今回は、メキシコの大きな課題の一つである国民の「肥満」に対するメキシコ政府の政策について3回に分けて書いていきます。私は2014年からメキシコシティで生活を始め、今年で9年目に入りました。まだきちんと理解できていない部分も多いと思いますが、日本とはひと味違った政策は興味深いので、紹介させていただきます。
メキシコ人の肥満率
2018年に公表された5万人を対象にした国家公衆衛生研究所(INSP)の調査では、BMI25~30の年代別の割合は、「0~4歳:8.4%」「5~11歳:18.4%(5歳:2.65%、11歳:9.4%)」「12~19歳:24.7%(14歳:7.79%、17歳:9.21%)」「20歳以上:約40%」でした。また、BMI30以上の割合は「12~19歳:21%」「20歳以上:35%(27.65%)」でした。
(()内の数値:5-17歳は文部科学省「学校保健統計調査」、20歳以上は国民健康栄養調査からのデータ。どちらも2019年公表。)
メキシコは国民の平均年齢が29歳で、日本の48.4歳と比較するととても若者の割合が多い国です。そのためか、子どもや若年層の肥満が大きな社会問題になっています。
メキシコの素晴らしく多彩な食文化
メキシコ料理と言えば「Tacos(タコス)」をイメージする方が多いかもしれませんが、実は2010年にユネスコの無形文化遺産に登録されたほど、メキシコは伝統的に優れた食文化がある国です。とうもろこしが原料のトルティーヤを主食とし、唐辛子・豆・野菜・種実類・ハーブを「Salsa(サルサ)」と呼ばれる赤と緑のトマトベースのソースや、「Mole(モレ)」と呼ばれるカカオをベースにした濃厚なソースと組合わせたり、多種類の唐辛子を生と乾燥で使い分け、スープやソース、ピクルスなどに活用したりしています。伝統的なメキシコ料理は渡墨※前のイメージが大きく覆えされるほど豊かな大地で育まれた食材を活用した、健康的で美しく、奥の深い料理だと日々認識を改めています。
渡墨※:メキシコに渡ること
メキシコ都市部のサラリーマンのランチ事情
しかし、日本のサラリーマン同様、働くメキシカンも「安い」「早い」「旨い」立ち食いそばならぬ、立ち食い「Tacos(タコス)」や「Torta(トルタ)」(メキシコ流サンドイッチ)で手早く、低コストでランチを済ませる人が主流のようです。メキシコのランチタイムに当たる14:00~16:00には、路上の屋台にスーツ姿の人々が集っている光景をよく見かけます。
2019年、肥満の大きな要因となりうる砂糖入り炭酸飲料の消費量が、アメリカを抜いてメキシコが世界一位になりました。スペイン語でComida chatarra(コミダチャタラ)と呼ばれるジャンクフードと相性抜群であることも消費量を伸ばす大きな要因になっていると思います。
家庭に持ち込まれる超加工食品
砂糖入り炭酸飲料は立ち食いタコス屋に留まらず、家庭にも容赦なく持ち込まれます。スーパーで見かけるメキシコ人家庭の買い物カートには、日本では見たこともない巨大なペットボトルに入りのジュースが山積みで入っていることも珍しくなく、パーティー好きの家庭に招待されると欠かさず提供されます。子どもの肥満が社会問題になっているメキシコでは、子どもが触れる機会の多い超加工食品と呼ばれる食品に対し、厳しい規制が始まっています。次回から実際に実施されている、具体的な政策をご紹介していきます。
※コラムのTOP画像は、タコスの路面店の風景です。路面店では立ち食いスタイルが多いです。
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