。
動脈硬化と脂肪酸の種類
動脈硬化とは、酸素や栄養を全身に運ぶ役割を持つ動脈が硬くなって弾力性が失われた状態をいいます。
動脈血管壁に、血液中のLDL(悪玉)コレステロールなどが入り込み、ドロドロの粥状物質(プラーク)ができると、血液の流れを悪くしたり、詰まったりしやすくなります。
コレステロールは、ホルモンやビタミンの原料になるなど身体の機能の維持には欠かせませんが、どちらかが過剰になるなどバランスが崩れると脂質異常を招き、動脈硬化の原因となります。
また、食事からとるコレステロールの量は2~3割程度で、残りの7~8割は体内で必要量を調整しながら作られます。
動物性の飽和脂肪酸は、肝臓でのコレステロールの合成を促進し、植物や魚油に含まれる多価不飽和脂肪酸は、逆にコレステロールの合成を抑制する働きがあります。
まとめ
一言で中性脂肪といっても、結合する脂肪酸の種類によって性質などが変わります。食事からとる脂肪酸の種類や量は、脂質異常を引き起こす原因となり得ます。
次回は脂質異常の一つ、中性脂肪について詳しくみていきたいと思います。
参考文献
・オレオサイエンス第10巻 第10号(2010):「飽和・不飽和脂肪酸と肥満・動脈硬化性疾患」、https://www.jstage.jst.go.jp/article/oleoscience/10/10/10_365/_pdf/-char/ja
・厚生労働省:「e-ヘルスネット」コレステロール
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/food/ye-012.html (閲覧日:2024年8月)
・厚生労働省:「e-ヘルスネット」動脈硬化
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/metabolic/ym-082.html (閲覧日:2024年8月)
・香川明夫:「八訂 食品成分表2022」、女子栄養大学出版部、(2022年)
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・動脈硬化性疾患予防ガイドライン改訂のポイント後編