COLUMN
  • 管理栄養士・栄養士インタビュー
    2019.09.06

    誰もが気軽に食事について学べるようにしたい!鈴木 菜美さんインタビュー

  • posted by Eatreat 編集部

今回は、「誰もが気軽に食事について学ぶことができるようにしたい」という想いから、自宅でその人にあったおやつが作れる教室を開催している管理栄養士の鈴木菜美さんにお話をうかがいました。

管理栄養士を目指したきっかけは?

私が15歳の時に入院している祖母のお見舞いへ行った際、病院食を食べられない祖母の姿を見ました。大好きな祖母が「りんごは固くて食べられない」と言って残している姿を見て、私は「少しでも食べて元気になってもらいたい。大切な人が食べたいと思ったものを食べられる形で食べさせてあげたい」という気持ちから、管理栄養士になりたいと思いました。

大学ではどのような活動をしたのですか?

家政学部のある大学に進学し、研究室ではえん下食やソフト食を勉強しました。
栄養があり、安全に、そしてなにより美味しい食事であることが重要であるため、食材に合わせた調理方法が必要であることを知り、食材ごとにミキサーにかけたり、煮汁を使用、豆腐、白はんぺん、長芋等を混ぜ込むことで栄養価を保ちつつ、見た目や味を良くしたりする方法を研究しました。
国家試験の勉強と就職活動の同時進行でもあり、毎日夜遅くまで作業をするのは大変でしたが、同じ研究室の仲間と一緒に励ましあうことで乗り切ることができました。

就職先はどのように決めたのですか?

研究室で学んだ知識を活かし、一人一人の方に丁寧にかかわれるのではと思い、特別養護老人ホームに就職。そこでは入居者や職員の食事の献立作成の他、調理、味付け、提供、片付けまですべて行いました。食材のおいしさを感じてもらうために既製品ではなく生の食材から手作りすることや、利用者の方からの嬉しい言葉を聞くことがやりがいでしたが、「もっと管理栄養士として相手に関わりたい」「病気の予防や治療もできる仕事をしたい」という思いが強くなり、糖尿病専門クリニックに転職しました。

糖尿病専門クリニックでは、管理栄養士として働き、当日の採血結果や尿検査の結果数値に影響した要因を患者さんと一緒に探りながら、食事や運動の影響を説明していきます。
患者さんには高齢者の方だけでなく、若くして糖尿病と診断されて不安な方、仕事の合間をぬって受診される方など、多種多様な生活・考えをお持ちの幅広い世代の方がいることがわかりました。
医師や看護師、薬剤師と共に、どのように患者さんにアプローチしたらよいのだろうかと話し合うことで、食事だけではなく、薬や注射の影響も踏まえて、どんな生活状況で何を大事にしている患者さんなのかという総合的な見方を学ぶことができました。

様々な患者さんと話しているうちに、「主食に偏りがちの患者さんが多く、おかずの簡単レシピが必要」だと気づきました。そこで約2カ月に1品のペースを目安に、電子レンジやフライパン1つでできる簡単レシピを作成し、誰もが持っていけるように待合室に設置をしたり、必要に応じてすぐに渡すことができるようにしたりしました。

日々の業務のほかにも外部の勉強会や学会に積極的に参加させていただくことができ、フリースタイルリブレやカーボカウントを取り入れた栄養指導の技術も身につけることができました。
また、日本糖尿病療養指導士の資格を取得したことで、より治療の知識を得ることができました。治療内容は変わっていないのに食事を変えたことで病気も心も元気になる患者さんの姿を見て、管理栄養士としての仕事の楽しさを知ることができました。

現在は違う糖尿病専門クリニックで働いていますが、前職での経験を活かすことができています。私が栄養相談の中で大事にしていることは、患者さん一人一人の目線に立つ事です。「合併症になるのではないかという不安」、「ちゃんとしないといけないとわかっていてもできない」という患者さんの言葉は頻繁に聞きます。
レシピを作成したり、患者さんの家の近くの運動できる施設を探したり、近所の店で購入できるお勧めの商品を探して紹介することで、「指導される」という気持ちではなく、患者さんが知りたい情報を少しでも与えられることが出来るように「一緒に作戦会議をしましょう」という気持ちで声を掛けています。

2017年3月よりエストコーポレーション様 発行の『自宅に届く脳トレドリル 脳レク』という冊子に、認知症予防をテーマにして考えたレシピを掲載させて頂いております。毎月、認知症予防に有効と考えられている食材を一つ取り上げ、その食材を使ったレシピを2つ紹介しています。私はこのレシピを作成するときに、科学的な根拠がある食材を選ぶこと、旬で身近な食材を使う事、食べたくなるような写真を撮ることを意識しています。

現在はどのようなお仕事をされているのですか?

