オーラルフレイルの予防には、口腔機能の「ささいな衰え」の段階から介入することが重要です。
オーラルフレイルの初期症状において、食べることに影響する「歯や口の視点」をチェックするためのポイントをお伝えします。
軽微な変化を軽視しない
オーラルフレイルの考え方では、医療的な介入が必要になる以前の“軽微な変化”の段階を軽視しないことに重点が置かれています。オーラルフレイルの過程で言えば、「第2レベル:口のささいなトラブル」以前の段階が、オーラルフレイルの概念上、最も重要な啓発レベルと言えます。
オーラルフレイルの初期症状のチェック項目は、以下の通りです。
□むせる・食べこぼす
□食欲がない、少ししか食べられない
□やわらかいものばかり食べる
□滑舌が悪い、舌が回らない
□口が乾く、ニオイが気になる
□自分の歯が少ない、あごの力が弱い
これらの項目に当てはまるものがあればオーラルフレイルに該当します。
見過ごされがちな「歯や口の問題」
少し前までは普通に食べていた人が、このチェックによりオーラルフレイルに該当する状態になったのは、何が原因なのでしょうか。疾患の後遺症など原因が明らかな場合もありますが、「ささいな衰え」は見過ごされがちです。本人や家族もその原因をつかめていないことがあり、そこには大抵歯や咀嚼の問題があります。栄養の問題に介入したくても、背景に歯や咀嚼の問題があると、その解決なしに栄養の問題を克服するのは困難です。
できれば口の中を覗いてみる
指導やカウンセリングの場でオーラルフレイルのリスクを拾ったら、栄養摂取に影響する歯や口の問題を確認しましょう。チェック項目のうち、「やわらかいものばかり食べる」「滑舌が悪い、舌が回らない」「歯が少ない、あごの力が弱い」の項目は、歯や口の問題に直結しています。
まずは、①歯があるか、②義歯(入れ歯)を入れている場合はその具合、③その他「噛みにくい」状況がないか、を質問するだけでもいいのですが、もしできるなら、口腔内を直接見せてもらうことがおすすめです。
例えば、舌に舌苔が付いているのを見て、舌の動きの低下や、唾液分泌の低下に気付けるかもしれません。また、口の中を見ると奥歯を確認できます。食べ物をすりつぶすのに必要なのは前歯ではなく奥歯です。噛み合う箇所の奥歯が上下でそろっていなければ、ほぼすりつぶして食べていないことがわかります。
噛めない状態でも食べやすいものを提案することも大切ですが、噛めるようになれば摂取できる食品の幅を広げられます。歯科を受診して、噛めるようにしてもらうよう促しましょう。ちなみに、“歯があるのに噛めない”場合も、まず相談する先は歯科で問題ありません。
噛めないことは放置せず早めの解決を
噛みにくい状況は「唾液の分泌減少」、「口の周りの筋力低下」、「食塊形成力の低下」を引き起こし、それによりチェック項目にある「むせる・食べこぼす」「口が渇く」といった状況が起こることがあります。「食欲がない」のチェックからは食事に対する関心の低下が伺えますが、歯や口の問題による“食べにくさ”が「食欲がない」の間接的な原因になっている場合もあるなど、チェックのついた項目がどのように影響しあっているかはさまざまです。
前回の記事で紹介した「OHAT(オーハット)」のように、専門的な知識がなくても使えるアセスメントツールを活用するのも、状況の理解に役立つかもしれません。オーラルフレイルの初期に関わる場合には、歯や口の状況にもぜひ注意を向けてみてください。
参考文献
・深井護博:「健康長寿のための口腔保健と栄養をむすぶエビデンスブック」、医歯薬出版、(2019)
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