コロナウイルスの流行により、さまざまなスポーツイベントの延期や中止が相次ぎましたが、2022年に入って徐々に再開の兆しが見えてきています。
2022年3月には都市型マラソンの代表である東京マラソンが開催され、この秋シーズンも全国で大規模なマラソン大会が多く開催されるようです。
私自身もランニング愛好家で、マラソン大会に出場するようになって16年目になります。こちらのコラムでは、市民ランナーの方々へ向けた栄養管理について、3回シリーズでご紹介していきたいと思います。
マラソンの競技特性
マラソンはスタートからゴールまで決められたコースを走り切り、順位や時間を競う陸上の長距離種目です。
42.195kmのフルマラソンのほか、その半分の距離を走るハーフマラソン、さらに10kmや5kmなどの種目もあります。ウルトラマラソンといって50kmや100kmなど非常に長い距離を走る大会もあり、目的やレベルに沿ったさまざまな取り組み方があるため、幅広い年代に人気のスポーツです。
マラソンは長時間にわたって走り続ける競技のため、一定のスピードをどれだけ長く維持できるかの「持久力」が勝負のカギとなります。
エネルギー不足にならないために ~糖質・ビタミンB1~
全身を使って長く動き続けることで、体は大量のエネルギーを消費します。
持久力系の競技における食事の基本としては、まず筋肉を動かす主なエネルギー源である「糖質」を十分に摂取し、体内に蓄えておくことです。
ご飯、パン、麺類などを毎食しっかりとり、糖質が不足しないように意識しましょう。
また、体内で糖質からエネルギーを作り出す代謝過程で、「ビタミンB1」が必要となります。ビタミンB1が不足すると、糖質が効率良くエネルギーに変換されないため、スタミナ切れや疲労を招く要因となってしまいます。
糖質の摂取が多くなるほどビタミンB1の必要性も高まるので、ランナーは日頃の食事でビタミンB1が豊富な豚肉、緑黄色野菜、大豆製品なども十分に摂取する必要があります。
ランナーが気をつけたい足の故障
日常的なランニングで発症しやすいスポーツ障害に、疲労骨折があります。ランニングの繰り返しで足の骨に小さなダメージが蓄積され、痛みを感じるようになります。競技選手だけでなく市民ランナーにもよく起こるため、予防することが大切です。
疲労骨折の要因は走ることによる刺激だけでなく、栄養不足による骨密度の低下も考えられます。
慢性的なエネルギー不足になると、骨の代謝に影響を与えてしまいます。つまり、走って消費する量に見合ったエネルギーを日々の食事でしっかり確保しておくことが、骨の健康状態を良好に保つためにも不可欠なのです。
強い骨を作るために ~カルシウム・ビタミンD~
骨の材料となる栄養素で忘れてはいけないのが、「カルシウム」です。日々の食卓にカルシウムが豊富な食品を積極的に取り入れるようにしましょう。牛乳や乳製品のほか、骨ごと食べられる小魚や魚の缶詰、厚揚げや高野豆腐などの大豆製品も、カルシウムの供給源となります。
カルシウムを効率良く体に取り入れるには、吸収率が高い牛乳や乳製品を毎食食べるように心がけたり、吸収を促進する働きがある「ビタミンD」を一緒にとるのもおすすめです。ビタミンDは魚や魚卵、干ししいたけやきくらげなどに豊富に含まれています。
魚介やきのこ類も意識的に取り入れながら、ケガのない充実したランニングライフを送っていきましょう。
参考文献
・公益財団法人日本陸上競技連盟医事委員会編著:「今より強く!を目指して~アスリートの身体づくりと食のエッセンス~」、ライフサイエンス出版、(2019)
・公益財団法人日本スポーツ協会著:「公認スポーツ指導者養成テキスト」、公益財団法人日本スポーツ協会
関連コラム
・「ケガの予防・回復のための食事」
・「マラソン前などのカーボローディングの方法」