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- 歯科と栄養
- 2021.05.27
フレイル予防は口から!「オーラルフレイル」の重要性④
口腔機能について理解を深めることで、より相手に寄り添った栄養指導が実現できます。連載の最後は、口腔機能の評価方法を知り、歯科と連携したオーラルフレイル予防への介入を考えます。
歯科医院で診断するオーラルフレイル「口腔機能低下症」
「噛めない」「食べられない」などの訴えがある場合、個別性の高い口腔機能の状況を診断してもらうことができる歯科医院へつなぐことが有効です。
2018年、オーラルフレイル対策に関する国の動きとして「口腔機能低下症」が、歯科医療保険病名に加わりました。それまで歯科医院では、「咀嚼」や「発音」など機能別に対応していましたが、保険病名に加わったことにより、総合的な口腔機能の低下を医療的に管理できるようになりました。
口腔機能低下症はオーラルフレイルの第3レベルに相当します。口腔機能の低下から低栄養が表出することも多いため、歯科医院でも管理栄養士との連携の機運は高まっています。口腔機能低下症のレベルでは、Body Mass Index(BMI)や体重減少などを把握することが重要とされ、食事指導や栄養指導なども口腔機能管理に含まれています。調理の工夫や、栄養補助食品の活用などの指導に対する管理栄養士の専門性が期待されています。
歯科医院以外の現場でも実施できる口腔機能評価
歯科の専門家がいなくても、口腔内を評価できるアセスメントツールが開発されています。介護施設での口腔内評価を目的に作られた「ORAL HEALTH ASSESSMENT TOOL :OHAT (オーハット)」は、口腔汚染や機能低下に注目した評価項目となっています。
評価項目は、①口唇、②歯肉・粘膜、③舌、④清掃状態、⑤歯(う蝕)、⑥義歯、⑦歯痛です。3段階の簡便な評価で、歯科の専門知識がない人でもスクリーニングできる内容になっています。OHATを実施することにより
▽口腔清掃状態を定量的に評価できる
▽ケアの介入頻度と方法を決める基準になる
▽医科歯科連携につなげられる
▽歯科対応が必要な症例を抽出できる
といったメリットがあり、導入する医療現場も増えているようです。
歯が残っていても上下が互いに噛み合っていない、歯がぐらついている、痛みがあるなど、さまざまな要因で「噛めない状況」は作られます。専門職が口腔内の視点をもつきっかけとしても、こうしたツールは有用です。
歯科での栄養介入の可能性
ある研究では、歯の喪失後、咀嚼機能を義歯(入れ歯)などで補い回復させる補綴(ほてつ)治療をした後、食生活指導を行わなければそれまでの食生活と変わらないが、管理栄養士の指導が入ると食品摂取がより健康的な内容に変化することが報告されています。オーラルフレイルの入り口の予防的な段階において栄養と歯科が連携することで、その先の健康維持にも貢献できる可能性があります。
近年では歯科医院に雇用される管理栄養士は増えており、全身的な視点をもった歯科医療の実践も進んでいます。オーラルフレイルについても、第1~2レベルへの介入は行政事業にとどまらず、予防についてのポテンシャルを秘めた歯科医院を含め、地域のさまざまな現場で実践が進むと考えられます。
「食べること」から地域の連携を生み出すキーパーソンに
管理栄養士が歯や口の機能について理解を深め、「口から食べる」という状況に一歩踏み込めるようになることで、「食べることを生涯楽しみたい」と思っている人のよき理解者として、寄り添った栄養指導が実現できます。
現在の医療・介護の方向性として、物事を一つの場所で完結させるのではなく、地域で連携した継続的なサポート体制が評価されています。その中で管理栄養士は、地域活動から医療現場まで幅広い職域に活動の場があるという特性があり、連携すれば地域の輪を大きく広げるキーパーソンになり得ます。口腔機能を含めた全身を見る視点を備え、「オーラルフレイル」のような共通テーマのもと連携できる管理栄養士は、地域の輪のなかで人々の健康を支える大きな存在となっていくのではないでしょうか。
参考文献
・深井護博:「健康長寿のための口腔保健と栄養をむすぶエビデンスブック」、医歯薬出版、(2019)
・藤田医科大学医学部歯科口腔外科学講座歯科部門:「プロジェクト JST戦略的国際共同研究プログラム」、藤田医科大学、http://dentistryfujita-hu.jp/research/project.html(閲覧日:2021年3月10日)
・日本歯科医師会:「歯科診療所におけるオーラルフレイル対応マニュアル2019 年版」、日本歯科医師会HP、https://www.jda.or.jp/dentist/oral_flail/pdf/manual_sec_01.pdf(閲覧日:2021年3月10日)
・日本歯科医師会:「通いの場で活かすオーラルフレイル対応マニュアル ~高齢者の保健事業と介護予防の一体的実施に向けて~《2020年版》」、日本歯科医師会HP、https://www.jda.or.jp/oral_flail/2020/pdf/2020-manual-all.pdf(閲覧日:2021年3月10日)
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みんなのコメント( 1 )
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- Eatreat 編集部
- 1274日前
オーラルフレイルと栄養の連載最終回は、口腔機能の評価方法を知り、歯科と連携したオーラルフレイル予防への介入を考えていきます。
"オーラルフレイルと栄養"のバックナンバー
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WRITER
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道盛 法子
予防歯科で働く管理栄養士です。 新卒で3年ほど出版社で編集・記者として勤務し、その後予防の活動に現場で関わりたいとの思いから転職しました。歯科は、すべてのライフステージに関わることができ、食を切り口にした予防活動にも最適な場だと感じています。 管理栄養士の視点で歯や口のあれこれをお伝えできればと思います!
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