人材不足が深刻な給食現場において、従業員の教育に悩んでいる方も多いのではないでしょうか。長く給食現場を経験してきたエンドーサー※の皆さんにご自身の現場での従業員教育のお悩みや工夫についてお話を伺いしました。
※エンドーサーとは…学校や保育園、病院、高齢者施設、事業所の5業態で働いている管理栄養士の方々のことで、Eatreatから定期的にお困りごとなどのヒアリングや情報収集や販売促進の協力依頼を行っている。
お話を伺ったエンドーサーの皆さんについて
各エンドーサーの職場における立場と従業員の状況は、下記の表の通りです。参考にしながら本コラムを読んでみてください。
後輩・パートへの接し方で悩んでいること
エンドーサーの皆さんが後輩やパートへの接し方で悩んでいることについて伺った内容をまとめました。
◎保育園
・立ち上げの時に自分が声をかけた人であり、年代も近いのでやりやすい環境になっている
・メンバーが顔見知りなので、過度な馴れ合いにならないように注意している
・自分が休みの時に献立通りに作られないことがあり、献立を徹底してもらうためにどうしたらよいか悩んでいる(例:味が薄いので調味料を倍にして調理したなど)
◎学校
・職場には自分以外に従業員がいないため、従業員教育はない
・自治体によっても異なると思うが、学校の栄養士は一人職場なことが多く、現場の教育体制が整っていないと感じることがある
◎病院
・人数が増えてきたので、情報共有が難しくなってきた。紙媒体での情報共有に限界を感じており、今後は情報共有の時間を設けるなど工夫が必要
・栄養士としての知識よりも、社会人としてのマナーや一般常識のような基本的な教育に労力を費やしている
◎高齢者施設
・後輩を持つのが初めての経験であるため、ネットなどで検索しながら手探りで教育を実施
・丁寧に教えすぎると時間がかるのでさじ加減が難しい
◎事業所
・情報を共有しても人によって理解度が異なるため、認識のずれをなくすことに苦労している
・伝えたことについて頭では理解していても、なかなか行動に起こせていないように感じる
・人数が多くそれぞれに要望があるため、それを調整することに労力を費やしてしまう
入職時の教育方法や従業員教育で心がけていること
エンドーサーの皆さんが、各職場において後輩が入職する時の教育方法や従業員教育で心がけていることについて、伺った内容をまとめました。学校勤務の方については、従業員教育がないため省略しています。
◎保育園
・法人のマニュアルをアレンジし、パート職員でもわかりやすい簡易的な衛生マニュアルと業務マニュアルを作成し、入社時に一緒に読み上げている
・作業を教えるだけでなく、各工程の意味づけや実施する理由を伝えるようにしている
・園児の様子や変化を共有し、園児への興味を持ってもらうようにしている
◎病院
・本人の能力や負担の許容量を考慮しながら教育を行うようにしている
・直接教えるだけではなく、外部セミナーへの参加やレポート提出なども適宜実施する
・風通しをよくし、相談しやすい環境を作るように心がけている
◎高齢者施設
・簡単なマニュアルを作成し、確認しながら教育を実施している
・繰り返し聞いてもよい環境を作るように心がけている
・教えるだけではなく、後輩の考えも聞くようにしている
・栄養相談など正解がないことに関しては、大きな間違いがない限り本人の意見を尊重するようにしている
◎事業所
・衛生マニュアルや業務のタイムスケジュールを用いて、オリエンテーションを実施している
・一人一人とコミュニケーションをとるように意識している。要望を伝える時は相手の気持ちを汲み取り、誠実に対話するように意識している
・仲良くなりすぎて業務がおざなりにならないよう、メリハリを大切にしている
・業務として受け入れられないことや指摘しなければいけないことは、理由を説明した上で、的確に伝えるようにしている
・言葉で説明するだけではなく、図や写真を用いて視覚的にも理解してもらうようにしている
まとめ
今回みなさんのお話を伺って、従業員教育に関してはどこの現場においても各人の裁量に任されている部分が大きいと感じました。そんな中でもエンドーサーの皆さんはコミュニケーションを大切にし、様々な工夫をしながら従業員教育にあたっています。このような事例や悩みごとを気軽に共有したり相談できる場所があると、さらに従業員教育がやりやすくなるのではないかと思います。
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