管理栄養士が普段の特定保健指導で活用できるような症例別の情報をお届けするシリーズです。今回は「糖尿病」についてです。
糖尿病とは?
糖尿病は、血液中のブドウ糖(=血糖)が異常に高い状態(=高血糖)が続く病気です。
高血糖は、膵臓から分泌されるインスリンの働きが低下して起こります。インスリンの働きが低下する原因は大きく分けて2つあります。ひとつは、膵臓の機能が低下して分泌が減ってしまうこと。もうひとつは、筋肉や細胞にあるインスリンの受容体の働きが鈍り、せっかくインスリンを出しても、適切に働かなくなってしまうことです。
糖尿病が長引くとどうなるか
その状態が長く続くと血管が傷つき、全身に様々な合併症を引き起こします。中でも、太い血管に障害を起こす大血管障害は、脳卒中や心筋梗塞など突然死につながる合併症です。また、細い血管が集中する眼や神経、腎臓には障害が起きやすく、重症化すると失明や細胞の壊死、腎不全などになります。これらは、QOL(クオリティ・オブ・ライフ)を大きく低下させる合併症です。
血糖を良好にコントロールし、合併症を起こさないことが、糖尿病治療の大きな目的です。
糖尿病の食事・栄養摂取等で注意するポイント
糖尿病における食事・栄養摂取等で注意するポイントは以下の6つです。
①適正カロリーを守る
②主食(ご飯、パン、麺類など)・主菜(肉や魚、卵、大豆製品を使うメインのおかず)・副菜(野菜や海藻、きのこを使うサブのおかず)をそろえる
③1日3食、規則正しく食べる
④ゆっくりよく噛んで食べる
⑤間食は適正範囲にとどめる
⑥適正飲酒を心がける
特に注意したいポイントについては、次で説明をします。
糖尿病の食事で「特に」注意したいポイント
糖尿病の食事の中でも、特に注意したい2つのポイントを詳しく解説します。
●適正カロリーを守るためのポイント
肥満はインスリン受容体の働きを鈍らせ、血糖コントロールを悪化します。主治医から指示がある場合には、それを守るようにしましょう。年齢、性別、体格、活動量などによって個人差があるため、「腹八分目」を心がけて、体重の変化と一緒に見ていくことが重要です。
●主食・主菜・副菜をそろえるためのポイント
定食スタイルが理想ですが、「卵かけご飯に海苔をプラスする」「ラーメンは野菜たっぷりなメニューを選ぶ」など、難しく考えずに毎食で3つの要素をそろえることを心がけましょう。
その上で、食べる順番を副菜→主菜→主食にすると効果的です。海藻類、野菜、こんにゃく等に含まれる水溶性食物繊維を糖質よりも先に食べると食後の血糖上昇が抑えられます。また最近では、魚や肉をご飯の前に食べることで血糖上昇が抑えられるという研究報告もあります。
最後に…
糖尿病治療は良好な血糖コントロールを長く維持していくことが目的です。食事療法は特別なものや極端なものだと長続きしません。患者さん自身が主体的に「毎日の生活でできること」を見つけ実践し、試行錯誤していく必要があります。そのためには、適切に受診し、身体状態を確認することも重要です。血糖値や体重、合併症の進行などを把握しながら、「ポイント」をもとに食生活を見直し軌道修正を繰り返すことが大切です。
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