「脂質異常症とは?」について全5回に渡り連載しています。4回目となる今回はコレステロールについてです。
悪玉や善玉で分けられることも多いコレステロールですが、果たして本当に悪玉なのでしょうか?詳しくご説明します。
コレステロールの役割~HDLとLDL~
コレステロールは、1回目のコラムでご紹介した通り脂質の一つで、細胞膜、ホルモン、胆汁酸を作る材料として使われます。
私たちがよく耳にするコレステロールには、HDLコレステロール(以下HDL-Cと表記)とLDLコレステロール(以下LDL-Cと表記)があります。これらは一般的に善玉(HDL)コレステロール、悪玉(LDL)コレステロールといわれることも多いですが、それぞれに役割があります。
<主な役割>
HDL-C:血液中の余分なコレステロールを回収する
LDL-C:全身にコレステロールを運ぶ
コレステロールが善玉と悪玉で分けられるのはなぜ?
上述の通り、LDL-Cは肝臓から全身にコレステロールを運ぶ役割を持つのに対し、HDL-Cは余分なコレステロールを回収し肝臓まで運び戻す役割を持ちます。
血液中のLDL-Cが過剰になると、HDL-Cの回収能が追いつかなくなり、血液中のコレステロールが余ることで血液がドロドロになり、動脈硬化を促進します。
また、HDL-Cが少なすぎても、余分なコレステロールの回収が十分行われず、血管壁に蓄積され、動脈硬化を進展させると考えられています。
LDL-Cは過剰になると血管壁に蓄積して動脈硬化を進めるのに対し、HDL-Cは動脈硬化を予防する働きがあるため、LDL-Cは「悪玉」、HDL-Cは「善玉」と呼ばれています。
HDL-Cは高いほどいいの?HDL-Cの「質」も重要
HDL-Cの基準値は、40 mg/dL以上となっています。
基準値未満では、上述の通り過剰なコレステロールの回収が追いつかず、動脈硬化を進行させてしまいます。
では「高いほどいいのか」というと、そういう訳でもないようです。HDL-Cが高すぎても心筋梗塞などの冠動脈疾患の発症率が上がることが分かっています。はっきりと基準値は定められていませんが、100 mg/dL以上のような高値を示す場合は、回収能力が十分ではないといったHDL-Cの機能異常が考えられるようです。
最近では、HDL-Cは「量」も大切ですが「質 」も重要だといわれています。
non-HDLコレステロール(non-HDL-C)とは?
2018年度から特定保健指導の項目にも「non-HDL-C 」が加わりました。これは、総コレステロール(TC)からHDL-Cを差し引いたものです。LDL-Cだけでなく、動脈硬化の原因となるレムナントリポタンパクなども含まれており、170 mg/dL以上を高non-HDL-C血症 、150~169 mg/dLを境界域non-HDL-C血症と定義されています。
「non-HDL-C」は、中性脂肪(TG)が高値の場合(150 mg/dL以上)、LDL-Cの管理目標の達成を目指した後、第2の管理指標として用いられます。
また、中性脂肪(TG)が正常の場合はLDL-Cの評価のみで十分であり、また中性脂肪(TG)が600 mg/dL以上の場合は正確にnon-HDL-Cでは評価できなくなります 。
まとめ
コレステロールにはそれぞれ役割があり、量と質が大切です。
バランスがとれた状態では「悪玉」と「善玉」に分かれることなく、それぞれが身体に必要な役割を果たします。しかし、過剰になったり少なくなりすぎたりすると身体によくない働きをします。
次回は、脂質異常症の食事療法についてご紹介します。
参考文献
・一般社団法人 日本動脈硬化学会:「動脈硬化性疾患予防のための脂質異常症診療ガイド2023年版」、(2023年)
・厚生労働省 e-ヘルスネット コレステロール
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/food/ye-012.html (閲覧日:2024年10月)
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