給食現場で働く管理栄養士・栄養士は人数が少なく、悩みや困ったことがあってもすぐに相談するのが難しいのではないでしょうか。本連載では、給食現場でよくある困りごとを各業態の給食現場で働く管理栄養士(※エンドーサー)に伺い、解決策や今後の理想を模索していきます。今回は、「メニューのバリエーション」についてお話を伺いました。
※エンドーサーとは…学校や保育園、病院、高齢者施設、事業所の5業態で働いている管理栄養士の方々のことで、Eatreatから定期的にお困りごとなどのヒアリングや情報収集や販売促進の協力依頼を行っている。
給食現場における献立・メニュー作成の現実
給食現場での献立・メニュー作成は、喫食者が大きく変わらないうえ、業態によっては毎日3食提供することもあるため、いかに飽きのない献立を作るかが重要です。しかし、価格や食材の硬さなどにより使用できる原材料が限られてしまうという現実もあります。
メニューバリエーションについて、エンドーサーの皆様にお伺いした現状の対応や悩み、工夫している点を各業態別にまとめました。
肉・魚に関する対応や工夫
◎学校
・牛肉はほぼ使用しない
・豚肉はバラ・もも・こま・ひき肉、鶏肉はもも、むね、こま・ひき肉を使用。中でも鶏肉は一番使う
・使用量が決まっているため、肉をかたまりで出すメニューは提供不可
・魚は季節のものや価格の安定している魚(メルルーサなど)を使用
・魚を角切りにしてタレと和えるメニューは苦手な子でも食べる量が調整できて食べやすいからか評判◎
◎保育園
・ひき肉も含め、肉はすべて赤身を使用し、鉄の補給につなげる
・豚肉は脂身が苦手な子も多く、ももの赤身を使用
・肉がメインだと単価が上がってしまうため、豆腐や卵、大豆ミートで調整している
・魚はやわらかいからか、ホッケが人気。焼き・フライ・竜田揚げと何でも使える
◎病院
・牛肉のバラはあまり使用しない
・肉は価格的にたくさん使えないため、少量でも肉の味が出るメニューを採用(例:ハヤシライス、肉豆腐など)
・肉の量が使えない場合は、豆腐や野菜の量で調整
・豚肉は高齢者への配慮からなるべく薄切りを使用。鶏肉は使用頻度が高い
・魚で価格を抑えるために、モウカザメを煮付けや濃いソースを使って職員を中心に提供
◎高齢者施設
・肉の使用部位は基本バラ
・価格面で鶏肉を使うことが多い。一時はむね肉のみだったが、予算をアップしてもも肉も使用可能に
・魚は骨なしの切り身などを販売しているメーカーサイトを見ることが多い
◎事業所
・牛肉はほとんど使用しないが、価格が激安の時や鉄分補給メニュー提供時には使用することも
・豚肉はこま・ロース・ひき肉を使用。もも肉は頻度少なめ
・鶏肉はもも・むね・ひき肉を使用。一枚肉が安いためメニューへの使用頻度も高い
・唐揚げはもも肉を求められるが、価格面からむね肉を使用
・魚は切り身だと縮んでしまうため、小さい魚の時はパン粉を使って大きく見せるよう工夫
・なまずは価格が安い。色が白く淡白な味のため、ソースや下味で工夫して提供している
コストや食材の制約から、使用部位や種類、量に制限がある中で、さまざまな工夫をされていることがわかりました。
特に魚については給食界隈で流通している魚の情報はニーズがあるようです。
その他、サイクルや献立作成に関して悩み
◎学校
・人気メニューは2〜3か月に1度提供。人気があれば似たメニューが続いても満足度に影響なし
・月曜日の献立は児童の給食当番が替わり提供に時間がかかるため、丼メニューにして食器の量が少なくて済む献立に。ただ中華に偏っており、それ以外の丼メニューのバリエーションが欲しい
◎保育園
・野菜炒めなどのごちゃっとしたメニューは残りがちなため、肉と一緒に食べられるポークチャップ、生姜焼き、味噌炒め、スタミナ炒めを1か月の中でサイクルを回す
・食べやすいもの、定番の味は子どもに喜ばれる
・同じメニューが続いても特に問題ないため、バリエーションにはあまり悩まない
◎病院
・豚薄切り肉は人気メニューが少なく、定期的にメニューを入れ替えている
・鶏肉は使用頻度が高いため、バリエーションが不足しているのが悩み
◎高齢者施設
・メインが揚げ物など重たい時は副菜をあっさりしたものに
・夕食はあっさりしすぎると寝る前に空腹になり寝ない方がいるため工夫が必要
・利用者の満足度の面から同じような見た目や味付けが続かないようにしたり、常食と療養食で見た目や皿数に差が出ないようにする
・通所の利用者のため、曜日で献立が重ならないように工夫している
・新しいメニューを作ることは少ないが、SNSやメーカーパンフレットで見たものでイベント時に提供できそうなものは採用する
◎事業所
・メインの盛り付けがどれも似たようになってしまうのが悩み。現状はクリスピーチキンなど見た目が新しいメニューを導入している
業態によって求められているポイントが異なるため、対象者に合わせた対応が必要であると感じました。全体として、マンネリ化を阻止できる見た目や味に変化が出るメニューを、メーカーや業者側から提案してもらえると嬉しいという声がありました。
今後期待すること
給食現場では、限られた食材の中で喫食者が喜んでくれる献立を作ることに苦労しています。
そのため現場の管理栄養士・栄養士からは、同じ材料を使用しても見た目や味に変化があってマンネリ化しないメニューや、今まで定番で使用していた肉・魚に替わる食材の情報が求められているようです。
課題解決に向けて、まだまだ情報収集をしていく必要があると考えられます。
関連コラム
・給食における価格高騰の現状とコストを抑える工夫
・厨房業務効率化の提案