高齢者の食事・介護食[在宅高齢者へのアプローチ]シリーズの第2回です。
骨粗しょう症とは?
骨粗しょう症とは、骨強度の低下を特徴とし、骨折のリスクを増大しやすくなる疾患です。
大規模疫学調査の結果によると、40歳以上の骨粗しょう症の有病率は、腰椎で男性3.4%、女性19.2%、大腿骨頸部で男性12.4%、女性26.5%という値が示されています。
これだけ多くの方が骨粗しょう症に罹患していると考えると、骨粗しょう症により骨折する高齢者が後を絶たない現状にも、うなずけるのではないでしょうか。
骨粗しょう症になるまで
原発性骨粗しょう症の成因は、先天性な要因や閉経に伴うホルモンなど内分泌代謝の異常、栄養や生活環境などが影響しています。二次性骨粗しょう症は特定疾患や薬物の副作用によって発症します。
また、骨粗しょう症は骨密度の低下や酸化ストレス、ビタミンD・Kが不足することにより骨が弱くなっていきます。
近年では、骨はただの支持物として働くだけでなく、ホルモンを分泌し、他の臓器の代謝に影響を与えることも分かってきました。骨を構成するタンパクがホルモンとして血中に分泌されることでインスリンの分泌が促される働きがあるため、骨代謝に異常が起こることで、糖尿病患者さんの血糖コントロールに悪影響を与えることが明らかになっています。
骨粗しょう症予防に必要な栄養素
①カルシウム
体内に存在するカルシウムの内99%は、骨に存在します。しかしながら、カルシウム単独の摂取は効果的とは言えません。カルシウムとビタミンDを組み合わせて摂取することで骨密度が上昇、骨折予防効果があります。
また、摂ればとるほど骨が強くなるというものではありません。サプリメントなどで高用量のカルシウムを摂取することにより、急激に血清カルシウム濃度が上昇する可能性があります。摂取する際は、1回に500mg以上を摂取しないよう注意しましょう。
②ビタミンD
脂溶性ビタミンの1つですが、高齢者では特に不足状態にあると言われています。原因としては、脂質の吸収が低下していることや外出機会が減少することから日光に当たる時間が短く、皮膚でのプロビタミンDの生成が減少することによります。
ビタミンDは、魚類(特に鮭)やきのこ類に多く含まれていますので、毎日の食事へ積極的に取り入れるとよいでしょう。
③ビタミンK
緑色の葉野菜や納豆に多く含まれます。高齢者では、歯の欠損や義歯の不適合により、葉野菜を避ける方が少なくありません。食事の内容を聞き取りして、摂取量が少ないようであれば食べやすい調理方法と一緒に摂取を促されるとよいでしょう。
④その他
マグネシウム、ビタミンB6、ビタミンB12、葉酸なども骨形成に必要な栄養素です。通常の食事で摂取が難しい場合は、サプリメントの使用を検討してもいいでしょう。
⑤注意すべき栄養素
リンを多く含む加工品や一部清涼飲料水、食塩、カフェインを多く含む飲料、アルコールなどの過剰摂取は控えましょう。
今回は、骨粗しょう症の治療に対する、栄養からのアプローチを中心にお話しましたが、運動によって骨密度を高めたり、筋力アップをしたりすることで転倒予防などの効果があります。対象者の年齢や活動性、転倒リスクなどを考慮して様々な角度からチームによるアプローチがされるとよいでしょう。
参考文献
「骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2015年版」日本骨粗鬆症学会ホームページ
http://www.josteo.com/ja/guideline/doc/15_1.pdf
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