COLUMN

「歯にいい栄養素ってありますか?」

先日、患者様からそんな質問をいただきました。むし歯にならない強い歯がほしい…これまで歯の治療で苦労した人ほど、痛切に感じておられるでしょう。

強い歯づくりは生まれる前から

強い歯を作るために必須かつ重要なのは、歯の形成期にバランスのとれた良好な栄養状態があることです。人の乳歯はお母さんのお腹にいるうち(胎生7週頃)から作られ始め、歯の表面のエナメル質が成熟して硬くなる「石灰化」は妊娠4カ月頃から生後約1年で完了します。
永久歯は部位によって胎生期から作られるものと生まれてから作られるものがあり、石灰化は出生後に始まって8歳頃には完了します。

丈夫な歯を作るための主な栄養素は次の通りです。

≪歯の石灰化の材料になる≫
カルシウム(ひじき、チーズ、しらすぼしなど)
リン(米、牛肉、豚肉、卵など)

≪歯の基礎となる≫
たんぱく質(魚、卵、牛乳、豆腐など)

≪エナメル質の土台を作る≫
ビタミンA(豚肉、レバー、ほうれん草、にんじんなど)

≪象牙質の土台を作る≫
ビタミンC(ほうれん草、みかん、さつまいもなど)

≪カルシウム代謝や石灰化の調節をする≫
ビタミンD(バター、卵黄、牛乳など)

これらが不足するとでき上がった歯に弱い部分ができてしまいます。お腹にいる間は十分に栄養を摂れなかったかもしれない…というお母さんも、まずは学童期までは挽回のチャンスと考えて、食を大切にすることをおすすめしたいです。お肉も野菜も、いろいろな食品をしっかり食べるという基本が、身体の発育だけでなく丈夫な歯を作ります。

でき上がってからはフッ素もうまく利用して

完成した歯の質は基本的に変わらず、一生涯付き合っていくことになります。しかし、大人なってしまったからといって「もう手遅れだ」と諦めることはありません。歯の質自体が変えられなくても、日々溶けては修復(再石灰化)を繰り返している歯の表面を少しでも丈夫にしたり、むし歯になりにくくしたりする方法があるのです。

その一つがフッ素の利用です。フッ素は歯のエナメル質を強化し、むし歯になりにくくする効果があることで知られています。歯の表面が未熟な乳歯や生えたての永久歯には特に有効ですが、歯ができ上がった大人の歯でも効果は期待できると言われています。歯に塗ったり、フッ素入りの洗口剤で口をゆすいだりして使います。また、栄養素としてのイメージはないかもしれませんが、フッ素の経口摂取もむし歯の抵抗性を高めるのに有効とされ、世界的にはむし歯予防の目的で水道水に一定濃度のフッ素を添加している国もあります。

歯科の現場では、3歳ごろまで砂糖を与えられずに育った子どもは親の歯の質にかかわらず丈夫な歯ができているというケースも多く、遺伝要因もある一方で砂糖など環境要因も非常に大きいと考えられています。
唾液を出して歯の再石灰化を促したり、再石灰化の材料となる成分を含んだガム等を噛むことも歯を守るのによい方法です。歯の弱さに悩んでいる人は、こうした歯に良い習慣もぜひ取り入れてみてくださいね。

参考文献:
・日本歯科医学会重点研究委員会ワーキンググループ「歯科医療関係者向け子どもの食の問題に関するよくある質問と回答」 平成28年8月
・eヘルスネット フッ化物利用(概論)
 https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/teeth/h-02-006.html

 

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WRITER

道盛 法子

予防歯科で働く管理栄養士です。 新卒で3年ほど出版社で編集・記者として勤務し、その後予防の活動に現場で関わりたいとの思いから転職しました。歯科は、すべてのライフステージに関わることができ、食を切り口にした予防活動にも最適な場だと感じています。 管理栄養士の視点で歯や口のあれこれをお伝えできればと思います!

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