高齢者が低栄養にならないために
人は年齢を重ねてくると、若いころに比べ、食べものの好みや食べる量も変わってきます。それだけではありません。買い物や料理をすることがおっくうになることもあります。また、胃腸の消化・吸収力がおとろえると、十分な栄養がとれなくなることがあります。これが低栄養といわれる状態です。
低栄養状態は半年間ほどの体重減少率、BMI、血液検査の血清アルブミン値3.8g/dl以下かどうかなどの基準で判断されています。
人にとって「食べる」ことは「生きる」ために必要なこと。エネルギーやたんぱく質をしっかりとることで、筋肉の質や量が保たれ、内臓機能も保たれます。免疫機能の高い元気な体が保たれることで、自立した生活が送れ、生き生きと楽しい暮らしにつながります。
低栄養を防ぐために気をつけること
私が高齢者の方に関わる仕事でお話しているのは次のことです。
<低栄養状態予防のための食生活のポイント>
・1日3食、主食(ごはん・パン・麺類から好きなもの)を欠かさずに食べること
・おかず(主菜)で肉・魚・卵・大豆製品などのたんぱく質をしっかり食べること。
たんぱく質のおかずだけで片手のひらにのるくらい位が目安です。
・乳製品、プリン、アイスクリーム、まんじゅうなどエネルギーが高いものや
たんぱく質が多く、栄養価が高いものを食べること。
・エネルギーが不足しがちな高齢者は、おやつも好きなものを食べていいこと。
おやつに好きなものを食べることで、食べる楽しみを感じること。
・脱水症状にならないように注意も大切。水分の多い料理を食べたり、
決まった時間にお茶を飲んだりするむこと。
低栄養の原因は食生活以外にも
低栄養状態になってしまう原因は、食生活だけではありません。
歯が弱ってしまい、噛む力や飲み込む力の低下、病気やけが、胃腸の調子や機能の低下など、身体的なことからくる食欲の低下も原因になります。
また、身近な人を亡くしてしまうと、精神的な理由から、食欲が低下してしまうこともあります。そして、経済的な理由から、十分な食事ができていない方もいらっしゃいます。
「食べる」楽しみには、食べたいものを考えること、買い物をすること、料理を作ること、料理を味わうこと、だれかと一緒に食べることなど、いろいろな楽しみの要素があります。それを楽しみと思える環境が、何より大切なことではないかと思います。そのためには、ストレスをためず、笑って過ごせることが大切なのではないでしょうか。
高齢者が低栄養状態になる原因は環境であったり、経済的な理由であったり、さまざまなのだと管理栄養士の仕事を通して感じています。
高齢になってから低栄養状態になる方もいますが、比較的若いころから食が細かったり、偏食であったりしたのが原因の方もいらっしゃいます。
朝起きて日光をあび、体を動かす。好奇心を持ち続けることが大切なことです。身体を動かせば、食欲もわき、食事がおいしく食べられます。おいしく食べられると元気がでるので、毎日を楽しく過ごそうという気力にもつながります。
これはどの世代にも共通していえることです。わたしは管理栄養士として、高齢者との関わりが多くありますが、「おいしく食べる」ことで元気になれるサポートをしていきたいと思っています。
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