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栄養価計算では、下ごしらえや下味を行うレシピが多く見られます。塩や調味料の「使用量」と「実際に食材に吸収・付着する量」には差があるため、その点を考慮することが正確な栄養価を導き出すポイントです。今回は、下ごしらえや下味のあるレシピでの栄養価計算の考え方をご紹介します。

「実際に摂取される量」で考える

前回のコラムで解説した煮汁や漬け汁と同様に、栄養価計算の基本は「実際に食べる(飲む)量に基づいて算出する」ことです。これは、下ごしらえや下味に使用した塩や調味料についても同様です。 実際の調理では、味や食感をよくするために、さまざまな下ごしらえや下味が行われます。たとえば、以下のような工程はよく見られるものです。

・野菜の塩もみ
・野菜の板ずり
・野菜の塩ゆで
・肉や魚への下味
・パスタのボイル

これらの工程では塩や調味料を使用しますが、その全量が口に入るわけではありません。水洗いや絞りなどの工程を伴う場合は、塩の一部が流出します。肉や魚への下味も、漬ける時間によって調味液の吸収率・付着率が異なります。 そのため、下ごしらえや下味に使用した塩や調味料を全量のまま計算するのではなく、吸収量や付着量を考慮して栄養価計算することが大切です。

塩や調味料の吸収量・付着量はどう把握する?

下ごしらえや下味によって、どれくらいの塩や調味料が食材に吸収・付着したかを把握する方法としては、主に以下の3つが挙げられます。

①調味液の差し引き法
②塩分計(塩分濃度計)を用いた測定
③「調理のためのベーシックデータ」の活用

①の調味液の差し引き法は、前回のコラムでご紹介した煮汁や漬け汁と同様の考え方です。下味後に残る調味液の量を確認し、その減少分から吸収量や付着量を逆算して求めます。
②の塩分計(塩分濃度計)を用いた測定では、サンプルとなる食材に直接挿して塩分量を測定し、下ごしらえや下味前のサンプルと比較して算出します。ただし、家庭用の塩分計は汁物などの液体の測定を前提としたものが多く、固形物には対応していない場合が多いようです。その場合は、サンプルを細かく刻んで水に溶かし、希釈してから測定する手間がかかってしまいます。
そこで役に立つのが、③の調理のためのベーシックデータです。女子栄養大学出版部が発行している「調理のためのベーシックデータ第6版」では、下ごしらえや下味についても詳しく記載されていますので、近しい料理や調理法を参考にしてみてください。栄養価計算に活用できる目安として非常に有用です。

実際の栄養価計算例を紹介!きゅうりとわかめの酢の物

調理のためのベーシックデータを活用した、実際の栄養価計算の例を見てみましょう。

このように、塩をレシピ通りに全量で栄養価計算してしまうと、実際よりも食塩相当量の数値が高くなってしまいます。そこで「調理のためのベーシックデータ第6版」に記載されている、きゅうりの塩もみのデータを参考にして計算します。

以上のように、吸塩率をもとに計算することで、より現実に近い栄養価を算出できます。同じ食材のデータがない場合も、近しい料理や調理法を参考にすることができます。

最後に

これらの工程では塩や調味料を使用しますが、その全量が口に入るわけではありません。水洗いや絞りなどの工程を伴う場合は、塩の一部が流出します。肉や魚への下味も、漬ける時間によって調味液の吸収率・付着率が異なります。
そのため、下ごしらえや下味に使用した塩や調味料を全量のまま計算するのではなく、吸収量や付着量を考慮して栄養価計算することが大切です。

参考文献
・香川明夫:「調理のためのベーシックデータ」 第6版、女子栄養大学出版部、(2022)

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WRITER

大内 美幸

Eatreat株式会社/コミュニケーションマネジャー 認定栄養CS Eatreat/代表管理栄養士 レシピ動画アプリや献立作成アプリなど、多くのIT企業で管理栄養士として従事してきました。 食領域でのマーケティング経験も多数あります🍽 現在は、飲食店の立ち上げサポートや監修のほか、次世代の栄養士の人材育成にも力を入れています。 運営するEatreatアカデミーの卒業生は1,000名超え📝 Eatreatのことを知っていただくために、PR活動もがんばっています♪

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