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2020年7月1日からレジ袋が有料化されました。
これに合わせてエコバックを使い始めたという方も多いのではないでしょうか。

このレジ袋有料化の流れは「海洋プラスチック問題」を解決するために、海外から始まりました。世界でもっとも早く取り組みを始めたところは、ハワイのマウイ島で、2008年からレジ袋や野菜を包むビニールが禁止されました。そこから徐々に他の島でも取り組みが始まり、2015年にはハワイの全島でレジ袋や野菜を包むビニールが禁止となりました。

もともとごみ処理の問題を抱えていた上、プラスチックごみが流れついたり、ウミガメがビニール袋を飲み込んでしまったりする事故など、禁止にいたるにはさまざまな理由があったようです。

前回のコラムではパーム油を例に、SDGsの「つくる責任 つかう責任」を説明しましたが、この考え方は海洋プラスチック問題にも共通します。身の回りにあるプラスチックごみを思い浮かべながら、コラムを読んでいただければ幸いです。

魚よりもプラスチックが多くなる?

2008年から取り組みが始まった「海洋プラスチック問題」ですが、現在、海に存在するプラスチックごみはどのくらいあるのでしょうか?

現在海に存在しているプラスチックごみは1億5000万トンと言われています。これは電車の車両 約400万両以上の重さに相当します。そこに年間800万トン、ジャンボジェット機約5万機分のプラスチックごみが、毎年新たに廃棄されていると試算されています。スケールの大きさに驚愕する一方、海の偉大さをあらためて感じました。

しかし、このままのペースでプラスチックごみが増えていくと、2050年には海に生息する生物と、ごみの量が等しくなってしまう懸念があります。では、廃棄されているプラスチックごみは、何が一番多いのでしょうか。大阪湾で行われた調査をみると、食品トレー、ペットボトル、レジ袋が約3割を占めていました。その他プラスチックが何であるのかはわかりませんが、身近なものが何らかの原因で海に流れ出ているということはわかります。

漂流ごみの種類別割合(1平方キロメートルあたりの人工物の個数)(平成27年度 環境省調査より作成)
(引用元:大阪府 海ゴミ対策)

海に流れ出たごみは、いずれ食卓へ。

海洋プラスチックが増えることによる問題をみてみましょう。 海の生物が、海洋プラスチックを誤って食べて死んでしまうこともありますが、ヒトに直接関係のあることとしては、紫外線や摩擦により海洋プラスチックがマイクロプラスチック(5mm以下)となり、食物連鎖による濃縮が進んで、最終的にはヒトが摂取してしまうことが挙げられます。

マイクロプラスチック自体は、摂取しても問題がないとされていますが、海に漂うと有害物質やウイルスを吸着しやすいという特性がわかってきているため、できることならカラダには入れたくありませんよね。

これは私の見解ですが、海にごみが増え過ぎると漁にも影響が出てくると思います。 海にごみが増えると、網にゴミがかかる確率が上がり、相対的に網にかかる魚の量が減り、漁の効率が落ちてしまいます。その結果、ひと網当たりの漁獲高が減り、魚介類の値段が上がる可能性もあるのではないでしょうか。もしかすると、海洋プラスチック問題の影響は、すぐそこまで近づいてきているのかも知れません。

ポイ捨てをやめるところから始めよう

昨今、世界中で脱プラスチックの動きが盛んになり、日本においても各企業がさまざまな対応をしています。国をあげたレジ袋の有料化もその一端かと思います。プラスチック製品を作らない、使わないことは確かに解決策の一つですが、本質の改善にはならないのではないでしょうか。

そもそもなぜ、プラスチックごみは海へ流れ出ているのでしょうか?本来、ごみ処理所へ行くべきごみが、海へ流れ出ているということは、正しく処理されていないことの証明です。すると、この問題の本質は「ごみのポイ捨てをしない」ということではないのでしょうか。

「プラスチック商品がなければ、プラスチックゴミは出ないのではないか。」という話もありますが、そもそもプラスチック製品は正しく使い、正しく処理できれば再利用もできるため、本来は非常に便利なものです。そしてプラスチックごみだけでなく、いかなるゴミも海へ流れ出てよいものではありません。

脱プラは3R(リデュース、リユース、リサイクル)のリデュース※に当たります。(※廃棄物をなるべく出さないこと) 今まで注目されていたリサイクルは、手間や費用がかかることから、日本ではプラ製品を新たなプラ製品に作り変えるマテリアルリサイクル率は低くなっています。世界的にも、リサイクルよりリデュースにシフトしていますが、それでも日常生活でプラスチックごみをゼロにすることは現実的ではありません。だからこそSDGsの「つくる責任 つかう責任」が試されているのです。まずは個人がポイ捨てをせず、正しくごみを処理するところから始めていきましょう。

世界的な海洋プラスチック問題は、中国やインドネシアなど、プラスチックごみの発生量が上位の国の協力がなくては解決しないと思います。しかし、日本の海岸に着くゴミを見ると、日本からも多くのゴミが捨てられていることがわかります。

(引用:環境省 平成29年度海洋ごみ調査の結果について 漂流ごみのモニタリング調査)

日本でも花見やBBQ、ハロウィンなどイベントがあるたびに、ゴミ捨てのモラルが問われています。大げさな話かもしれませんが、ポイ捨てしたゴミを何年か先に自分が食べることになるかもしれません。前回からのコラムを通して「つくる責任 つかう責任」の意味を少しでも知っていただけましたか。普段買っている商品の原料や包装素材を知り、責任をもって正しく処理することの必要性を感じていただければ幸いです。

参考文献
経済産業省
https://www.meti.go.jp/policy/recycle/plasticbag/plasticbag_top.html
TABILABO
https://tabi-labo.com/152444/nobagshawaii
LaniLani
https://www.lanilanihawaii.com/column/sharing-my-hawaii/ecobag.html
WWF 海洋プラスチック問題について
https://www.wwf.or.jp/activities/basicinfo/3776.html
環境省 平成29年度海洋ごみ調査の結果について
https://www.env.go.jp/press/H29%20MarineLitterSurveyResults_1.pdf
朝日新聞デジタル
https://www.asahi.com/articles/ASM2100N3M10ULBJ029.html
大阪府 海ゴミ対策
http://www.pref.osaka.lg.jp/kankyohozen/osaka-wan/umigomi.html
3R推進協議会
https://www.3r-suishinkyogikai.jp/

 

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みんなのコメント( 2

    • Eatreat 編集部
    • Eatreat 編集部
      1602日前

      Eatreat編集部です。今回は、海洋プラスチック問題についてイートリスタの沢目さんが解説しています。海に存在するプラスチックごみの多さに驚き、自分の行動を改めて考えさせられます。

      拍手 3

WRITER

海洋プラスチック問題について知ろう。つくる責任 つかう責任 part2

沢目 晃誠

ロカボ(適正糖質)に関する情報はこちらから ・サラヤ公式HP(https://www.saraya.com/) ・ラカント公式HP(https://www.lakanto.jp/) ・ロカボスタイル公式HP(https://www.locabostyle.jp/)

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