このコラムでは、脂質異常症について5回に分けてご紹介します。
1回目は、炭水化物、たんぱく質と並ぶ3大栄養素の一つでもある「脂質」の基本について解説します。
脂質の種類は4つ 生きていくために欠かせない成分
脂質にはさまざまな定義があり、厳密に定められるものがありません。
よく知られているのは、1925年にBloorが提案した「水に溶けず、エーテルやアルコールなどの有機溶媒に溶けて、生体に利用できる有機物質」というものです。
主な脂質には「脂肪酸」「トリグリセライド(中性脂肪)」「リン脂質」「コレステロール」の4種類あり、それぞれ役割が異なります。
脂質を運ぶリポタンパクの種類と役割
血液中のコレステロールや中性脂肪は、そのままでは血液中に溶け込めないため、水になじみやすい性質をもつ「リン脂質」や「アポタンパク」に包まれた形で血液中に存在します。これらが結合した粒子を「リポタンパク」と言います。
「リポタンパク」は、比重や粒子の大きさによってそれぞれ役割が異なります。比重が軽くなるほど中性脂肪(TG)を占める割合が多くなります。
食事からとった脂質は、小腸で吸収され、カイロミクロンとして血液中に溶け込み、身体の各組織に運ばれてエネルギー源になったり貯蔵されたりします。余った脂質は肝臓に取り込まれます。肝臓で、中性脂肪とコレステロールからVLDLが作られ、血液中に分泌されます。
食後に中性脂肪が高くなるのはなぜ?
脂質の多い食事をとると外因性の中性脂肪が多くなります。中性脂肪を運ぶためにカイロミクロン(CM)やレムナント、VLDLが増えます。中性脂肪が分解して作られる遊離脂肪酸は、空腹時や運動中などはエネルギー源として利用されますが、食後などエネルギーとして使われず余ると再び中性脂肪に再合成されて脂肪組織に貯蔵されます。この過程で血液中の中性脂肪が高くなります。
まとめ
食事からとった脂質が、身体の中でどのように代謝されるのか何となくイメージがつきましたか?次回は、脂肪酸の種類から動脈硬化についてご紹介します。
参考文献
・一條秀憲:「生化学の基本」、株式会社マイナビ出版、(2023年)
・「からだがみえる 人体の構造と機能」、株式会社メディックメディア出版、(2023年)
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