COLUMN

慢性疾患を有する方への運動処方の知識は、保健指導でも役立ちます。しかし、運動は健診の数値改善に効果的な一方で、数値や身体の状態によっては注意が必要です。今回は、疾患別の運動での注意事項や、効果的な運動方法についてご紹介します。

身体活動の目安

基本的な身体活動の目安は、成人または高齢者の推奨事項を活用できます。
1日30分以上の中強度(楽である〜ややきついと感じる程度)の身体活動と、それ以外の生活活動を30分行うことで、成人の推奨値である1日60分(約8,000歩)に相当します。
ただし、基礎疾患をお持ちの方は、その方の健康状態、身体活動状況や体力レベルに合わせた運動を行います。新たに運動を開始するときには、疾病の状況や、運動を開始しても問題がないかどうかも判断する必要があります。

運動を開始する時の確認事項

強度の高い運動を行ったり、普段の身体活動量が少ない人が急に運動を始めた時に、有害事象発生のリスクが高くなりますので、特に注意が必要です。

運動を始める際には、以下の点について確認しておきます。

・疾病の有無や状態
・通院時の場合、活動量や運動への指示がないかどうか
・対象者がどんな運動を行いたいのか
・普段の身体活動量

必要に応じて医療機関を受診していただくなど、運動前に確認をして安心・安全に運動が進められるようにしておきます。

高血圧に対する運動処方

運動は、高血圧の改善に強いエビデンスがあります。ただし、血圧は運動することで上昇するため、注意が必要です。

・注意事項
毎回の運動前には、体調確認とともに血圧計測・記録を習慣化してもらいます。
血圧が180/110mmHg(家庭血圧160/100mmHg) 以上の場合は、新たに運動を始める前に医療機関への受診を勧めてください。

・運動の頻度や強度など
基本的な身体活動量も目安を活用します。
高血圧がある場合、運動による急性効果の持続時間はほぼ1日です。そのため、なるべく毎日身体を動かすことがおすすめです。強度は普段の生活レベルから開始します。

2型糖尿病に対する運動処方

血糖値のコントロールのためには、運動の頻度やタイミングも重要です。

・注意事項
服薬中の方の中には、空腹時に運動を行うと低血糖を起こす場合があるため、必ず主治医への確認を促しましょう。

・運動強度
運動の取り入れ始めは、自覚強度として「楽である」から「やや楽である」程度で行います。運動に慣れてきたら、自覚強度で「ややきつい」程度まで上げるかどうか、対象者の状態を見ながら検討していきます。
レジスタンス運動においては、強度が高いほうがHbA1cの改善効果が高いことが示されていますが、個人のレベルに合わせた強度で行います。

・有酸素運動
有酸素運動により、インスリン抵抗性の改善が期待できます。食後の運動実施は、食後高血糖の改善が期待できます。

実施頻度は、運動を行わない日が2日以上続かないようにして、週3回以上行うことです。食後に運動することで、食後高血糖の改善が期待できます。

・レジスタンス運動
骨格筋量や筋力を増加させるとともに、糖の取り込みの促進、インスリン抵抗性の改善から、血糖値の上昇を抑えます。

頻度は連続しない日程で週2〜3回で、上半身・下半身を含んだ5種類以上の運動を行うことが推奨されています。強度は、10〜15回繰り返せる負荷もしくはごく軽い負荷から開始します。

脂質異常症に対する運動処方

脂質異常症では、成人における運動療法で効果が示されています。

・注意事項
高リスク者での突然死や心血管事故のリスクがあるため、必要に応じて医療機関への受診や主治医への確認を行い、安心・安全に運動を行いましょう。

・運動の効果
有酸素運動は、リスク保有者だけでなく健常者でも総コレステロール、中性脂肪の低下させ、HDLコレステロールの上昇させ、血中脂質の改善が示されています。
レジスタンス運動による脂質異常症の改善効果は不明瞭ですが、筋力向上や糖尿病患者の血糖改善効果などQOL向上への期待から、禁忌出ない場合は推奨されています。

・運動の種類と強度
有酸素運動の例としては、ウォーキング、速歩、水泳、エアロビクスダンス、スロージョギング、サイクリング、ベンチステップ運動などがあります。
強度は中程度の通常速度のウォーキングに相当する強度で、「楽である」〜「ややきつい」と感じる程度の強度で行いましょう。

・運動の頻度
1日合計30分以上を週3回以上(可能であれば毎日)または週に150分以上の実施を目標にします。

まとめ

なかなか運動習慣を持てない方も、疾患別の運動方法を知ることで、数値改善のために運動をやってみようと、動機づけにつながるケースもあります。 保健指導でも使える運動目標の立案方法については、こちらでご紹介しています。ぜひお役立てください。



参考文献
・厚生労働省:「身体活動・運動の推進」、https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/undou/index.html(閲覧日:2026年4月11日)
・一般社団法人日本糖尿病学会:「糖尿病診療ガイドライン2024」、https://www.jds.or.jp/modules/publication/index.php?content_id=4、(閲覧日:2026年4月19日)
・一般社団法人日本動脈硬化学会:「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版」、https://www.j-athero.org/jp/jas_gl2022/、(閲覧日:2026年4月19日)



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WRITER

管理栄養士

長谷川 未紗子

管理栄養士として保健指導に従事し、疾病予防の観点から生活習慣のお悩みをお伺いし、健康相談をしてきました。 専門的になりがちな話をどれだけ分かりやすく、納得できるよう伝えられるかが重要だと実感しています。 これまで相談業務とともに、指導用の資料やセミナー資料等作成も行ってきました。 現在は、この経験を活かしながら、食と健康を分かりやすく伝えるサポートも行っています。 ◎使用ソフト:PowerPoint・Canva・Photoshop

長谷川 未紗子さんのコラム一覧

みんなのコメント( 1 )

    • Eatreat 編集部
      5時間前

      管理栄養士で健康運動指導士の資格を持つ長谷川未紗子さんに、疾患別の運動での注意事項や、効果的な運動方法をご紹介していただきました。

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