高齢者の食事・介護食[在宅高齢者へのアプローチ]シリーズの第3回です。
フレイルとは?
フレイルとは、老化に伴う様々な機能低下により、健康障害を起こしやすい状態を示します。健康障害の中には、身体機能障害や要介護状態、疾病の発症、入院や生命予後などが含まれます。また、フレイルの原因は老化のみならず、多数の臓器の機能低下によることも少なくありません。
日本には「老衰」という言葉がありますが、“年をとって身体が衰えていること”を意味していることから、フレイルと同じ概念と言えます。フレイルは、要介護状態に至る前段階を指しているため、介護予防との関連性が非常に高い状態とも言えます。
フレイルの診断定義を以下に示します。
フレイルの診断定義
①体重減少
②主観的疲労感
③日常生活活動量の減少
④身体能力(歩行速度)の減弱
⑤筋力(握力)の低下
フレイルとサルコペニアとの違いは?
サルコペニアもフレイル同様、近年耳にすることが多くなったワードだと思いますが、サルコペニアとは、「sarco(骨格筋・筋肉)+penia(減少)」を意味する造語で、“加齢に伴う筋力の減少、または老化に伴う筋肉量の減少”を意味しています。
欧州やアジアなどのワーキンググループによって、サルコペニアの定義が提唱されており、日本でも2017年12月に、サルコペニア診療ガイドライン2017が公開されました。いずれにおいても、骨格筋の減少をベースに、筋力や運動機能低下が存在することでサルコペニアと診断される定義になっています。詳細についてはガイドラインをご確認ください。
フレイルの診断項目には、身体機能の減弱や筋力低下が組み込まれていることから、フレイルの原因の一つにサルコペニアが存在するという位置づけになります。図にすると以下のような関係になります。
フレイルと栄養
たんぱく質、ビタミンDが十分に摂取出来ている高齢者の方々は、フレイルのリスクが低かったという報告が挙がっています。しかしながら、買い物へ行く頻度も少なく、独居の高齢者の食事は、食品数や食事回数も少なく、食事バランスが崩れている可能性があります。身体機能の低下や同居家族などの環境変化などによっても、自宅の食事内容は大きく変化してきます。食事内容の充実を図り、全体的な栄養の底上げが必要なケースにおいては、さまざまな環境調整をすることが必要かもしれません。
栄養指導では、理想とする食事についてお話する前に、患者さん自身の環境について、今後どうしていきたいかなどのお話をいただく必要があります。他職種と協力し、環境調整をした結果、栄養状態が整っていくこともあるのではないでしょうか。
参考文献:『日本人の食事摂取基準2015年版』 第一出版
関連コラム
・①高齢者の便秘について~原因・対応・食事~
・②骨粗しょう症 | 骨強度の低下を特徴とし骨折のリスクを増大しやすくなる疾患への対策
・『経腸栄養、口から食べる大切さ』
・『介護食にも! 手間を削減、コンビニ惣菜の活用法』
・『健康診断の活用方法』