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2024年10月19日(土)~20日(日)の2日間にわたり、神奈川県横浜市のパシフィコ横浜会議センターで、第45回日本肥満学会・第42回日本肥満症治療学会学術集会が開催されました。このコラムでは、管理栄養士・栄養士に関わる話題をピックアップしてご紹介します。

テーマは「新・肥満症学 ~知の原点から際限なき未来へ~」

日本肥満学会と日本肥満症治療学会の合同開催は、今回で6回目の開催となります。
日本肥満学会のテーマは「新・肥満症学 ~知の原点から際限なき未来へ~」、日本肥満症治療学会のテーマは「ボーダレス&サステナブル肥満症治療」として、肥満症を中心に、学術的・臨床的、幅広い視点から、他分野との「融合」と「発展」がのぞめるような学術的な学術集会として開催されました。

「肥満症」治療には、多職種連携とチーム医療が大切

2023年3月に肥満症薬として「ウゴービ皮下注」が保険適用されるなど、肥満症治療の幅は、年々広がっています。同2023年11月に「腹腔鏡下スリーブ状胃切除術」が保険収載され、内科的治療だけでなく外科的治療の選択肢も増えています。
肥満症の外科的治療では、術前術後の減量や栄養管理も重要で、医師、看護師、心理士などと共に管理栄養士の専門性も求められます。
また、術後の血清亜鉛値の低下が課題であり、現場に携わる管理栄養士の発表も聞くことができました。現時点では、どれくらい付加するべきかという指標はないようですが、サプリメントで亜鉛補充を行いながら経過をみているとのことでした。医師の判断により、亜鉛製剤を用いることもあるようです。

「NAFLD/NASH」は「MASLD/MASH」に名称変更されました

近年、さまざまな疾患の背景に存在するスティグマが問題となっています。
NAFLD (非アルコール性脂肪性肝疾患:non-alcoholic fatty liver disease)、NASH (非アルコール性脂肪肝炎:non-alcoholic steatohepatitis)などの脂肪性肝疾患についても、「alcoholic」や「fatty」がスティグマを生む用語として名称変更されました。

<脂肪性肝疾患の病名変更>
・NAFLD⇒MASLD (代謝機能障害関連脂肪性肝疾患:Metabolic Dysfunction Associated Steatotic Liver Disease)
・NASH⇒MASH (代謝機能障害関連脂肪肝炎:Metabolic Dysfunction Associated Steatohepatitis)
・アルコール性脂肪性肝炎(ASH)⇒ALD (アルコール関連肝疾患:Alcohol Associated (Related) Liver Disease)/MetALD (代謝機能障害アルコール関連肝疾患:MASLD and increased alcohol intake)

MetALDは、MASLDがあり、ある程度の飲酒量がある場合に分類されます。
MetALDの基準となる純アルコール量は、男性で30~60g、女性で1日平均20~50gで、これ以上の場合は、ALDに分類されます。

砂糖不使用 ドクターズチョコレート

企業ブースでは、ヘルスケアアプリ、体組成、冷凍宅配弁当など多くの企業が展示されていました。その中で管理栄養士・栄養士として知っておきたい「ドクターズチョコレート」についてご紹介します。

ドクターズチョコレートとは?
調剤薬局など医療機関で販売されている砂糖不使用のチョコレートです。公式オンラインショップでも購入可能です。売り上げの一部は、1型糖尿病の支援団体である日本IDDMネットワークへ寄付されるなど社会貢献活動も行っています。

【商品の特徴】
◆砂糖不使用 苦味を抑えたハイカカオチョコレート
低カロリー甘味料である「マルチトール」を使用し、苦味を抑えた低糖質のチョコレートです。
<1袋(35g)当たりの糖質量>
ダークチョコレート  16g
ミルクチョコレート 17.6g

◆高級ベルギーチョコレート100%使用
高級チョコレートブランドとして知られるバリーカレーボー社の高品質・最上級のカカオを100%使用しています。また、使用しているカカオは、化学肥料を一切使用せず、農園レベルで生産者履歴がわかる、安心・安全にも配慮したサスティナブルカカオです。

◆低GI値とβエンドルフィン
ドクターズチョコレートのGI値は、ダークチョコレート:26、ミルクチョコレート:36とどちらも低GIです。これらのGI値は、野菜(キャベツ・大根:26、レンコン:38、ごぼう:45)と同程度といわれています。
※GI値とは、血糖値の上がりやすさを示す指標で、70以上が高GI食品(血糖値が上がりやすい食品)、55以下が低GI食品(血糖値が上がりにくい食品)の目安。

◆幸せホルモン「βエンドルフィン」
チョコレートを食べた後、幸せホルモンとも呼ばれる「βエンドルフィン」が分泌されることもわかっています。1粒ずつ口の中で溶かすように食べることでより満足感も増します。

まとめ

「肥満症」の治療は、内科的治療とともに外科的治療の幅も広がっています。保険適用となる基準は、適用となる年齢も含めて、まだまだ議論されていますが、術前術後の栄養管理の重要性が高まっていることを改めて感じました。
現在の考え方、基準値は、「減量・代謝改善手術のための包括的な肥満症治療ガイドライン2024」に掲載されています。
今後、どのように発展していくのか、私も学びながら追っていきたいと思います。



参考文献
・一般財団法人 日本消化器病学会 脂肪性肝疾患の日本語病名に関して
https://www.jsge.or.jp/news/20240820-3/ (閲覧日:2024年11月)
・ドクターズチョコレート 商品HP
https://doctors-chocolate.com/ (閲覧日:2024年11月)




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みんなのコメント( 1

    • Eatreat 編集部
    • Eatreat 編集部
      3時間前

      第45回日本肥満学会・第42回日本肥満症治療学会学術集会について、管理栄養士の松岡喜美子さんにご紹介いただきます。

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WRITER

【学会レポート】第45回日本肥満学会・第42回日本肥満症治療学会学術集会

松岡 喜美子

循環器病予防療養指導士 かがわ糖尿病療養指導士,ベーシックインストラクター(JCCA)、貯筋運動指導者、歯科栄養アドバイザー2級 大学卒業後、糖尿病クリニックでの栄養指導に従事しながら健康運動指導士を取得。 2008年よりフリーとしての活動を開始。 特定保健指導の立ち上げからスタッフ育成などにも携わり、これまでの指導件数は1万件以上。 生活習慣病予防セミナーの講師や企業やスポーツクラブでの運動指導なども行っている。 その他、企業HPのコラム執筆なども担当し、健康情報の発信や商品マーケティングなども行っている。 「栄養不良の二重負荷」という問題に対して、世界に貢献できる管理栄養士を目指しています。 ★2023年7月~ 訪問栄養指導をスタートしました。 プラダ―ウィリー症候群(PWS)の症例に関わられたご経験がある方、情報共有できたらうれしいです。

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