褥瘡(じょくそう)とは?
褥瘡は、皮膚に一定の圧がかかる事により壊死が生じて発生します。発生にはその前後の栄養状態が大きく関係しています。また発生後も瘡の状態に応じた対応ができれば、早期治癒する可能性が高まります。褥瘡といっても様々な状態がありますが、ここでは介護施設における軽度の褥瘡栄養ケアについて解説します。
褥瘡発生の原因となる栄養素
褥瘡発生に関係する主な栄養要因を挙げると、以下の通りになります。
1. 総エネルギー量の不足
2. たんぱく質の不足
3. 脂質の不足
4. ビタミン(B群、A、C)、ミネラル(亜鉛、鉄、銅)の不足
5. 脱水
褥瘡の栄養補助食品では、亜鉛や鉄、たんぱく質などを強化したものが多いですが、私の経験上それだけでは改善しない症例も多くあります。これらの補助食品を効果的に使うには、まずは3大栄養素がしっかりと摂れている事が前提となります。
例えば、エネルギー源となるブドウ糖の不足があると、体内では異化が亢進(たんぱく合成が抑制)して褥瘡が治りにくくなっている可能性が高いため、亜鉛やたんぱく質だけを補給しても効果が出にくくなります。
アセスメントの重要性
大切なのはしっかりとしたアセスメントを行い症例に合った栄養管理を行う事です。
以前経験した症例ですが、エネルギー、たんぱくの摂取量は十分であったため、ビタミン、亜鉛、鉄を強化したゼリー状の補助食品を取り入れましたが、思うように改善しませんでした。そこで、アルギニンを強化したジュースタイプの補助食品に変えたところ治癒スピードが早まった事があります。この症例は、高齢者の消化吸収力低下が顕著にみてとれる例だと考えています。たんぱく質は消化に大きなエネルギーを必要とし、十分な胃酸や消化酵素が分泌されないと分解吸収できません。高齢者にはたんぱく質よりも、アミノ酸で補った方が消化への負担が少なくて済みます。「食べた=摂れた」と安易にとらえず、総合的にアセスメントすることが大切です。
参考文献
・日本褥瘡学会ガイドライン
関連コラム
・『大量調理の献立作成のポイント』
・『経腸栄養、口から食べる大切さ』
・『高齢者が低栄養にならないために』