家庭料理では上手くいくレシピでも、大量調理では同じ仕上がりにならないことは多々あります。調理機器、蒸発量などが異なる大量調理の献立作成ポイントを3つに分けてお話しします。
嗜好や地域性には常にアンテナをはっておく
大量調理となれば嗜好調査は欠かせません。お祝いごとで多用されるメニュー、代表的な郷土料理などは把握しておくとよいでしょう。ご意見箱のように、普段から喫食者の声を聞きとれるフローを作っておくのも大切です。小まめに意見を聞いておくと徐々にその地域の特性も分かってきますし、顔の見える関係は調理の質の向上にもつながります。食べる方の顔を思い浮かべると、自然と心のこもった料理になります。
仕上がりまですべての調理工程を想定すること
主菜・副菜・汁物、すべてのメニューで調理器具の使用に重複がないか、時間内に作業が可能か、仕込み処理に無理はないか、などを想定して献立作成します。私自身の約3年間の調理担当経験の中で思うことは、大量調理の献立作成には現場経験が必須だということです。
手間のかかる献立が連日続くことは作業員の疲労度に影響し、疲労度は給食品質に大きく関わってきます。異物混入や事故を防ぐ意味でも、調理者のスキル、作業想定を考慮することは重要です。栄養価やバランスを考えると、1食の完成度に目が行きがちですが、完璧を目指さず一週間単位でバランスをとると良いと思います。
現場経験のない栄養士による献立は調理員にはわかります。質の良い食事の提供には、現場との信頼関係は不可欠ですのでしっかりコミュニケーションを図りながら献立作成しましょう。
大量調理を味方につける
パラパラのチャーハンや、ジュワッと焦がしたお肉のソースなどの調理は、大量調理ではなかなか難しいものです。工夫次第では可能ですが、かなり労力がかかりますね。
普段の献立では、できないものを追うのではなく、得意な分野を前面に出すのも良いと思います。スチコンや回転釜は、煮込み料理や蒸し料理が煮崩れ少なく、食感の調節も手間が少なくできますので、これを活かした献立にしたいですね。蒸し料理はあっさりとしがちですが、ソースやドレッシングで濃厚にもできます。
他には、から揚げのカリッと感を提供するのは難しいので、フライヤーではなくスチコンでふっくらと柔らかく仕上げて、おろしソースをかけるなども良いと思います。
手作りハンバーグは丸めるのが大変ですが、スチコンの煮物用容器に敷いて焼き、カットして出せば、冷凍の既製品よりずっとおいしくできます。
大量調理の機器は、工夫次第でさまざまな使い方が出来ますので、利点を活かした献立を立てたいですね。
関連コラム
・『大量調理のコツと家庭料理との違い』
・『検食はなぜ必要か?』
・『高齢者が低栄養にならないために』