誰もが食事について学ぶことができ、食を通して不安な気持ちをなくしたい、という想いがあり、自宅でおやつ教室を始めました。日常生活の中で管理栄養士に出会える機会は少ないと思います。『おいしくて、一人一人の身体にとって優しい食を通して、笑顔の連鎖が続きますように』という願いを込めて、「人と食と笑顔をつむぐ おやつ教室tsumugi」と名付けました。

私が考えた教室のメニューの中には、食物繊維が豊富で糖質オフのおやつや野菜を使ったおやつがあります。特に、生おからを使ったおやつは人気で、受講された方からは、

「他にないから嬉しい」
「何回も作りました」
「家族にも好評です」

というお言葉を頂いております。また、レッスンの中にも次のような食事の相談を受けることがあります。

「食材の新しい使い方を知ることができました」
「心が軽くなりました」

と言われたときに、嬉しく思うと同時に、もっとたくさんの人の不安を消したいとおもいました。

「病院に行くほどではないけれど、不安だ」
「親戚が糖尿病だから話を聞いてもらいたい」

といった気持ちをお持ちの方と関わり、病気の予防と食生活の安心を増やしたいです。

私の夢は、自分で考えたおからのおやつやエネルギー強化されているおやつを日本中に広め、塾で遅くなるお子様や夜遅くまで働かれている方、一度に多くの食事量を摂ることができない高齢者の方などの幅広い世代の方へ安心を届けたいです。

管理栄養士・栄養士になる前のイメージと、なった後の感想などはありますか?

管理栄養士は食事だけのことだけでなく、なんの為にどんな検査をするのか、治療にかかる費用はいくらか、市によってどんな補助金や制度があるのかといった知識も必要になってくると気づきました。
治療は患者さんの生活の一部であり、患者さん自身の生活を想像しながら食事指導をする必要があり、一人暮らしなのか、どなたが食事の準備をしているのか等の食生活環境も知ることで、一人一人にあった食事指導ができると学びました。

やりがいを感じるのはどんな時ですか?

「患者さんと一緒に作戦会議をする」という姿勢を買われて、「やる気がでたよ。長年通っているけれど、今日初めてこんなに相談できた」、「次回もまたあなたがお話してくれる?」といったお言葉をいただくことができました。経過を見ていく中でも、「前回言われたことを試してみたよ」、「次はこの野菜を使ったおいしい料理ないかな?」と新たな関心を持っていただき、結果として検査数値の改善にも貢献できたことです。

将来の目標は何ですか?

「食事」は生きていく楽しみの上で、非常に大きいウエイトを占めると思います。各年代で食生活と疾患の問題糖尿病の分野の知識を深め続けることに加え、教室を始めてから新たに、食育やスポーツ栄養の分野、心理学も学んでいきたいと思いました。「病院にいく必要がない時にも話してみよう!」と気軽に会えて、心も元気にできる管理栄養士になることが目標です。楽しい人生が送れるような未来の話を一緒にしていきたいです。
ちなみに、休日のリフレッシュ方法は、おやつ教室でお伝えする新メニューの開発をすることです。何度も試作をして、完成したときの喜びはとても大きいです。昔からお世話になっている習字教室の先生のお手伝いをすることもあり、充実しています。また、最近は両親も誘って運動するようになりました。

管理栄養士・栄養士を目指す人に向けて一言

食べ物は人のいのちを作っています。その食を通じて人を笑顔にすることができる喜びはこの上ないです。仕事にも家庭にも知識を活かせることができます。勉強を続ける事は必要であり、管理栄養士として働き始めると、毎日新しい学びに出会えるので楽しいです。

今の管理栄養士・栄養士業界の全体を通してなにか感じることがあれば教えてください

健康な生活をするために、食事は重要であると思います。しかし、病院や福祉施設によっては配属されている管理栄養士の数が少なかったり、食事療法に力をいれることができない状況であったりする場所もあります。

科学的根拠があり、長続きする食事療法の有効性が広めるためには十分な数の管理栄養士が配属される必要があるかもしれませんが、その為には各管理栄養士が責任をもって食事療法の必要性を発信していかなくてはいけないと思います。

 

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みんなのコメント( 1

    • Eatreat 編集部
      1903日前

      Eatreat編集部です。本日は、自宅でその人にあったおやつが作れる教室を開催している管理栄養士の鈴木菜美さんへのインタビューです。

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