血中の脂質であるLDLコレステロールと中性脂肪が、基準より高い値であること、または、HDLコレステロールが低い値の状態を「脂質異常症」といいます。私たちは体調に特に変化がない時に、コレステロールや中性脂肪が多いとお医者さんに指摘されても、身体のどこも痛くもかゆくもないので放置してしまいがちですが、この脂質異常症の状態が続くと動脈硬化を引き起こし、『ある日突然…』という事にもなりかねません。
今回は、そんなことにならないための食事のポイントについて考えていきたいと思います。
コレステロールについて
はじめに、コレステロールについて解説していきましょう。
LDLという粒子に包まれて血中に流れているLDLコレステロール(以下、LDL)は、血管に溜まるため、悪玉コレステロールと呼ばれています。LDLが多いということは、血中コレステロールが高いということになります。一方、HDLに包まれているHDLコレステロール(以下、HDL)は、血管内壁にへばりついて動脈硬化を引き起こすコレステロールを引き抜いてくれるので、善玉コレステロールと呼ばれています。
コレステロールと聞くと、身体に悪いものというイメージがあるかもしれません。
ところが、コレステロールは私たちの身体を構成する物質の原料になったり、ホルモンを合成したり、ヒトが生きるために必要不可欠な存在です。しかし、なんらかの原因でLDLが増えてしまうと、血中に余って、血管の壁に溜まってしまいます。そうなると、生命に関わる深刻な事態を起こす原因になることもあるため、悪玉コレステロールと呼ばれているのです。ちなみに、コレステロールは脂肪などと違って調理の過程で減らすことができません。煮ても焼いても含有量は変わらないものです。
ここからは、悪玉コレステロールを本物の『悪』にしないよう、予防も踏まえながら食事のポイントについてお話していきます。食事で大切なのは、次の3本柱です。
第1の柱:適正なエネルギー量
第1の柱は、各個人にあった適正なエネルギー量を摂ることです。適正エネルギー摂取量の計算式は以下の通りです。
適正エネルギー摂取量=標準体重×25~30(kcal)
*標準体重=[身長(m)×身長(m)×22]
第2の柱:3大栄養素の配分
第2の柱は、適正エネルギー摂取量における炭水化物(糖質)、脂質、たんぱく質の3大栄養素の配分です。
・炭水化物 :50~60%を目安とします。
・たんぱく質:15~20% 肉よりも魚や大豆たんぱく質を多めにしましょう。
・脂質 :20~25% 肉の脂の量は少なくし、植物性油・魚油を多めにしていきます。
第3の柱:食行動
そして第3の柱は、食行動です。ここでは食行動の10のポイントをご紹介させていただきます。
①1日3食の配分をほぼ均等にし、規則的に食べる。
②腹八分目を守る。
③『早食い・ながら食い・まとめ食い』を避ける。
④食物繊維を先に食べる。
⑤よく噛んで食べる。
⑥周りに食物を置かず、食環境のけじめをつける。
⑦好きなものでも一人前までとして、適正量を守る。
⑧就寝前の2時間は、胃腸に負担がかかるものを食べない。
⑨食器を小ぶりにする。
⑩外食では丼物より定食を選ぶ。
以上のポイントを踏まえ、食事に気を付けていても、生まれつきコレステロール値が高かったり、薬を飲んでも数値が下がりにくい…という方もいらっしゃいます。次回はそういった方に多い「家族性高コレステロール血症」、そして、中性脂肪について解説させていただきます。
参考文献
日本動脈硬化学会(www.j-athero.org/)
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