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令和7年9月12日〜14日の3日間にわたり、東京農業大学世田谷キャンパスにて「第72回日本栄養改善学会学術総会」が開催されました。このコラムでは、本学術総会で得られた情報の一部をご紹介します。

本総会のテーマは?

第72回日本栄養改善学会学術総会のテーマは「健康寿命の延伸をめざして〜実践栄養学のエビデンス構築と展開〜」です。
2024年から始まった「健康日本21(第三次)」では、国民の健康増進に関する基本方針として「健康寿命の延伸と健康格差の縮小」が掲げられています。本学術総会では、健康寿命の延伸に関するさまざまな方策とその実践のエビデンスを集約、構築し、さらに展開していくことを目的としています。
具体的には、食事摂取基準をはじめとした各種ガイドラインの紹介や生涯を通じた健康づくり(ライフコースアプローチ)による健康寿命の延伸に関する実践活動・研究、食環境の整備に向けた産官学の取り組みなどが発表されていました。

健康寿命延伸を支える新技術とは

現在、スマートフォンアプリやWebサービス等において、AIを活用した食事管理アプリが複数出ています。食事画像をもとに食事カテゴリーを認識しレシピを検索、そこから食品成分表による食材リストを算出して栄養価計算されたものが栄養データとして示される流れが、一般的です。ただし、これには課題がありました。食材量の調整など細かい編集ができないことや名前のないオリジナルの料理は認識が難しいという点です。

そこで現在開発が進められているのが、食事画像から食品成分表の食品番号による食材リストとその重量から栄養価計算するという新しい技術です。これにより、管理栄養士などの専門職が扱いやすく、画像認識に誤りが生じた場合でも修正しやすくなるそうです。こういった食事管理アプリは、特定保健指導などの現場でも用いられています。今後の課題として、健康的な食に無関心な層の行動変容を促すために、ゲーム要素を取り入れたゲーミフィケーション技術の導入を試みているとのことです。

指導する立場である管理栄養士として、このようなツールは使い慣れていないと対象者に説明するのが難しくなってしまうかもしれません。AI時代に取り残されないためにも、実際に身近なツールから触れておくことの重要性を改めて感じました。

知っておきたいさまざまな生理機能を持つ食品素材

企業ブースでは、各社がセミナーの紹介やフードサンプルの展示、機能性を持つ商品の紹介などを行っており、大変な賑わいを見せていました。今回はブース内で紹介されていた「難消化性デキストリン」と「希少糖アルロース」についてご紹介します。

<難消化性デキストリンとは>
難消化性デキストリンは、水溶性食物繊維のひとつで、自然のでん粉から作られた素材です。食物繊維部分は1kcal/gと低エネルギーの素材で、粘性が低く溶けやすいため食品に活用しやすい特長があります。おなかの調子を整えたり、腸内環境を改善したり、食後血糖値や中性脂肪の上昇を穏やかにしたりなど、さまざまな生理機能があると報告されています。

<希少糖アルロースとは>
アルロースは、自然界にごくわずかしか存在しない希少糖のひとつで、カロリーゼロの甘味料です。むし歯になりにくく血糖値も上がりませんが、甘味はショ糖の70%程度とされています。脂肪の燃焼促進や食後の血糖上昇抑制といった生理機能があるとされています。

このようにさまざまな生理機能を持つ食品素材は、スーパーなどで販売されている身近な食品にも利用されています。知識として持っておくと、どこかで使えることがあるかもしれません。

まとめ

管理栄養士として、各種ガイドラインだけではなく新しい技術や知見を日々収集することは決して容易なことではありません。このような学術総会に参加することで、今どのような研究や開発が進められているのかを知ることができ、大変貴重な機会であると改めて感じました。
今回の経験を糧に、これまでの知識や常識にとらわれることなく、新しい情報や知見を積極的に学び、日々の業務に活かしていきたいと思います。



参考文献
・厚生労働省:「健康日本21(第三次)」、厚生労働省、https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kenkounippon21_00006.html、(閲覧日:2025年9月25日)
・松下化学工業株式会社:「機能性素材」、松下化学工業株式会社、https://www.matsutani.co.jp/product/kinousei/、(閲覧日:2025年9月25日)


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みんなのコメント( 1

    • Eatreat 編集部
    • Eatreat 編集部
      2時間前

      日本栄養改善学会学術総会の参加レポートを宮﨑奈津季さんにご執筆いただきました。

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WRITER

【学会レポート】第72回日本栄養改善学会学術総会に参加しました

宮﨑 奈津季

女子栄養大学栄養学部実践栄養学科卒業。 介護食品メーカーで営業に従事した後、独立。 料理動画撮影やレシピ開発、商品開発、ダイエットアプリの監修、栄養価計算などの経験あり。 現在は、特定保健指導、記事執筆・監修をメインに活動中。 Chatwork、Slack、Zoom、Wordpressなどの使用経験あり。

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