• COLUMN

top

2022年に厚生労働省から公表された日本人の平均寿命は男性81.05歳、女性87.09歳と、世界でも男性4位、女性1位の長寿国です。近年のメキシコにおける和食・日本食ブームは、日本人の長寿、肥満率の低さ、そして日本人女性の肌の美しさも人気の秘密のようです。

街のローカルな路面店でも、アジア人アイドルのポスターやプロマイドなどが販売されている。

肥満や生活習慣病が大きな課題

2024年2月に医学雑誌ランセットに「世界の肥満者が10億人を超えた」という主旨の論文が発表されましたが、メキシコでも肥満は大きな社会問題になっています。日本の国民健康栄養調査に該当するENSANUTの2018年の調査で20歳以上のメキシコ国民の75.2%が過体重(BMI25~29.9:39.1%、BMI30以上:36.1%)、そして0~4歳の22.2%、5~11歳の35.6%に太り過ぎのリスクがあると公表しています。2019年のメキシコ人の主な死因は心臓病、糖尿病、悪性腫瘍など肥満に関連する疾患が多く、2020~2021年Covid-19のパンデミックで亡くなった62万6000人の方々は、高血圧や糖尿病、肥満症を発症していた割合が高かったようです。

和食と日本食の違い

「多様で新鮮な食材の活用」「一汁三菜を基本とする健康的な栄養バランス」を特徴とする和食は2013年にユネスコ無形文化遺産に登録され、世界的に価値が認められました。そしてパンデミック以降、健康を意識するメキシコ人、メキシコ人栄養士からも高い評価を得ています。しかし伝統的な和食と混同されがちなカレー・ラーメン・お好み焼き・天ぷらなどを含む「日本食」は、メキシコ人の嗜好に合うようにアレンジされて大衆化し、健康的なイメージからかけ離れた食事が提供されていることも少なくありません。そのような中でも、白飯と味噌汁を基本とした定食を手ごろな価格で提供している和定食屋もいくつかあり、どのお店も昼食の時間帯には行列ができるほどの人気です。

50年以上メキシコシティに在住し、ケータリング食及び和食店のオーナーシェフ九本和さんが経営する「Kazu’s kitchen」は、体形を気にする女性の食事会にも人気が高い。
「和食のファーストフード」をコンセプトにする「Shoya」さんでは、健康的な和定食の他、丼物やうどん、お弁当などを提供しています。ランチタイムにはいつも近隣のオフィスで働く人々で賑わっています。

世界的な発酵食品ブームも日本食人気を後押し

刺身や寿司、そば・うどんなど和食・日本食に欠かせない醤油は、和食・日本食を提供するレストランのテーブルにも必ず用意されています。また、日本食材店だけでなく、一般のスーパーのアジア食材コーナーでも販売されており、メキシコでの需要の高さがうかがえます。そして、以前は「Sopa de miso(味噌スープ)」と呼ばれていた味噌汁も、最近は「Miso‐shiru」と日本語のローマ字表記を見かける機会も増えてきました。
近年、健康維持には腸内環境の整備が欠かせないことが明らかになり、世界中で発酵食品が注目されていることも追い風になっていて、味噌は健康意識の高い人々が手作りする食品のひとつになっていると見聞きします。和食・日本食の調味料として欠かせない麹菌による発酵調味料や納豆や甘酒などの発酵食品は、パンデミックを経験した人々が自身の免疫強化を意識するうえでも魅力的に映るようです。

一般スーパーのアジア食材コーナーには醤油・豆腐・緑茶・海苔・パックご飯などの和食材の他、中華、タイ、ベトナムなどの食材が陳列されている。
年々スペースは拡大している。

日本食材の海外進出

国内需要が伸び悩む「醤油」「味噌」の輸出量を「農林水産物・食品の輸出」に関する統計資料で2012年と2021年を比較すると、醤油は19,822→48,090トン、味噌は10,083→19,654トンと大幅に拡大しています。
また、2023年3月16日(日本時間3月17日)からは、日本米のメキシコへの輸出が解禁になりました。提供する米飯を全て日本米にするレストランも増えています。私もすっかりカリフォルニア米に慣れていましたが、やはり日本米は格別です。銀シャリのおいしさも後押しする、メキシコにおける和食・日本食の今後の展開がますます楽しみです。

参考文献
・令和4年簡易生命表の概況「3.平均寿命の国際比較」厚生労働省、https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/life/life22/index.html
・農林水産物・食品の輸出に関する統計情報「2021年 農林水産物・食品の輸出実績」 、 農林水産省 、https://www.maff.go.jp/j/shokusan/export/e_info/zisseki.html
・『「2021年の農林水産物・食品の輸出実績」について」、農林水産省、https://www.maff.go.jp/j/press/yusyutu_kokusai/kikaku/220204.html
・「WHO 肥満と過体重」、Obesity and overweight (who.int)
・「Covid19情報 メキシコ政府、Informe-Integral_COVID-19_12ene22.pdf (coronavirus.gob.mx)
・「肥満・過体重 肥満を避けて寿命を延ばす メキシコ政府」、Obesidad y sobrepeso. Menos kilos, más vida | Procuraduría Federal del Consumidor | Gobierno | gob.mx (www.gob.mx)"Obesidad y sobrepeso. Menos kilos, más vida | Procuraduría Federal del Consumidor | Gobierno | gob.mx (www.gob.mx)




関連コラム
お寿司の新エリア ~ロール寿司~
メキシコの肥満対策



コメントを送ろう!

「コメント」は会員登録した方のみ可能です。

みんなのコメント( 1

    • Eatreat 編集部
    • Eatreat 編集部
      15日前

      メキシコ在住の管理栄養士 宮内千奈美さんにメキシコから見る和食についてを教えていただきます。

      拍手 0

"海外から見る日本食"のバックナンバー

もっと見る

WRITER

健康食のイメージが強い和食

宮内 千奈美

2004年-2006年まで中米ホンジュラスで栄養士隊員として活動し、日本では主に病院を中心に臨床栄養に携わってきました。 現在はメキシコシティの恵光日本文化館(恵光寺)に勤務しながら、心も身体も健やかに保てるような食と栄養に関わる情報発信を継続しています。

宮内 千奈美さんのコラム一覧

関連タグ

関連コラム

"栄養の知識・食育"に関するコラム

もっと見る

ログインまたは会員登録が必要です

会員登録がお済みの方

ログイン

まだ会員登録をされていない方

新規会員登録

ページの先頭へ