管理栄養士が普段の特定保健指導で活用できるような症例別の情報をお届けするシリーズです。今回は「脂質異常症」についてです。
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脂質異常症とは
血液中の脂質(血中脂質)は、通常一定量に保たれています。脂質異常症は、血中脂質の中で代表的な、LDL(悪玉)コレステロールや中性脂肪が増え過ぎたり、HDL(善玉)コレステロールが減り過ぎたりした状態です。これらのバランスが崩れる原因は、主に次の4つです。
・食生活の乱れ、運動不足、喫煙などの乱れた生活習慣
・遺伝
・閉経
・そのほか、ホルモンの異常や薬の副作用など
脂質異常症と診断されても、すぐに何らかの症状が表れるということは、ほとんどありません。そのため、危機感を持ちにくく放置してしまう人も少なくありません。
脂質異常症が長引くとどうなるか
血中脂質のバランスが崩れる状態が長く続くと、血管が硬くもろくなる「動脈硬化」が進行していき、血管が詰まったり血管の壁が破れたりすることで起こる心筋梗塞や、脳卒中のリスクを高めてしまいます。
脂質異常症は自覚症状がないため、突然、死につながる病気を発症してしまう恐ろしい病気です。なお、高血圧や糖尿病を合併すると動脈硬化の進行を加速させ、さらに心筋梗塞や脳卒中も引き起こしやすくなります。
脂質異常症の食事・栄養摂取等で注意するポイント
脂質異常症対策の食事や栄養摂取の際のポイントは次の通りです。
①適正カロリーを守る
②1食で主食(ご飯、パン、麺類など)・主菜(肉や魚、卵、大豆製品を使うメインのおかず)・副菜(野菜や海藻、きのこを使うサブのおかず)をそろえる
③食物繊維を十分に摂る
④脂質の質と量に気を付ける
⑤糖質の摂り過ぎを控える
⑥適量飲酒を心がける
⑦食事と食事の間を空け過ぎない
脂質異常症の食事で「特に」注意したいポイント
さらに、脂質異常症の食事の中でも特に注意したい2つのポイントを詳しく解説します。
○脂質の量と質に気を付けるためのポイント
脂質は高カロリーで過剰摂取は肥満を引き起こすことから、摂り過ぎに注意する必要があります。厳密に量を計算することは難しいですが、食事全体量が過剰にならないよう腹八分を心がけ、油が目に見える「揚げ物」「炒め物」「ドレッシング」「マヨネーズ」などの摂取は続かないようにしましょう。
また、肉の脂身やバター、生クリーム、マヨネーズなどの動物性食品の脂は、血中コレステロールを上げる作用のある「飽和脂肪酸」が多く含まれます。肉は赤身を選ぶ、脂身をとり除く、乳製品は低脂肪乳にするなどの工夫をしましょう。
○糖質の摂り過ぎに気を付けるためのポイント
脂質異常症というと糖質は関係ないと思われがちです。しかし、過度な糖質は体内で脂肪に変わるため、糖質の過剰摂取にも注意が必要です。特に清涼飲料水や甘いお菓子は、糖質が多い上に「果糖」や「ブドウ糖」などの分子が小さい糖質が含まれており、体内に吸収されやすいことから、血中脂質のバランスの乱れにつながりやすいため、できるだけ控えるようにしましょう。
その他
遺伝や女性ホルモンの変化など、生活習慣以外の原因で異常が起こっている場合にも、動脈硬化の進行に影響があることがあります。必要な場合には治療を行うことはもちろん、生活習慣をより一層意識することが必要です。
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