「第47回日本高血圧学会総会は、2025年10月17日(金)~19日(日)の3日間にわたり、東京日本橋兜町にあるカブトワン他を会場として現地および一部オンデマンド配信で開催されました。このコラムでは、管理栄養士・栄養士として知っておきたい話題をピックアップしてお伝えします。
テーマは「挑戦の継続が伝統を創り出す:Sustainable challenges create tradition」
日本高血圧学会が患者・医療従事者・企業・国と連携しながら築いてきた歴史と伝統を披露し、未来に向けた新たな取り組みを発信する場として開催されました。2000年の初の高血圧治療ガイドライン発表以降、高血圧診療は大きく進展し、2025年夏に発表されたJSH2025では、ウェアラブル血圧計や高血圧治療アプリ、遠隔診療などのデジタル技術の活用についての内容も盛り込まれています。これらの継続的な挑戦を通じて、新たな高血圧診療の伝統を創り上げる発祥の場となりました。
血圧朝活とキオスク血圧測定のススメ
日本高血圧学会は「測ろう!下げよう!!あなたのリスク!!!」(“Know and Lower Your Risk”)をスローガンとした「早朝高血圧徹底制圧宣言」および「キオスク血圧測定を奨励する声明」を発表しました。これらは早朝血圧の適切な管理が健康リスクの低減に重要であることの啓発事業「早朝高血圧徹底制圧プロジェクト」の一環となっています。
■血圧朝活
日本高血圧学会では、「多くの人が気軽に血圧を測定できる環境づくり」を通じて、早朝高血圧のリスク啓発と行動変容を促す取り組みを進めています。その一環として、朝の家庭血圧測定を推奨する「血圧朝活」キャンペーンを展開し、日々の血圧測定習慣の定着を支援しています。
■キオスク血圧測定
「キオスク血圧測定」とは、スポーツジムや自治体施設、企業などに自動血圧計を設置し、医療従事者の手を借りずに血圧を自己測定する仕組みです。多くの人が気軽に血圧を測定できる環境を整えることで、測定の習慣化や健康意識の向上が期待されています。例えば、運送業者では業務前にドライバーの血圧測定を義務づけ、体調管理に役立てている事例もあります。
■良塩くんの部屋
より多くの人に高血圧について知ってもらい、理解を深めてもらうために、日本高血圧学会はYouTubeチャンネル「良塩くんの部屋」を開設しています。日本高血圧学会公式キャラクターの良塩(よしお)君が、チャンネルの顔となり、早朝高血圧のリスクや対策、日常生活の工夫などを紹介しています。
尿酸値は高くても低くても循環器疾患のリスクに
これまで「高尿酸血症」が注目されてきましたが、近年では「低尿酸血症」も循環器疾患の残余リスクとなることが示されています。至適尿酸値は3.0〜6.0 mg/dLとされ、それを下回る場合は「低尿酸血症」、上回る場合は「高尿酸血症」となり、脂質異常症と同様に「尿酸異常症」として捉えるべきだという意見もあります。
尿酸値が高くなる要因として、「飲酒」「肥満」「暴飲暴食」などの生活習慣がよく知られていますが、近年では遺伝的要因(ABCG2遺伝子多型)の関与がより大きいことも明らかになってきました。これにより、個々のリスクを把握したうえで、より適切な生活習慣改善の提案が可能となり、今後の予防医療の発展が期待されます。
なお、高尿酸血症のコラムでご紹介した「尿酸産生過剰」と「尿酸排泄低下」という2つの機序に加え、ABCG2遺伝子による排泄低下も「尿酸排泄低下型」に含まれます。これらは腎臓に負担をかける“腎負荷型”とされ、腎臓病の予防という観点からも注目されています。
後編では、アプリを活用した“新しい血圧管理のかたち”をご紹介します。
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