10月20日は「骨粗鬆症デー」です。高齢者と骨粗鬆症について、本コラムでは前編・後編の2本シリーズでお伝えしていきます。前編では、骨粗鬆症とは、患者数や年代別有病率、生活習慣病との関係などをご紹介します。
骨粗鬆症とは? 患者数はどのくらい?
わが国では、急速に高齢化が進んでいます。高齢者が自立した生活を行い、要介護や要支援とならないためには、骨粗鬆症や変形性膝関節症など、骨や筋肉などが衰えて発症するロコモティブシンドローム(運動器症候群)の予防に努めることが非常に重要です。
骨粗鬆症は「骨強度の低下を特徴とし、骨折のリスクが増大しやすくなる骨格疾患」と定義されています。骨粗鬆症の患者数は、腰椎で診断した骨粗鬆症の患者数で約640万人(男性80万人、女性560万人)、大腿骨頚部の骨粗鬆症の患者数で約1070万人(男性260万人、女性810万人)と推計されます。したがって、腰椎または大腿骨頚部のいずれかで「骨粗鬆症あり」とすると、その患者数は1280万人となります。
60代で3人に1人! 女性の方が圧倒的に多い病気
男性よりも女性の方が有病率は圧倒的に高く、それは女性の場合、閉経(50歳前後)に伴い骨形成を助ける女性ホルモンの「エストロゲン」が減少するため、骨粗鬆症が進行しやすくなるからです。有病率は50代から徐々に上昇し、60代で3人に1人、80代では2人に1人が罹患しているといわれています。これらから高齢女性の有病率が非常に高いことがわかります。
高齢女性は特に注意! 生命予後にも影響が
骨粗鬆症による骨折が原因で要介護状態や寝たきりになる女性の割合は、認知症、衰弱に続き第3位です(※1。要介護状態や寝たきりになると著しく骨折後のQOLを低下させ、本人だけでなく家族にも負担をかける可能性があります。また、腰椎と大腿骨頚部骨折はその後の死亡率を上昇させることが明らかになっています。そのため、50歳以上の中高年の女性に対するアプローチは特に重要です。
年代別で骨粗鬆症へのアプローチは異なり、若年者では骨粗鬆症の予防に重点をおき、高齢者を対象とした場合は骨粗鬆症の治療、骨折の予防が中心となります。若年のうちから骨粗鬆症の予防を行っていくことが重要です。
生活習慣病とも密接な関連がある病気
また近年、骨粗鬆症と生活習慣病には密接な関連性があることがわかり、特に2型糖尿病、慢性腎臓病(CKD)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)では、骨折リスクが高いことが明らかになっています。そのため、高齢者では生活習慣病自体の管理が重要であり、かつ骨粗鬆症の併存にも配慮した生活指導、食事指導が必要です。私は外来の糖尿病療養指導で運動指導を行うことが多いのですが、「腰や足が痛くて動けない」というご高齢の患者様が多くいらっしゃいます。運動療法が十分に行えないと生活習慣病の管理が不十分となり、負のスパイラルに陥りやすいと実感しています。このような観点からも、骨粗鬆症の予防は非常に重要です。
後編では骨粗鬆症予防のための食生活の提案、在宅高齢者へのアプローチのポイントなどお伝えしていきます。
参考文献
1.骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン作成委員会「骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2015年版」ライフサイエンス出版 2015年
2.日本骨粗鬆症学会 生活習慣病における骨折リスク評価委員会 生活習慣病骨折リスク評価委員会 「生活習慣病骨折リスクに関する診療ガイド2019年版」日本骨粗鬆症学会 2019年
3.厚生労働省 2019年国民生活基礎調査の概況 2020
関連コラム
・②骨粗しょう症 | 骨強度の低下を特徴とし骨折のリスクを増大しやすくなる疾患への対策
・④ロコモティブシンドローム | 運動器の障害による移動機能の低下状態への対策
・地域の方へのセミナーを通じて