給食を提供する施設で勤務している管理栄養士・栄養士にとって、今後の自身のキャリアについて悩むことも多いのではないでしょうか。長く給食現場を経験してきたエンドーサー(※)の皆さんにこれまでのご経歴や今後のキャリアプラン、キャリア形成におけるお悩みごとについてお話をお伺いしました。
※エンドーサーとは…学校や保育園、病院、高齢者施設、事業所の5業態で働いている管理栄養士の方々のことで、Eatreatから定期的にお困りごとなどのヒアリングや情報収集や販売促進の協力依頼を行っている。
お話を伺ったエンドーサーの皆さんについて
エンドーサーの皆さんの詳しい勤務年数や過去の経歴は下記の表のとおりです。こちらを参考にしながら本コラムを読んでみてください。
キャリアアップのためにやってきたことや取得した資格など
エンドーサーの皆さんが取得している資格や、キャリアアップのためにやってきたことについて伺った内容をまとめました。
◎保育園
・離乳食アドバイザー、幼児食アドバイザー、学童食アドバイザー、健康食育シニアマスターなどの民間資格を取得
・副業としてセミナー講師、栄養士会や地域主催の食育イベントの講師、食事改善サポートを実施
◎学校
・成長期の子供たちのスポーツ栄養に関わりたいと思っているため、スポーツ栄養に関するセミナーに数回参加
・副業やボランティアで特定保健指導、執筆、セミナー講師、栄養監修などを行いキャリアアップにつなげている
◎病院
・静脈経腸栄養管理栄養士、日本糖尿病療養指導士、公認スポーツ栄養士の資格を取得
・本業で経験できないこと(有料老人ホームでの栄養管理、在宅栄養管理、特定保健指導、高校の部活への栄養セミナー、スポーツ選手への栄養管理)などは副業として経験しスキルアップを図っている
◎高齢者施設
・摂食嚥下の勉強会に参加
・コミュニケーションスキルや時間管理などのビジネス書籍や高齢者の栄養関連の書籍を読む
・Instagramの発信
◎事業所
・カンボジアでの食事調査
・海外展開している給食団体へのインタビュー
・料亭でのアルバイト
・調理師免許取得
今後のキャリアプラン
エンドーサーの皆さんに、今後のキャリアプランとそれを実現するために具体的に動いていることについて、伺った内容をまとめました。
◎保育園
・子どもが大きくなってきたため、正職員への採用試験を受験合格すれば、近隣の小規模事業所の献立作成や栄養管理など複数園の統括を行う予定
◎学校
・栄養教諭取得のために勉強中
・スポーツ栄養に関われるよう、自校の部活動の顧問の先生にセミナー開催などを提案中
◎病院
・スポーツ栄養や地域栄養に興味があり、ボランティアでスポーツ栄養に関するセミナー講師ができないか模索したり、勤務先の病院で子ども食堂を開催している
◎高齢者施設
・数年前はいろいろとキャリアアップについて悩んだ時期もあったが、今の職場に満足しているため、今後も今の職場で働き続けたい
◎事業所
・将来、途上国で給食を提供する仕事をしたい(もしくは、日本で飲食店を開き売上の一部を寄付するなど)
キャリアに対する現状の悩み
エンドーサーの皆さんに、キャリアに対する悩みについて伺った内容をまとめました。
◎保育園
・離職後に栄養士業務を資格のない調理員に引き継げるのか不安
◎学校
・食育に力を入れているコミュニティに参加したことがあるが、ボランティアなので日々の業務との兼ね合いもあり継続していくことが難しい
◎病院
・働いている病院内での疾患しか経験ができないため、他の疾患への対応方法などの知識を習得していくのが難しい
・スポーツ栄養に興味があり公認スポーツ栄養士を取得したが、それだけでは収入面でも難しい現状がある
◎高齢者施設
・同じ職場に同職種がいないため、気軽に相談できる人がいない
・他の栄養士からいろいろと相談される立場になったため、自分の相談をしにくいことがある
◎事業所
・事業所の数字管理もある程度任せてもらえており、経営的なことも学べているので満足している
管理栄養士・栄養士業界に期待すること、あったら良いなと思うこと
キャリアアップをしていくにあたり、今後業界に期待したいことについて伺った内容をまとめました。
・管理栄養士といってもさまざまな分野があるため、分野別に特化したコミュニティがあるとよい
・同じ目的や志がある栄養士がつながることができる場所があるとよい
・フリーランスや経営者の方とつながることができる機会がないので、どうやって売上を上げているのかなど質問できるコミュニティがあるとよい
まとめ
エンドーサーの皆さんは、自身のキャリアアップのために積極的にセミナーを受講したり、資格を取得したりしているということがわかりました。副業が可能な場合は、勤務先だけでは関わることが出来ない業務にチャレンジしている方もいらっしゃいます。給食現場で働く管理栄養士・栄養士は一人職場なことが多く、同業態や別業態で勤務している栄養士とのつながりが作りにくいという意見も多かったです。さまざまな業態で働く栄養士と、気軽にコミュニケーションをとれる場所が求められていると感じました。
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