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食品表示法では、食品を販売する際に表示すべき事項を「食品表示基準」として定めています。食品表示基準は食品を安全に取り扱うための情報として重要な機能を持つため、専門家の意見を踏まえて改正が繰り返されています。
本コラムでは、食物アレルギー表示遺伝子組み換え表示をピックアップし、従前ルールからの変更ポイントを解説します。

食物アレルギー表示とは

近年、食物アレルギー患者数の増加がみられています。食物アレルギーの症状は、皮膚のかゆみや腫れなどの皮膚症状が最も多く、鼻水やくしゃみ等の呼吸器症状、目のかゆみや口の中の腫れ等の粘膜症状などがあります。また「アナフィラキシーショック」と呼ばれる特に重いショック症状を起こすと、命の危機を伴うことがあります。

以上により、特定のアレルギー体質を持つ人がアレルゲンを含む食品を避けることができるよう、容器包装された加工食品では含まれるアレルゲンの表示が義務付けられるようになりました。

特定原材料に「くるみ」が追加!

食物アレルギーの症状を引き起こすことが知られている原材料は、症例数や重篤度によって「特定原材料」と「特定原材料に準ずるもの」に分類されています。

このうち「特定原材料」には、食品表示基準の一部改正により令和5年3月9日から「くるみ」が追加されました。食物アレルギー表示の経過措置期間として、令和7年3月31日までに製造・加工された食品、輸入される加工食品(業務用加工食品を除く)、同日までに販売される業務用加工食品については、新しい規定にかかわらず従前ルールに従って表示することができます。

遺伝子組み換えとは

遺伝子組み換えの技術は、「ある生物の細胞から有用な性質を持つ遺伝子を、他の生物の細胞の遺伝子に組み込んで、新しい性質をもたせる」ことです。この技術を活用して改良した農作物や加工食品を「遺伝子組み換え食品」といいます。例えば味の良い品種に害虫に強くなる遺伝子を組み込むことで「味が良く害虫にも強い品種」ができ、安定供給が見込めるようになります。

その一方で、遺伝子組み換えで生み出された食品による人体への影響を心配する声も多くあります。そのため生産、流通、加工の各段階で、非遺伝子組換え食品に遺伝子組換え食品が混入しないように管理されています。これを「分別生産流通管理(IPハンドリング)」といいます。

遺伝子組み換え表示を厳格化!

大豆、とうもろこし、またそれらを原材料とする加工食品については、分別生産流通管理を行なった上で、遺伝子組み換えの混入率が5%以下であれば「遺伝子組み換えでない」と表示することができていました。しかし食品表示基準の一部改正により、平成31年4月25日から表現を厳格化することとなりました。改正後の現行ルールで「遺伝子組み換えでない」と表示するには、第三者機関によって遺伝子組み換え食品の混入がないと認められた場合に限ります。

この改正基準の施行は令和5年4月1日のため、すでに経過措置期間は終了しており、現在は現行ルールに基づいた食品が販売されています。

本コラムでは、食物アレルギー表示遺伝子組み換え表示の変更ポイントをご紹介しました。次回は、食品添加物の不使用表示に関するガイドライン原料原産地表示制度の変更ポイントを解説します。


参考文献
・桑崎俊昭:「改訂新版 早わかり食品表示法」第3版、公益社団法人日本食品衛生協会、(2021年)
・消費者庁:「早わかり食品表示ガイド(令和5年3月版・事業者向け) 」、消費者庁、https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/information/pamphlets/assets/food_labeling_cms202_230324_02.pdf 、(閲覧日:2023年12月14日)
・消費者庁:「加工食品の食物アレルギー表示ハンドブック」、消費者庁、https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/food_sanitation/allergy/assets/food_labeling_cms204_210514_01.pdf、(閲覧日:2023年12月14日)
・厚生労働省医薬食品局食品安全部:「遺伝子組み換え食品の安全性について」、厚生労働省、https://www.mhlw.go.jp/topics/idenshi/dl/h22-00.pdf、(閲覧日:2023年12月14日)



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みんなのコメント( 1

    • Eatreat 編集部
      314日前

      管理栄養士の大内美幸さんに執筆いただく「食品表示の基本を解説」シリーズ。好評につき、「従前ルールからの変更点」を3回にわたって解説いただきます。今回は食物アレルギー表示と遺伝子組み換え表示についてです。

WRITER

大内 美幸

Eatreat株式会社/コミュニケーションマネジャー 認定栄養CS Eatreat/代表管理栄養士 レシピ動画アプリや献立作成アプリなど、多くのIT企業で管理栄養士として従事してきました。 食領域でのマーケティング経験も多数あります🍽 現在は、飲食店の立ち上げサポートや監修のほか、次世代の栄養士の人材育成にも力を入れています。 運営するEatreatアカデミーの卒業生は1,000名超え📝 Eatreatのことを知っていただくために、PR活動もがんばっています♪

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