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				3部構成へ~対象別に整理された新しいガイドライン~
			
			
				2025年版「高血圧管理・治療ガイドライン2025(JSH2025)」では、従来の章立て形式から、より体系的な3部構成へと再編されました。これにより、情報の整理性と実用性が大幅に向上し、医師などの医療従事者に加え、保健指導を担う専門職や患者、その家族にとってもより活用しやすい内容となっています。
				従来のガイドラインでは、主にエビデンスの提示に重点が置かれていましたが、JSH2025ではその枠を超え「健康日本21」などの政策との整合性を図りながら、血圧を下げる・必要以上に上げないための具体的な行動につながる実践的な内容へと大きく舵を切った点が特徴です。
			
			
				第1部:国民の血圧管理
			
			
				高血圧の予防や啓発に携わる保健・行政関係者、医療従事者、一般市民などが主な利用対象とされています。国民の生活習慣病予防や健康増進に向けたリテラシー向上のため、特定健診・特定保健指導、産業保健、企業の健康経営、自治体・企業団体による健康増進事業などに関連する血圧管理のエビデンスが整理されています。
				具体的には、血圧スクリーニングによる早期発見と予防の重要性、保健指導や生活習慣の改善の意義、さらに健康的な環境整備に関する内容が盛り込まれています。
			
			
				第2部:高血圧患者の管理・治療
			
			
				主な利用対象は、高血圧の実地診療に携わる医療者、患者およびその家族です。生活習慣病の中でも有病率の高い「成人の本態性高血圧患者」を中心に、診断・治療・管理の基本方針が体系的に整理されています。
				具体的には、診察室血圧と家庭血圧の位置づけ、白衣高血圧や仮面高血圧の対応、臓器障害の評価法、二次性高血圧のスクリーニング、生活習慣改善の効果に関するエビデンス、行動変容を促す実践例、最新の薬物治療の考え方、さらにスマートフォンアプリなどデジタル技術の活用と有効性まで、幅広い内容が盛り込まれています。
			
			
				第3部:特殊な病態および二次性高血圧の管理・治療
			
			
				主な利用対象は、高血圧、循環器、腎臓、内分泌、老年医療などの専門領域に従事する医療者と、その患者・家族です。降圧薬による治療では不十分な治療抵抗性高血圧、妊娠高血圧、小児高血圧、原発性アルドステロン症や睡眠時無呼吸症候群などによる二次性高血圧、脳出血やくも膜下出血に合併する特殊な病態など、専門的な内容が体系的にまとめられています。薬剤の選択や併用療法、合併症への対応など、専門医が診療方針を判断する際の根拠となる情報が充実しています。
			
			
				まとめ
			
			
				JSH2025は医療従事者だけでなく、健康増進に関わる専門職や患者・その家族など、幅広い利用者がそれぞれの立場で活用しやすいよう、情報が体系的かつ実践的に整理されています。次回は、JSH2025の改定ポイントについてご紹介します。
			
			
				参考文献
				
					・日本高血圧学会「高血圧管理・治療ガイドライン 2025」、ライフサイエンス出版株式会社(2025)
				
			 
			
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