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メキシコ料理=「辛い」という印象を持たれている方も多いのではないでしょうか。
今回は、とうもろこし、豆と並ぶメキシコ3大食材の一つ「唐辛子」を、生と乾燥、燻製の違いに分けて前後編でご紹介していきます。同じ唐辛子でも生と乾燥では呼び名も用途も違い、とても興味深いのでぜひお楽しみください。

メキシコの食文化に根付いてきた唐辛子

唐辛子の原種は、紀元前7000年頃からメキシコや南米の先住民族の食事に取り入れられていたといわれています。現在メキシコには生の唐辛子が約68種類、乾燥や燻製を合わせると約145種類もの唐辛子が普及しています。
“Si no pica,no sabe”(辛くなければ味がないのと同じ)
“Si no pica,no es salsa”(辛くなければサルサとは言えない)
と言われるほど唐辛子はメキシコ料理に必須な食材で、日本の約5倍の面積を持つメキシコでは、地域によって使われる種類も調理法も大きく異なります。

メキシコ国旗とメキシコ料理、唐辛子の関係

メキシコの国旗は、中央に鷲(ワシ)の紋章を置いた緑・白・赤の3色で構成されています。緑は「希望」、白は「国民の団結の象徴」、赤は「独立戦争で戦った英雄たちが流した血」を表しており、1821年9月16日に独立戦争を経てスペインから独立したメキシコにとって重要な国の象徴です。
メキシコ料理は「Salsa verde(サルサ・ベルデ)=緑色のソース」と「Salsa rojo(サルサ・ロホ)=赤色のソース」のどちらかを使い、料理の仕上げに千切りの玉ねぎや「crema(クレマ)=白いサワークリーム」と「queso fresco(ケソフレスコ)=フレッシュチーズ」をかけ、国旗の3色を表すスタイルが一般的です。メキシコ人としての誇りが、料理を通じて日常生活に浸透していると感じます。

首都メキシコシティのPlaza de la Constitución(コンスティトゥシオン広場)の中央に掲揚されるメキシコ国旗。200㎏を超える国旗は、毎日8:00に掲揚、17:00に降下されます

緑と赤色の唐辛子の使い分け

サルサ・ベルデ(緑色のソース)には緑色のトマトと緑色の唐辛子、サルサ・ロホ(赤色のソース)には赤いトマトと赤い唐辛子が使われます。好む辛さのレベルによって唐辛子の量を加減しながら、メキシコシティでは辛みの強いChile Árbol(チレ・アルボル)、中くらいのChile serrano(チレ・セラーノ)、マイルドなChile jalapeño(チレ・ハラペーニョ)の3種類の唐辛子が主に使われています。Tamales(タマレス)、Chilaquiles(チラキレス)、Enchilada(エンチラーダ)などの一般的なメキシコ料理は、どの店舗でも緑と赤2種類のサルサが準備され、好みで選ぶことができます。ちなみに著者は酸味が強く、ピリ辛のサルサ・ベルデが大好物です。

左から、Chile poblano (チレ・ポブラノ), Chile árbol(チレ・アルボル) , Chile jalapeño(チレ・ハラペーニョ) , Chile serrano(チレ・セラーノ)

日本で一番有名な激辛唐辛子

メキシコ料理に興味がなくても、Habanero(ハバネロ)=「激辛」を連想する方が多いのではないでしょうか。ハバネロはメキシコで最も辛い唐辛子の一つで、もともとはユカタン半島の伝統的な豚肉料理Cochinita Pibil(コチニータ・ピビル)や、マンゴー・パイナップル・タマリンドなどの果物とあわせた手羽先唐揚げのソースの材料として少量使われる食材でした。しかし、最近は千切りにして玉ねぎときゅうりのサラダに混ぜたり、ひき肉やチーズを詰めておつまみにしたり、丸のまま調理することも増えているそうで…想像しただけで汗が出ます。

Chile habanero(チレ・ハバネロ)
見た目は可愛いですが、辛みが不可欠なメキシコ料理でさえあまり一般的には使われないほど激辛唐辛子です。

全く辛みのない唐辛子

メキシコでは、ほとんど辛みがなくピーマンの2倍くらいの長さがある唐辛子Chile poblano(チレ・ポブラーノ)も日常食や行事食で広く使われています。皮が固いため真っ黒になるまで直火で焼き、皮をむいてから半分にカットしたものにチーズやひき肉などを詰めて揚げたり焼いたりしたChiles rellenos(チレス・レジェノス)や、以前同コラム内でご紹介した独立記念日の行事食” Chile en nogada(チレ・エン・ノガダ)” の材料としても欠かせません。
また、日本でもお馴染みのパプリカChile morron(チレ・モロン)も全く辛みのない唐辛子で、抗酸化作用のあるビタミンA・C・Eを十分とれるよう品種改良されたものです。パプリカはメキシコでも人気があります。

Chile poblano relleno(チレ・ポブラノ・レジェノ)殆ど辛みのないチレ・ポブラノにチーズを詰めて焼いた料理。下にサルサ・ベルデが敷いてあります。

後編は乾燥や燻製唐辛子を中心にご紹介します。

 

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日本とメキシコの主食の違い①

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みんなのコメント( 1

    • Eatreat 編集部
    • Eatreat 編集部
      500日前

      メキシコ在住の管理栄養士 宮内千奈美さんにメキシコの食材をご紹介していただくシリーズコラムです。最初にご紹介いただくのは「唐辛子」、メキシコではかなりたくさんの種類の唐辛子が使われているようです!

      拍手 3

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WRITER

メキシコの食材紹介~唐辛子~ 前編

宮内 千奈美

2004年-2006年まで中米ホンジュラスで栄養士隊員として活動し、日本では主に病院を中心に臨床栄養に携わってきました。 現在はメキシコシティの恵光日本文化館(恵光寺)に勤務しながら、心も身体も健やかに保てるような食と栄養に関わる情報発信を継続しています。

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