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前回のコラムでは、ヒアリングを通じて対象者の生活背景や課題を明らかにするプロセスをご紹介しました。今回は、それらの情報をもとに、どのように「行動計画」を立てていくかを前編・後編に分けて解説します。第4期特定保健指導のキーワードは「-2kg・-2cm」。これを実現し、継続できる目標へと落とし込むことが、保健指導の成功に繋がります。前編は、行動計画を立てるポイントから目標体重の立て方、食習慣についてです。

行動計画を立てる時のポイント

第4期の特定保健指導では、「腹囲2cm・体重2kgの減少」が1つの目安とされています。
特定健康診査・特定保健指導の円滑な実施に向けた手引き(第4.2版)や標準的な健診・保健指導プログラム(令和6年度版)では、「2か月間の行動変容により、腹囲1.0cm以上・体重1.0kg以上の減少が期待される目標を設定する」ことが求められています(※1kgあたり7,000kcal換算)。

プログラム期間に応じたエネルギー削減量を算出し、それを達成できる目標を立てることが大切です。ただし、すでに2か月以上継続している行動は、新たな行動目標には含められません。その一方で、継続を後押しする支援を行うことには意義があります。

何よりも大切なのは、「対象者が納得し、2か月以上継続できること」。以下の2つの視点から目標を立ててみましょう。

① 自己決定を尊重し、行動を促す
対象者が「自分で決めた」と感じられることが、行動変容を継続する上での原動力になります。支援者は提案を控えすぎず、押しつけすぎず、対象者の気づきと納得を引き出す関わりを意識しましょう。完璧を目指すのではなく、「少し変えてみる」ことが行動変容の第一歩です。たとえば、「間食を完全になくす」ではなく、「小袋にする」「週に◯回までにする」など、生活に即した小さな工夫から始めることで、自主的な取り組みを後押しできます。

②「SMARTの原則」で目標を具体化する
「SMARTの原則」とは、目標設定を効果的に行うためのフレームワークです。これを意識すると、具体的な目標が立てやすくなります。

・Specific(具体的)

・Measurable(測定可能)

・Achievable(達成可能)

・Realistic(現実的)

・Time-bound(期限付き)

例えば「体重を測定する」ではなく、「毎日、朝食前に体重を測定する」といったように、より具体的な行動にしましょう。

目標体重の立て方

生活習慣病の予防において大切なのは、短期間で大きく減らすよりも、無理のない範囲で健康リスクを下げることです。適正体重に対して3〜5%の減量は、安全で達成しやすい範囲とされており、第4期で示されている「体重-2kg」の減量とも一致します。

また、数値だけでなく、「どのような行動が変わったか」を記録・共有することも大切です。支援のたびに振り返り、対象者の変化を一緒に確認していきましょう。

食習慣

食習慣の改善は、多くの対象者にとって身近なテーマです。摂取エネルギー量を適切に減らし、2か月間続けられそうな目標を立てましょう。

【目標の具体例(標準的な健診・保健指導プログラムp271「表6」より引用)】

・「主食の量を1食ごはん150g以内にする」

・「間食は週2回まで、小袋サイズにする」

・「夜8時以降は食事をとらない」

・「野菜を1日350g以上食べる(1食あたり小鉢2皿程度)」

・「丼ものは週1回までにする」

飲酒量の削減に関する取り組みは、「食習慣」ではなく「その他の生活習慣」に分類されます。 また、「減塩」だけでは原則ポイント対象外とされるため、エネルギー削減を伴う目標設定が望まれます。

まとめ

第4期では、「腹囲2cm・体重2kgの減少」がキーワードとして掲げられていますが、その本質は「継続的な行動変容」です。対象者が自ら納得し、実行できる目標を初回面接時に設定し、それを2か月以上継続できるように支援していくことが求められます。

また、食事・運動・喫煙・休養・その他といった分類ごとに目標を設定する際には、評価基準や「飲酒削減に関する取り組みはその他に分類される」といった分類上の注意点を押さえておきましょう。

次回のコラムでは、「運動・喫煙・休養・その他」についてご紹介します。

参考文献

・標準的な健診・保健指導プログラム(令和6年度版)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000194155_00004.html、(閲覧日:2025年6月10日)

・PHC株式会社「保健指導で行動変容を促すための3つのポイント」
https://www.phchd.com/jp/medicom/park/idea/healthmanage-point-02(閲覧日:2025年6月10日)

・行動変容の評価に関するQ&A(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001320648.pdf(閲覧日:2025年6月10日)

・特定健康診査・特定保健指導の円滑な実施に向けた手引き(第4.2版)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/handbook_31132.html(閲覧日:2025年6月10日)

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みんなのコメント( 1

    • Eatreat 編集部
    • Eatreat 編集部
      3時間前

      管理栄養士で特定保健指導に従事されている千葉七海さんに、行動計画の立て方を解説していただきました。前編は行動計画を立てるときのポイントや目標体重の立て方、食習慣についてです。

      拍手 0

WRITER

【前編】特定保健指導で知っておきたい行動計画の立て方

千葉 七海

幼少期から食べることが大好きで「食に関わる仕事がしたい」とぼんやり考えていました。将来的に地元の八丈島で働きたいという思いが強く、「栄養士ならば病院や福祉施設、学校でも働けるのでは?」と考えたことがきっかけで栄養士となり、実務経験と国家試験をへて管理栄養士となりました。 これまで、たくさんの出会いが私を成長させてくれました。管理栄養士としてフリーランスの今、本当にたくさんのお仕事に関わるチャンスが増えたと実感しています。良い意味で型にはまらず、どんなことにも挑戦していきたいと思います!

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