高齢者の食事・介護食[在宅高齢者へのアプローチ]シリーズの第1回です。
小児から高齢者まで、男女問わず悩みの種となる便秘。
今回は高齢者の便秘に焦点を当ててお話します。
高齢者では腸にどのような変化が?
高齢者は加齢に伴い、消化・吸収能力が低下します。胃酸の分泌が十分にされなくなることで胃もたれがしやすくなったり、鉄の吸収が悪くなったりします。小腸による栄養素の吸収能は、加齢による影響はほとんどありませんが、大腸では以下のような大きな変化があります。
1. 大腸の弾性が低下する
2. 直腸の感覚が鈍くなる
3. 排便時の腸管収縮能が低下する
4. 便の排出速度が遅くなる
5. 水分の吸収が過度に起こる
また、高齢者では基礎疾患としてうつや甲状腺機能低下が見られたり、近年話題に挙がることが多くなっているポリファーマシー(多剤服用)による副作用として便秘になったりするケースも多く見られます。
口腔環境にも注意してみましょう。歯はあるけれど、ぐらぐらしていて使えない、入れ歯はあるけれど体重が減少したことで合わなくなっていて、実用的でないなどさまざまな問題を抱えている高齢者の方は多く存在します。そのような高齢者の方々は、自然と柔らかいものを好んで召し上がるようになるため、食物繊維の摂取量は減ってきます。便秘による腹満感から食事を制限する方も少なくないため、低栄養のリスクも増加するというようにまさに悪循環となります。
どのような対応をすればいい?
入院患者さんでは、下剤などの薬剤で対応するというケースもありますが、食事で対処できるケースも少なくありません。
便秘で困っている方がいらしたら以下の項目について、アセスメントしてみましょう。
1. 口腔環境
2. 食事の形態
3. 食事の摂取量
4. 水分の摂取量
5. 内服薬の副作用
6. 活動量、運動量
問題があるものから順に対応をしてみてください。
最近は、オリゴ糖や粉末状水溶性食物繊維など、便秘に有効な栄養補助食品も簡便に手に入ります。効果に個人差はありますが、一度お試してみるのもいいかもしれません。
参考文献:
・『日本人の食事摂取基準 2015年版』 第一出版
・『新臨床栄養学』 医学書院
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・在宅介護における「介護食」の実際①
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